2024年2月10日土曜日

島下泰久さんに烙印を押された現行モデル

 

2024年版 間違いだらけのクルマ選び



面白くなっている

毎年暮れに発売される「間違いだらけのクルマ選び」の2024年版を、なんとなく惰性で買ってしまう。クルマ初心者にもわかりやすい内容で、1台当たりの紙面も限られていてあまり突っ込んだ内容ではないので、失礼だけど夢中になって読むような本ではない。それでも買ってしまうのは、2016年から前任者を引き継いでこのシリーズを切り盛りする島下泰久さんが必死で続けている姿が微笑ましくて応援したいのと、自分とは意見がかなり違うタイプのライターだからこそちょっと読んでみたいと思えるところだ。


読者離れや出版不況によってこのシリーズの販売低迷が囁かれていたが、紆余曲折の末に、2021年版からはメーカーの開発担当者のインタビューが掲載されるようになり、コンテンツもかなり充実してきた。記念すべき最初の2021年版に登場したメーカー担当者は、レクサス・インターナショナル・プレジデントを務めていた佐藤恒治さんで、ご存じの通りの豊田章男社長を引き継いだ現在のトヨタ自動車の社長である。1回目の人選からして大当たりと言っていいかもしれない。



インタビューが増強され読み応えアップ

2022年版はホンダの特集が組まれ岡部宏ニ郎さんが登場し、2023年版はMAZDAの巻頭特集で廣瀬一郎さんが登場した。島下さんが「RIDE NOW」というユーチューブチャンネルを地道に運営し、単なるAJAJライターではなく、発信力・影響力をもつ自動車インフルエンサーとしてメーカー側に認知された結果だろうか。あるいは自動車メーカーがセルフメディアを運営する時代に変わり、しがらみがたくさんある大手メディアや大手出版社からの出版ではなく、このシリーズが一番発行部数が多いというちょっとマイナーな出版社(草思社)の発行なので、メーカー側も与し易いのかもしれない。


2024年版にはどこのメーカーの人が出てくるか?と思っていたが、今回はまさかの3人登場で、巻頭特集が本編の半分を占める巨大コンテンツになっています。しかも1人はあのダイハツの記者会見でメディアの前に登壇したあの人だ。島下さんは引きが強い!!佐藤さんに続いてまたしてもピンポイントな人を引き当てている。ダイハツ不正の会見ではメディアの若手記者を低い声で恫喝するような答弁が印象的な強面な人だったけど、この本のインタビューでは「カッコいいクルマがすっごく好きなんです」みたいな、なかなかチャラいことを仰っている・・・。



勝手な解釈

この「間違いだらけのクルマ選び」の巻末には面白いものが付いている。毎年本編を見る前にこれを読んでしまう。それは本書に掲載されている市販モデルを採点した総合の「通知表」がある。島下さんの主観による評価なので特段に文句を言うつもりはないが、読者が見て受ける印象を考えるに、総合評価の得点が10段階で「5」以下という低い評価は、実質的には「死刑判決」を意味する。これを読んだ人は誰も買わないだろう。そして「7」以下のクルマに関しても読者には全く良い印象は与えられないから、「引退勧告」くらいの意図があると思われる。


2024年版で「死刑判決」が出たモデルは4台だった。1台目は「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」で評価は「4」である。生産が中断されているけども日本市場屈指のベストセラーモデルだけども、売れ過ぎて市場を捻じ曲げるクルマにはあまり良い印象がないのかもしれない。肝心の本編を読んでみると、2023年5月にロッキーとライズのHEV(ダイハツ版e-POWER)が販売停止になり、エンジン版のみ出荷されていたが、年末になってこちらも巻き込まれた。本編の加筆は間に合っておりません。真面目なAJAJライターとしては、とりあえず「オススメできない」という納得の意見。



日産だって困っているのでは?

2台目は「日産・リーフ」で評価は「3」だ。バッテリーの原材料価格が大幅に高騰していて、相次ぐ価格改定で全然お手軽なクルマでなくなったので、当然これもオススメできない。ロングレンジモデル「プラスe」(航続距離550km)は、上級BEVのアリアのベースモデル「B6」(後続距離470km)と同じくらい(538万円〜)に設定されている。アリアのロングレンジ「B9」は公式ホームページから削除されており受注停止のようだ。


日産としては2028年に全固体電池搭載の1000km航続のBEVを販売するそうなので、残り4年くらいはこのまま「死んだフリ」のBEV戦略を続ける気がする。全固体電池はコスト面に課題があって2000万円くらいするスーパースポーツにしか使えないとかいう報道もあるので、GT-Rの後継モデルなのかもしれない。他にも優れた電池が開発されて、アリアやリーフの不自由な現状は改善されると思われる。



「デスノート」

3台目は「レクサスES」で評価は「5」だ。レクサスのグローバルでの稼ぎ頭のモデルに対して、本編でも痛烈な言葉が並ぶ。確かに日本でもほとんど見かけない気がする。レクサスLSをアメリカ人が好む合理的な設計でカムリベースで仕立てたモデルで、北米ではメルセデスEクラスやBMW5シリーズと同等の価格でかなり良く売れた。それならば日本でも売れるだろうと、レクサスGSを置き換えた訳だけど、GSの方がまだまだ良く見かける。そう言えば島下さんのお気に入りでもあったな。


レクサスESはまだ日本撤退はしないようだけど、カムリやMAZDA6などの同じような仕立てのセダンは次々と日本市場から消えていった。ちなみにMAZDA6は「間違いだらけのクルマ選び」2020年版で総合評価「7」となり「引退勧告」されており、2021年版からは通知表から除外された。カムリは2021年版で評価「7」を受け、2022年版から除外されている。恐るべき島下さんの「デスノート」である。



