気合いの入ってない輸入車をフルボッコ! 沢村慎太朗さん はやっぱり最高だ!

  久々に自動車雑誌で「壮快な」ロング記事を見かけました! ライターはもちろん沢村慎太朗氏。自動車評論の世界の「橋下市長」とでもいうべき、痛快すぎるくらいに「タブー」に切り込んでいいくことこそがジャーナリズムだという姿勢を貫き通すカッコいいおじさまだ。「Motor Fan illustrated vol.93運転席の作り方」というなかなか興味深いテーマを出してきた今月号ですが、最初から沢村さんありきの企画だったようで、冒頭からアクセル全開で今回ばっかりは1700円以上する価格が安く感じられます!

  「前座」といっては失礼ですが、福野礼一郎氏の「ニューカー二番絞り」で取り上げているのが「新型ミニ」でした。後ろのページで沢村氏がボロクソに言うことになるこのクルマ・・・。たとえ日本車は嫌いで輸入車は大好きという基本姿勢だけど、感性と論理は他の評論家の追従を許さないほど確かな福野氏だけあって、いくら大好きなBMW傘下のブランドといえども今回のミニにはなんだか納得していない様子。てっきり独自の屁理屈をごねて「提灯記事」ならぬ「ハイパー提灯記事」を書くのかと思いきや、他誌が過剰絶賛気味のこのクルマの弱点を冷静に分析していきます。クルマバカが乗る「過剰」さはあるけど、ファミリーカーとしては失格というなんとも常識的な結論でした。もちろんその過程の論拠の深さがこのライターの持ち味ですが。

  さて福野氏のコーナーを読んだあと、正確には2〜3度読み返さないと理解できないほど難解なので、苦労してなんとか理解したあとで、特集ページ「運転席の作り方」の作り方に突入。冒頭でクローズアップされる要旨を現す1文に思わずゾッとします。「形状に一分の理、色彩に九分の暇」・・・え!?何!?このほぼ完全なる「否定」は!、さらに「208の不誠実もしくは不合理は、デザイン構築の方法論ではなく、もっと別のところにある。」 ここまでくるとスゲ〜なんか歴史的な事件が発生している!ということに気がつく。ライタークレジットを見ると「沢村慎太朗」・・・なるほど。というか写真に何枚も映り込んでいる(笑)。還暦に近いのに子供服並みに大きなロゴの入ったオレンジの原色Tシャツ(不思議とこの人が着るととても上品)に身を固め、まるで「私は本気で書いてます!そういう人間です!」という無言のアピールにも見える。

  プジョーの色彩をディスっているわけだから、地味くさい服でも着ていたら「じじいは黙っておけ!」と一蹴されてしまいますが、その声を完全に封殺するかのように抜群の色彩センスの私服をわざわざ披露する計算されつくした構成に思わず脱帽します。普通の自動車評論家には絶対に真似できない超絶ウルトラ記事。しかもドイツ車や日本車のような控えめなデザインのクルマではなくて、原色上等のオシャレなフランス車の総ボス的存在のプジョー!しかも色の選択幅が大きいとされる小型モデルの208に対して、「オレの方がファッション解ってるぞ!」という・・・。(もちろん褒めてますよ!)

  やたらと意味不明な原色アイテムを身に纏い、さっそうとyoutubeに登場する国沢光宏というライターがいますが、もしこの人がプジョーやフィアットの色彩に少しでも異論を呈したら、「オマエが言うな!」の大ブーイングになってしまうでしょう。大変失礼な話ですけども、この人の真っ赤なスニーカーとか見るとせっかくの新型車がセンス悪く見えてしまうから、「やめて〜!」と思っております。特に最近ではマツダ車に乗って「絶賛」的「絶叫」を繰り返していたりして、オレと同じ「赤」好きという仲間意識があるのかもしれないですが、イメージが壊れるからやめろ!(怒)

   さてロードスター以外のマツダ車には一瞥もくれない沢村さんですが、プジョー208とミニをターゲットにしたロング記事はさらに続き、「ミニの玩具的ギミックに至っては、ついに一線を踏み越えたと判断せざるを得ない」と続き、読んでいる側は鳥肌すら立ち始めるわけですが、まあ文章はいつもの如くやや難解です。斜めに読めば十分に理解できるけど、なんのインパクトも残らない大御所の岡崎宏司氏や売れっ子飯田裕子氏のようなライターが書くものばかり読んでると、頭がどんどん劣化していくようで、沢村氏や福野氏の記事を読むとそれを痛感します。

  そして結論として「デザインをいくら遊ぼうとも、その造形の飛翔は人間工学の理に抵触してはならない。」という紋切り型の「断言!」があるわけですが、従来は日本車に対してこれらの文言をぶつけて欧州車の基本に忠実なクルマ作りを学べ!みたいな形で使われたのに、沢村さんはプジョーとBMWミニに対して糾弾しているという、プロライターにはまず見られない姿勢が新鮮すぎますね。以前からPSA車に対しては厳しい意見を持っていて、このロング記事も以前の論調を流用している部分も見られるわけですが、BMWミニに対しての「完全否定」はなかなか痛快です。

  でも海外のブランドって懐が深いみたいで、これまで痛烈に批判していたPSAは今でも沢村さんに対してとても寛容で、新車発表会には必ず呼んでくれるそうです。欧州メディア(特にイギリス)の強烈な論調に慣れているので、日本で何をいわれようとも痛くも痒くもないし、批判でもいいから取り上げてくれるだけで嬉しいという部分もあるかもしれません。ただし沢村さんみたいなライターを嫌うのが、輸入車絶対主義の編集長の方々のようで、おおくの雑誌がク◯みたいな生温い記事を詰め込んで、日本車を批判するという程度の低いスパイスを振りかけたカスみたいな雑誌ばかりで、当然のごとく販売減に悩まされているわけです。余計なお世話ですが、沢村氏のようなしっかりとした仕事をするライターを起用していかないと長くは保たないと思います。

  最後に付け加えておきますが、今回の沢村氏の記事が絶対正義とは思っておりません。読んでいくなかで疑問も多々感じました。しかし読み手にあれこれ考えさせてくれるものには、多少高いお金を払ってでも読みたいと思わせてくれる何かがあると私には感じます。





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