メーカーの意図を深読みすれば・・・

4台目は「トヨタ・シエンタ」で評価は「5」。2022年版までは個性的なスタイリングが光る先代モデルだったため、モデル末期にも関わらず島下さんは「8」をつけて絶賛していた。5ナンバー3列シートミニバンならば最強の1台だと断言していた。それが2023年版から現行モデルに変わり、5ナンバーミニバンとしての機能性や予想以上に良い走行性能こそ評価していたが、お気に入りだったデザインが某フランスメーカーの有名な商用車にソックリになってしまいボロクソ評価の「6」を下していた。


ノアやヴォクシーも大幅値上げで乗り出しが400万円台後半というご時世で、まだまだ乗り出し250〜300万円で済むシエンタは、親孝行な子育て世代にとっては代えの効かない存在になった。少々癖があるアバンギャルド(ちょっと幼稚?)なデザインより、長年親しまれているスタイルを拝借しようってトヨタも考えただろうけど、島下さんの評価は2024年版でも厳しいままでいよいよ「死刑宣告」となった。2025年版には生き残っているだろうか?



どんどん現行モデルは消されている

2024年版での「死刑判決」は以上の4台だけだが、現行市販モデルの中には既に過去の年度版で「死刑判決」されて、2024年版の通知表からは外されてしまっているモデルも複数ある。もしかしたらメーカーから苦情がきて「当該モデルに関しては今後は掲載しないでください」との要求を呑まされている可能性もある。2022年に比較的に本シリーズで高評価が多いMAZDAのCX-3が「5」の評価を受け2023年、2024年は姿を消している。


2022年に「5」の評価を受け、さらに2023年には「4」と評価されダメ押しされたのがトヨタ・ルーミー/ダイハツ・トールだ。トヨタ系ディーラーが日本中の高齢者ユーザーを一件一件回ってゴリゴリに売ってきたダイハツ生産モデルだ。使い勝手が良さそうなのでついつい買ってしまう人も多いようだけど、実家に営業がかかった時に相談され、この島下さんの本の評価があまりにも低いので慌てて他のモデルに変えさせた。賞味期限切れのクルマに関してはかなり的確に教えてくれるシリーズだと思う。


2024年版 間違いだらけのクルマ選び
















2024年2月8日木曜日

水野和敏さん「軽自動車(スーパーハイトワゴン)は危険過ぎる」

 


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー) 


名物連載のまとめ本

元・日産の開発者で有名な水野和敏さんのベストカー連載まとめが、全編カラーの豪華な装丁で単行本として発売された。自動車雑誌の売上No.1を自称する天下のベストカーであっても、この人気連載にもしものことがあったら、いよいよ雑誌媒体での販売が終了してしまうかもしれない。大きな変化があったらこの媒体で活躍する多くのAJAJライター、国沢光宏さん、松田秀士さん、清水草一さん、清水和夫さん、渡辺陽一郎さんなどの活躍できる場所が失われてしまう可能性が高い。水野さんの人気コンテンツはカーメディア全体を支える立場にある。


記念すべき「水野和敏が斬る!!」単行本は、月2回発売のベストカーを全く読まなくなった私にとってはとても新鮮な内容だ。毎回のように「クルマのことがまるでわかっていない」全メーカーの開発者や日本中のクルマ好きの読者に対して、完全に上から目線でドヤれるだけの実績と自信があるから、それだけでエンターティメントとして成立しているし、このような単行本を出せばさぞかし売れることだろう。若い読者にとっても世代が全く違う「カーキチおじさん」の異次元なクルマ観に触れられるとても貴重な本だと思う。



軽自動車の衝突基準

「ホンダN-BOXとスズキ・スペーシア」の比較レビューが収録されている。軽自動車の企画ではクルマ好きに読んでもらえないことを危惧したのか、冒頭から「炎上」しそうな過激な軽自動車批判が続いていく。今回のダイハツの一件が報道された後でこのレビューを読んだこともあって、とても衝撃的で興味深い内容であった。軽自動車ユーザーと軽自動車の生産&販売に従事しているメーカー関係者がこれを読んだらさぞかし憤慨するだろうけど、「良薬口に苦し」とばかりに完全無欠な正義感で放言の限りを尽くしている。まるでどっかの国の次期大統領候補みたいだ。これでカルト的人気はもっともっと高まるだろう。


AJAJ会員のライターには絶対に書けないタブー満載のレビューである。N-BOXやスペーシアなど世界でも類例がない異形の「スーパーハイトワゴン」型は今では完全に軽自動車販売の主流になっている。エンジンパワーに比べて車重があり、重心も高くて安定しない。さらに軽自動車で規定されている衝突安全基準の数値は驚くべき低さだそうだ。ネタバレだけど、法令で定められた安全基準が前面と側面はフルラップで58km/h衝突までとなっていて、後面も同じくフルラップで38km/h衝突までらしい。この最低限の基準を守ることさえダイハツは長年ズルをしていたため先日謝罪をしているのだが、そもそもこんな基準に意味なんてあるのだろうか!?



ユーザーはわかってる

フルラップで58km/hということは自車と対向車がそれぞれ30km/h程度でも限界に達しているということだ。これオフセット衝突だったらどうなるんだろうか!?最高速が120km/hまで引き上げられている高速道路に軽自動車の乗り入れは法的に規制されているわけではない。この安全基準を見たら誰も怖くて走れないかもしれない。実際のところ水野さんが憂慮するほどには、東名、中央、関越、東北、東関東、第三京浜、圏央などの近隣の高速道路で、子どもを乗せたN-BOXなどはほとんど見かけない。一応は軽自動車で高速を走るのは非常識だと認知されている。


高速道路だけでなく、日本中に次々と60km/h(場合によっては70km/h)制限の高規格道路が新設されている。八王子バイパス、日野バイパス、入間バイパス、新青梅街道、東八道路、新滝山街道、武蔵境通りといった東京都中央部の無料の高規格道路を利用しているが、日中時間帯は混雑が酷くて流れる車速はそこまで高くはない。本来の道路の実力を発揮する深夜時間帯だと、N-BOXが走っているのは滅多に見かけない。スーパーハイトワゴンの運用は、辺境への通勤、鉄道駅へのアクセス、スーパーマーケット・モール・コンビニへの買い物が圧倒的に多いように思う。




特段に問題があるとは思えない

秋田県の産業道路(秋田港〜男鹿市)を爆走する高齢者(女性)運転の軽自動車を見かけて驚いたことはある。しかし地方の幹線道路を長時間ドライブすることが多いが、東京とはまるで違っていて近づきたくないような異常な走りをするクルマはほとんど見かけないし、毎回のように平和なドライブをいつも楽しませてもらっている。地方には軽自動車が多いのは事実だけども、体感する限りではスーパーハイトワゴンがどうのこうのと騒ぐのはなんか違う気がする。「誰でも安全に300km/hで走れるクルマ」というコンセプトの方がよっぽど頭おかしいと思う。


水野さんに限らず、他のAJAJライターも異口同音に「軽自動車規格は不公平である」みたいなことしばしば言っている。渡辺陽一郎さんも軽自動車はそれほど燃費もよくないし安全でもないけど、税金が安いというだけでメーカーもユーザーも吸い寄せられてしまっている・・・と警鐘を鳴らしていた。政府としても税金の取りっぱぐれは解消したいだろうから、今後どっかのタイミングで軽自動車規格が廃止されることがあるのかもしれないが、そんな議論について報道されることはまずないし、50年以上に渡って放置されている現状がそのまま続いていくような気がする。



なぜ廃止にならないのか?

財務省と国土交通省に跨るクルマへの課税は縦割り行政であり、しかも直接的に不公平になっている自動車税は地方税であるため、消費税、所得税、復興税などの国税ほどとは違って、増税大好き財務省も関心が無いようだ。逆に自民党派閥の裏金原資となる企業献金を使って、国土交通省を動かしてエコカー減税だったり、エコカー補助金、高齢者補助金などを引き出しているくらいだから、軽自動車の存廃の主導権もメーカー側にあるのかもしれない。主要自動車メーカーで組織される自工会から自民党へ7800万円(2022年度)の献金が明らかになっている。


ちょっとネタバレを承知で水野さんの主張を書くと、軽自動車規格は高速道路網などまだ存在しなかった60年代のまだまだ貧しい日本の世相を受けて作られたものであり、国民もかなり豊かになった現在には合わない制度ではないか!?と「メーカーの開発者の立場」で仰っている。法制度が社会の実情と合わなくなってきた・・・日本では良く聞く話である。さっさと変えればいいことなのに、ずっと放置され続けるには何か理由があるはずで、軽自動車規格に関しては日本の自動車メーカーが一貫して支持していると思われる理由がいくつかある。



メーカーと企業献金

軽自動車を作っていないスバル、MAZDAであっても、日本各地の系列ディーラー網を維持するためにはOEMの軽自動車を売るしか生き残る道はない。軽自動車を完全に無視して営業できるのはトヨタ系列ディーラーくらいだけど、ダイハツを完全子会社としているトヨタは軽自動車の廃止を切り出すわけにはいかない。確かに法制度そのものを作るのは政府だけども、近年はそのスピード感ある政策のほとんどが、例えば日本医師会の献金によるコロナでの利益誘導だったり、政府の政策を評価して企業へ献金を呼びかけることが主な仕事の経団連によって法人税引き下げが実施されている。


軽自動車を新車でまともに買ったら200万円を超える。決して安くはないけども、軽自動車という慎ましい立ち位置は日本のユーザーの気質に上手く合致していて、「浪費」意識を芽生えさせないようになっている。今も昔も日本人は不必要に派手な出費を嫌う。まだレクサスLSが400万円台で販売されていた慎ましい時代だった2007年頃に、某日本メーカーが777万円でライン生産の量販車を売り出した。初代NSXのようなアルミ精錬工場まで用意した手作りの特別なモデルであれば高額なのもわかるが、ライン生産の量販車に700万円越えは、色々な意味で日本車の常識を変えた瞬間だったと思う。



軽自動車が増えた理由は・・・

35GT-Rが発売されてから日本メーカーの新型車開発とターゲットとなる顧客層が大きく変わっていった。普通車の価格は堰を切ったようにどんどん上昇し、2007年からの10年インフレ率は50%かそれ以上の水準だと思われる。トヨタのカローラやヤリスなどは比較的に価格が抑えられているが、他のメーカーは真似できないので、結果的に普通車販売はトヨタ系に集中するようになった。当然に自動車難民が増えた結果、同じ10年間で軽自動車の販売割合も2倍近く増えている。今の社会の実情に合わない軽自動車規格なはずなのに、近年になって割合が増えているのは実に不思議だ。別に水野さんに全ての責任があるとは言ってないが・・・。



クルマ好きな一般人が軽自動車不要論を述べたら「軽自動車に文句言うな!!野菜や果物も軽トラで運んでいる!!」「AMAZONを運んでいるのは軽貨物!!」みたいな反論が返ってくる。水野さんのような一流の業界人でないと安易には発言できない。もちろん水野さんはこのレビューにおいて軽自動車の商用と乗用の区分にもしっかり言及しているし、どっかの知ったかぶりなインフルエンサーとは意見の質はまるで違うのだけども・・・どれでも「どの口が言ってんだ!!」とちょっと言いたくなってしまった。


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー)




















2023年11月27日月曜日

福野礼一郎さん「全方位戦略」で名門ブランドを無差別襲撃

 

トヨタ完全無視!!


今年も「福野礼一郎のクルマ評論」の季節がやってきた。毎月律儀に「モーターファンイラストレーティッド」を読んでいれば、その連載の総集編に過ぎないのだけど、その雑誌がAmazonのサブスクから外れてしまったこともあって、今年は収録されるレビューの全てが初見だったので夢中で最後まで読み切ってしまった。いやそれだけではない、福野さんのレビューに新たな魅力が加わってきた。


この連載では母体雑誌の編集長を務める萬沢龍太さんが相方を務めていて、昨年発売の「クルマ評論7」から巻末に「編集人・萬沢龍太」とクレジットされている。「6」までは別の人が務めていた。母体雑誌の編集長の名前が入る仕組みなのかもしれない。数年前に萬沢さんがめでたく編集長になりました!!・・・とこの連載で書かれていた気がする。



10年で大きく変わった


編集本「クルマ評論」は2014年にスタートしているのだけど、ちょうど個人的に自動車ブログを書き始めた頃であり、怒涛のように繰り出される情報&洞察の連続攻撃に、かなり感銘を受けた覚えがある。このブログでもいろいろとネタにさせてもらった。好きなクルマやメーカーなどの主義主張に基づくツッコミどころはたくさんあるのだけど、自動車評論はトップレベルのライターのレビューとはここまで面白いのか!!と驚愕し、以後は福野さんの出版物は片っ端から買い漁るようになっている。


あれから10年ほどが経過するが、読み手の私の感覚もいくらか麻痺してきたせいもあるのだけど、福野さんのレビューから毒っぽいものがどんどん無くなっているように思う。クルマを取り巻く状況が変わり、評論家とメーカーの意見はどんどん乖離するようになった。評論に値するクルマがほとんど発売されなくなったエコカー全盛の現状では、あれだけ面白かったレビューにも全体にどこか厭世な雰囲気が漂ってくるのも仕方ない。読み手の意識の変化もあるだろうが。


「昔のクルマは良かった・・・」


若い読者からは「懐古主義」としか思われかねない今時のクルマへの批判は、多様化する意見の中ではその内容に関わらず「稚拙」と受け止められていまう。世界のトヨタ(レクサス)でさえも「良いクルマ」のアイコンとして「V8自然吸気」しか手段を持たなかったりする破滅的な状況だから、「昔は良かった」はあながち間違いではない。MAZDAロードスターとケータハム・セブンくらいしか「持続可能な趣味スポーツカー」として世界で支持されるものはないというやや過激な福野さんの主張もまあその通りなんだけども、日本のカーライフにはちょっと馴染まない。


2014年と比べてクルマの選択肢はかなり狭まっている。当時と同じような放胆なレビューにはやはり無理がある。福野さんがレビューを書くクルマにはもはやライバル車も満足に存在しない。2014年の福野レビューでは、レクサスとBMWやメルセデスなど、同格のライバル車を比較評価する軸が強かった。福野さんの場合は、その他大勢の評論家とは着眼点や洞察力が全く違うので人気があり、今でも単行本が「持続可能」になっている。そんな「王道」の手法も発売されるクルマが極端に少なくなってきた今では、福野さんのレビューからあまり見られなくなってきている。例えば日産e-POWERのクルマを何と比較すればいいのか!?



イメージ崩壊


適当な比較対象がなくなる中で、「相対評価」から「絶対評価」へと福野レビューの比重が切り替わりつつある。これにより福野さんのイメージも変容しつつある。「容赦ないライター」の仮面が剥がれ落ち、レビュー対象となったクルマの開発者の心情を慮った「人情味に涙するライター」の顔が出てきてしまう。福野さんの奇想天外&逆張りで権威を張り倒すような「勧善懲悪」レビューを楽しみにしてたのに、「作り手への思いやり溢れる」ことで有名な牧野茂雄さんのレビューを読んでいる気分になってしまう。


「牧野さん風味」の福野レビューはそれはそれで読む価値が十分にあるのだけど、牧野さんのレビューは徹底して「専門家向け」「マニア向け」なので、「クルマの格好良さ」みたいな尺度を重視する読者には合わない。対照的に数値化できない格好良さやロマンを存分に語る福野レビューが本来持っていた「ポップさ」や「発信力」が変化によって失われるのはちょっと残念だ。全くの初心者の私でも無理なく楽しく読めた10年前のあの「最強福野レビュー」は、クルマ趣味を日本社会に広げるためには欠かせないものだと思う。また「全人類ほぼ敗北」とかやって欲しい。



どっちが書いてるのか!?


福野さんも自身のレビューの変化は自覚しているだろうし、あるいは意図的に仕掛けているのかもしれない。新しい手法を生み出したものだけが生き残れる世界ではあるだろうし。このまま牧野テイストになってしまっては「単行本」を出せなくなってしまうかもしれない。日本で単行本を出し続けるライターはごくわずかだけど存在する。島下泰久さん、沢村慎太朗さん、そして今年から始まった水野和敏さんくらいか・・・やはり福野さんにはまだまだ頑張って足掻いてもらう必要がありそうだ。


ライバル車不在で「比較」ができないから、メカ&開発者の深掘りにシフトしたけど、前述のようにちょっと切り口がマニア過ぎる。そこで新たに生み出されたのが萬沢さんを共同執筆者に巻き込む手法のようだ。10年前と比べて萬沢さんが頻繁に登場するようになりレビューの核心を突くようなことを萬沢さんに「言わせる」あるいは、過激な意見に萬沢さんの同意があることを付け加える・・・そんなケースがやたらと目に付く。萬沢さんの同意があるなら納得できると無意識に読者に受け入れさせる効果は確実にある。蔓沢さんも相当なクルママニアだろうけど、なぜか一般人ぽい語り口で書かれるので読者は受け入れやすい。うまく「ポップさ」のバランスを取っている。



福野レビュー復活作戦


萬沢さんとの共同レビューももちろん面白いけど、かつての福野さんのような全てのメーカーやそのクルマのユーザーを敵に回すリスクを顧みずに権威に噛みつきハッキリと断言するスタイルのレビューも読みたい気がする。「まあこんなもんだよね」というレビューより、「このクルマこそが神だ!!」と熱烈に語るレビューの方が熱いものが込み上げてくる。どうやら私と同じようなことを考えてた自動車メーカーがあったようだ。福野さんに再び「比較レビュー」を大いにやって欲しい一心だろうか、比較ありきの大掛かりな新型車を作ってきた。某日本メーカーが発売した直列6気筒FRシャシーSUVの「あれ」である。


さあ福野さんよ!!10年前の切れ味鋭いメッタ切りレビューを見せてくれ!!どんな意見でも我々は受け入れるぞ!!とそのメーカーは大きく構えていたはずだが、あれれれれれ・・・・!? どうしたの!?調子出ないの!?リハビリが必要か!?と心配になってしまう腰砕け感があった。新刊まもない本なのでネタバレは極力避けたいですが、福野節の復活を期待して注目を浴びたはずのレビューが、なんでそんな展開になっちまうのか!!と驚愕した読者も多かったんじゃないだろうか。



福野レビューの「腰砕け」


まあ去年の日本COTYではこのクルマを完全無視された。そんな権力に忖度するカーメディアへの反動もあってか、日本でも予想を上回る好調な売り上げを記録した。500万円もするスポーツカーでもない日本車がデビューとともにこんなに簡単に売れまくった(月1000台以上)、30年以上前のトヨタ・セルシオ以来じゃないか!?当時はバブルの絶頂だけど、これを令和の岸田政権下で実現したのは偉業・神業と言っていい。120万円の補助金ありきのアウトランダーPHEVとは全く意味が違う。


カーメディアのフルバッシングをものともせず、日本市場のクルマ好きが次々と契約した。そしてその走りの良さをカーメディア上で最も高く評価したのが・・・まさかの萬沢さんだった。福野さんが鬼の首を獲ったように大絶賛する段取りだったのかもしれないが、萬沢さんが興奮し過ぎで本人は完全にシラけてしまったらしい。本当の話かどうかはわからない。完全に「脚本」の可能性もあるが、それならばこれは来年の「クルマ評論9」にて再レビューが収録されるフリだと思われる。大いに期待したい。



2023年7月10日月曜日

島下泰久さんが「案件」っぽくMAZDAを批判するので・・・

 

MAZDA車にケチを付ける愚論


MAZDA・CX-60の最もベーシックなグレードである「25S」が後から発売された。このグレード追加に合わせてアップされた試乗動画の1つが、ビックリするような内容だった。MAZDA車はその気になってケチを付けるなら要素はいくらでもあるのだけど、それでもMAZDA車のフィーリングが最高だ!!という人が好んで買うブランドである。他社の定規で測った意見なんざ意味はない。ランボルギーニやフェラーリに狭い!!うるさい!!燃費が悪い!!駐車場に停められない!!荷物が乗らない!!とか言うようなものだ。


あらゆる年代のユーザーに楽しんで欲しいと願って設定された「299万円」のスペシャルプライスのグレードにあれこれ文句を付けている。ユーチューブ動画では絶対にトヨタやレクサスのクルマは絶対に批判しない方針の島下泰久さんのレビューだから別段に驚きはないが、ちょっと勘ぐってしまう。やはりAJAJライターとメーカーは協業関係にあるのだろう。トヨタのコンサルライターとしての「営業活動」であり「ポジショントーク」ってことがダダ漏れの動画が笑える。愚直な感じがロック好きな島下さんらしいかもしれない。



二重人格ライター

ユーチューブでは批判しないが、単行本では全く違う島下さんがいる。「2016年版間違いだらけのクルマ選び」で2世代前のクラウンアスリートに対して最悪の評価を下していた。デザイン最悪。このクルマが日本車の代表なんてあり得ない。前任者の徳大寺有恒さんの方針をある程度は引き継いでいた部分もるのだろう。島下さんが一人で書くようになった2016年版以降も、片っ端からトヨタ車には酷評が下されるのに対して、MAZDAの各モデルはデザイン、走りなどで最高の評価を得ている。MAZDA3なんて4年連続(2020〜2023)で最高レベルの評価だ。


「間違いだらけのクルマ選び」は、雑誌の連載ではなく純粋な単行本であるので、発行部数を計算すると、クルマの本を熱心に買い集めてそうな人が多いMAZDAファンには思いっきり尻尾を振るのが常套手段である。他のメーカーが好きな人にはわからないかもしれないが、MAZDA好きってのは単純にクルマのフィーリングだけでなく、かなり理詰めでMAZDAのクルマ作りが好きだ。デザインやフィールといった属人的で主体性に依存する基準ではなく、欧州250km/h対応だとか衝突安全性で日米欧を制するといった、明快な基準からMAZDAを選択するから出版物がとても好きだ。



トヨタの価値


単行本では出版社の意向を十分に汲んで、真面目に仕事する島下泰久さんだけども、運営するユーチューブ・チャンネル「RIDE NOW」では立ち位置が変わる。相方の難波さんがこれまた筋金入りのMAZDAファンのようだ。「カーメディアは絶賛するけど、なかなか売れないMAZDA」とか揶揄される。しかしGT-RやシビックtypeRなどのハードボイルドなロードカーを除けば、MAZDAの各モデルはレベルが高い日本車の中においても、開発者の意図が随所に盛り込まれていて、「クルマ=趣味の道具」として素晴らしい完成度を誇る。専門家からの高評価は当然だ。そんな難波さんとのバランスを考えてか、RIDE NOWではMAZDAと意図的に距離を取っている。


半世紀以上も前から欧州市場で認められているハイクオリティなクルマを作り続けてきたMAZDAを見て、ほんの数年前(2015年頃)から「MAZDAのような愛されるクルマを作ろう!!」とかトップが言い出したのがトヨタだ。簡単に言ってしまえば歴史が違う。欧州市場ではMAZDAはスポーツブランドで、トヨタはタクシーブランドに過ぎない。この両者の立ち位置はクルマ好きなら誰でも知っていることだ。トヨタのクルマ作りにどんなカタルシスを感じるだろうか!?回転寿司チェーンが、トップの気まぐれで「老舗の寿司屋の味を再現しよう」とか素っ頓狂なことを言い出したようなものだ。食べに行きたいとも思わない。



トップ企業の生き様


MAZDAのような「こだわり」を持つと、おそらく世界最大の自動車メーカーにはなれないだろう。トヨタやユニクロのような合理性に徹する経営は、確かに多くの株主には喜ばれる。しかし個人的な意見で恐縮だけど、トヨタには乗りたくないし、ユニクロは一着も持ってない。こだわりが無いとは言わないが、響かないモノ作りには全く惹かれない。ユニクロにも世界的デザイナーとコラボしたアイテムがシリーズで販売されているのは知っている。結局のところユニクロやトヨタも一時期の拡大路線がひと段落して、変化を求めて「良いものをつくる」真似事に力を入れ初めているのだろう。


ユニクロとトヨタはよく似ている。ユニクロにも島下泰久さんのように熱心にユーチューブでPRしてくれるインフルエンサーがいる。MBさんや大山旬さんのファッション動画にはユニクロ、GUをゴリ押しするものがかなりある。どちらも見た目に清潔感があり話し方も穏やかなので、長く見ていても不快ではないし、身だしなみの勉強にもなるので、ユニクロもGUも全く買う気がないけどしばしば視聴している。島下さんのトヨタ&レクサス動画も同じような理由で見ている。



メディアリテラシー


島下さん、あるいはMBさんや大山さんがいくら「オススメです!!」と言ったところで、トヨタやユニクロは買わない。もちろん彼らの意見を否定する気など毛頭ない。トヨタやユニクロのおかげで毎日ハッピーに暮らしている人が世界にがたくさんいることだろう。個人的には理解できない世界だけどもメンテナンスフリーやファストファッションは多くの人を幸せにしている。トヨタやユニクロだって色々と考えて製品を作っている。これは間違いない。そんな物作りが好きという意見はもちろん尊重したいし、その「味わい」については、ぜひ話を聞いてみたいと思う。


しかし今回の島下さんのCX-60レビューはマナー違反だ。もしかしたら私の過剰反応かもしれないが、MAZDAにカタルシスを感じ続けてきたファンには、なんとなくわかってもらえると思う。MBさんや大山さんが、私が好きなアパレルブランド(例えば三陽商会、大賀、ファイブフォックスなど)を、名指しで批判するなんてまずあり得ないことだ。いずれも10年ほど前からユニクロの拡大で厳しい経営状況に置かれているが、アパレルに本質を求めるユーザーによって支えられて倒産することなく荒波を生き抜いてきた。まるでMAZDAみたいだ。



MAZDAのヤバさ


CX-60では25SとXDにおいてFRの2WDモデルを設定してきた。同タイプの縦置きエンジンのSUVを主力に据えるBMW、アルファロメオ、ジャガーにおいては全てAWDである。これら名門ブランドが手を出そうとしなかった「FRの2WDのSUV」に挑んだMAZDAの破天荒さをもっとカーメディアは称賛すべきでは無いか!?BMWもアルファロメオもジャガーもできる限り軽量でスポーティな縦置きSUVを作りたいのは同じだけど、製品化してないのだから、大きな難点が存在するのは想像できる。設計上の無理を承知でも理想を追いかけているわけだ。そんな理由もあって今回の島下さんの批判は、コアなクルマ好きには刺さらないだろう。


逆に面白がって多くのユーザーがFRのCX-60を積極的に選んでいる。色々難点はあるけど、それでも車重を軽くして欲しいというユーザーの声に精いっぱい応えた。MAZDAに言わせれば島下さんみたいな荷重移動ができない運転下手は乗ってはいけないグレードかもしれない。それほど価格差もなくAWDモデルも選べるのだから、FRだけに試乗して「これはダメだ」と結論している島下さんのレビューは理解し難い。一体どこの意向を汲んで動画作っているのか?299万円のSUVが売れたら困るのは、クラウン(2車種)、レクサスNX、RXなどRAV4ベースで価格をマシマシにしたSUVモデルを抱えるトヨタ陣営くらいじゃないか?


同じクルマではない


カムリ、RAV4、ハリアー、NX、RX、クラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、アルファード、ヴェルファイア・・・全部同じKプラットフォームで、パワーユニット&駆動システムも共通という神がかり的な「合理主義」で低コスト化し、やたらと値打ちをつけて売ろうとするトヨタグループの商売を否定はしない。しかしこれだけ合理化すれば弊害も出てくる。実家のカローラツーリングは、Kの一つ下のCプラットフォームを使っている。先行して発売された北米向けの全長&全幅が短縮されている。Bピラーの骨格が車内に大きく張り出していて、シートのスライドとリクライニング位置によっては側頭部をぶつけてしまう。


CプラットフォームもKプラットフォームも、スライドドアを備えたミニバンにまで流用してしまう共通設計シャシーである。メルセデスやBMWではそんな無茶な設計はしない。MAZDAもスバルも現行プラットフォームを採用するようになってからスライドドア車は廃止した。10年ほど前で、まだまだコンプライアンスがまだ緩かったであろう当時のMAZDAの担当者は無邪気に答えていた「スライドドア車まで共通化したシャシーでは世界に勝てない」と・・・。



海外メディアの酷評


MAZDAディーラーにお世話になってから様々なモデルに試乗したが、MAZDA車とトヨタ車では設計の基準が大きく違う。ハンドリングやブレーキ&アクセルフィールなどの一般的な乗り味が違うという話ではない。もっと単純にクルマのサイズ感がトヨタはテキトー過ぎる。カローラツーリングに限った話ではなくて、寸詰めの設計をしているトヨタのクルマにはほぼ同じことが言える。レクサスISだったりC-HRでも強く感じた。シートの調整幅が少なく、ハンドル角度もペダル配置にも無理が生じている。


インテリアの素材は同クラスで比較すると、ほぼほぼトヨタ車の品質は日本車最低クラスだ。Cセグともなればホンダ、日産、MAZDA、三菱はそれぞれに「良いもの」を感じさせるが、新型プリウスの質感が海外動画で嘲笑されていた。ガタガタのセンターコンソールにペラペラのボデー、スカスカのドア開閉音、クルマとしてのクオリティが極めて低いことをハッキリとは言わないが暗示している。そうだ・・・これはトヨタ&レクサス車全般に共通して言えることだ。レクサスに乗る自動車系ユーチューバーなんてクルマの価値がそもそもわかってないんじゃないの!?



2023年4月12日水曜日

小学館新書「EVショック」 ユーチューバーが描くクルマの未来



AJAJ激震!!素人がクルマの本を書く時代


 「EVショック」の著者はユーチューバー「EVネイティブ」さんといい、動画活動ではエンジン車に乗っている旧世代の人々を「あちら側(仮想敵国)」とし、「こちら側(EV推進派)」の主義・主張をわかりやすく展開されている。対立構図はチャンネル登録者を増やすポピュラーな方法だと思う。ネットメディアは「社会の分断」を生み出す傾向があると問題視されるが、カーメディアの場合は雑誌媒体の時代であっても十分に分断は起きていたので、なんでもネットのせいにするべきではないかもしれない。


説明が丁寧で非常にわかりやすいのだけど、意見が過激なので、この方に対しては好き嫌いが大きく分かれるんじゃないかと思う。MAZDAのBEV(MX-30)がデビューした頃には、「このメーカーは根本的に間違っている!!」くらいに批判していた。また急速充電設備の普及を目指す協会にMAZDAが加盟していないことに対しても、「充電設備の普及にはびた一文払わず、MAZDA車は他社の設置した充電設備を使うのか!?」など最もらしく断罪していた。現実にはMAZDAディーラーでは自宅充電設備を持たないユーザーには販売しない方針を採っている。ちょっと見解の違いがある。



出版業界は制約が多過ぎる!?


トヨタbz4Xの充電性能にも大声で苦言を呈していた。充電率が80%以上になると充電性能(速度)が一気に落ちることを実験で示したまでは良いけども、その結果を持ってトヨタ(スバル)のBEV技術は遅れていると判断していた。スペック主義のトヨタがそんな愚かなことを許すだろうか。実際には100%充電してしまうとリチウムイオン電池の寿命が急激に落ちるため意図的な制御が働いているだけで、過充電によるバッテリー温度の上昇など様々なリスクを避けている。世界有数の品質管理を誇るトヨタだけに安全&品質第一に設計しているわけだ。


動画で繰り返し発信されていたMAZDAやトヨタに対する批判はこの本の中には登場しない。理由はわからないけども、視聴者から何らかの指摘がされたのかもしれない。youtubeではとにかく舌鋒鋭いけども、残念ながら新書では完全に牙が抜かれている。出版社への配慮などいろいろな事情があるのだろう。有力な広告主である日本の自動車メーカーを怒らせるのは、どこの出版社であっても得策ではないし、批判したところで評価が上がるわけでもない。



若者の方がクルマがわかってる!?


少なからず的外れな批判もあるし、高速道路でBEVを実験する本質的矛盾もあるけど、EVネイティブというユーチューバーは26歳という年齢を考えたら非常に優秀な「オピニオン・リーダー」だと思う。BEVは別に好きじゃないけど、よく調べていて為になるし面白いから見てるという層がチャンネル登録者の主体なのだろう。MAZDAやトヨタをボロクソに言ってた頃はまだ荒削りだと感じたけども、数年も欠かさず努力を惜しまない投稿を繰り返していれば、どんどん議論は洗練されてくる。若いからか成長が異様に早い。


高齢者がほとんどとなっているAJAJのライターは、10年前から変わり映えのしないレビューを書き続けている。読者はとっくの昔に飽きている。メンバーを入れ替えたくても他に人材がいない。小沢コージさんなどは例外で、10年前とは別人というレベルで変化している様子だけども、30〜40分のyoutubeライブを聴いていると、やっぱり根っこは変わっていない・・・と感じる時もある。10年前は「輸入車じゃないとクルマじゃない」みたいな空気がプンプンしていたが、現在はそれを押し隠して日本メーカーに胡麻をスリスリしていらっしゃる。



古い価値観の破壊


バリバリのバブル世代である小沢コージさんはやはり輸入車が好き。とりわけドイツ、イギリス、イタリアの高級車ブランドに絶対的な価値を置いていることは隠せない。それに対してZ世代のEVネイティブさんは、メルセデスもBMWも全く興味がないようだ。その辺の感覚にはいくらか親近感が湧く。伝統ある自動車メーカーへの敬意は持っているけども、「憧れ」という感情はほとんどないようだ。高級車ブランドでマウントを取ってくる上の世代に対して、BEV至上主義で逆マウントを取っている。



ちょっと残念なのが、個人的に好みのMAZDAが、「高級車マウント世代」からは、貧乏人のクルマと見做され徹底してバカにされ、「BEV至上主義世代」からも、BEV戦略で完全に立ち遅れたオワコンメーカーとバカにされている。多くのMAZDA好きは、とっくに諦めている。他者の意見を変えることは簡単ではない。クルマに関しては承認欲求などほとんどないからMAZDAを選んでいる・・・それは紛れもない事実だ。



BEVを過小評価する日本


EVネイティブさんによると、テスラ、ヒョンデ、BYDなど日本市場ではまだあまり認知されていないブランドがとてもクールらしい。機能と価格が絶妙で、補助金を満額貰い、アクティブ(10年30万キロ?)に使いこなせば非常に気分よくクルマが所有できる・・・みたいなことを本書では言いたいらしい。BEVはエンジン車と比べて部品点数も少なく故障のリスクは下がるだろうし、他にもフル電動の一元機能化でさまざまなメリットがあるようだ。


日本のカーメディアではBEV化のメリットを真面目に訴えるレビューはほとんどなかった。日本メーカーや、保守的な読者層に配慮し過ぎる余り、フェアな議論が交わされてきたとは言い難い。大手メーカーとの利害がほとんどない非AJAJの福野礼一郎さんがテスラ・モデル3をベタ褒めしていたくらいだろうか。そんな社会背景の中で、まだ26歳の若者がエンジン車を徹底批判しBEVのメリットを最大限に訴える姿は異質に映る。



2023年はどうなる!?


BEVの様々なメリットを理解できる場が、カーメディアの大人の事情もあって、日本ではなかなか目にすることがないけども、それが逆にEVネイティブ・チャンネルにはかなり追い風になっただろう。ちょっと前にトヨタが大々的にBEVへの参入することが発表され、今月の初めには2026年までに10モデル150万台という具体的な数字が出された。これまではひた隠しにしてきたけども、トヨタもBEVのメリットを十分に理解していて、今後は日本の既存カーメディアでもBEVのメリットが当たり前に語られるようになるのだろう。


日産がいくらBEVで世界に先行しても、トヨタが決断しない限りはカーメディアは動かない。テレビなどの一般メディアも大企業の意向を尊重して方針を決定する。小学館のような出版社も同様でEVネイティブさんの主張からすっかり「棘」が消えている。それでも2023年初頭のタイミングで、このような新書が発売されるに至ったのだから、小学館がトヨタの意向を汲み取って「BEVメディア解禁」を判断したのかもしれない。今年はBEV出版祭りになるのか!?



トヨタが慌ててBEV150万台を宣言


別にBEV推進派は「エンジン車を売るのやめろ!!」と過激なことを言っているわけではない。その主張の大部分はテスラ、ヒョンデ、BYDが主導権を争っている中で、日本メーカーがある意味で予想通りの慎重な姿勢しか取れないことに対する失望感を言語化しているだけである。少なくともEVネイティブさんには、働きたいと思える成長企業として、テスラ、ヒョンデ、BYDの方が、トヨタ、日産、ホンダよりも魅力的に映るのだろう。


世代によっては解雇が少ない日本の雇用環境が良いという意見もあるが、結局のところ大企業の「ステマ」に影響されているに過ぎない。そしてそんな世代もあと10年すれば労働市場では少数派になると思われる。航続距離500km級のBEVが、BYDだと440万円で買える。日本メーカー車と比べて耐久性が大きく落ちるとも考えにくい。トヨタが慌てて出した150万台宣言はBYDを意識したのだろう。さて・・・今後はEVネイティブさんがBEV化に踏み切ったトヨタ陣営に取り込まれるみたいなオチが付くのだろうかか!?



2023年2月16日木曜日

YouTubeカーメディアはオワコンなのか!? Kozzi TV




2022年にブレークスルーしたKozziTV

 お気に入りなYouTubeチャンネルの「Kozzi TV」だけど、AJAJの渡辺陽一郎さんが加入してから調子がかなり上向きな様子で、チャンネル登録者も1年前にこのブログで記事を書いた時から4倍に増えている。2022年の序盤に渡辺陽一郎さんが参加した動画が初めて登場し、現在までに16万再生されており、このチャンネルの全動画の中で2番目に大きい数字を叩き出した。これまでも小沢コージさんの幅広い人脈でさまざまな評論家が参加してきたが、特に渡辺陽一郎さんはYouTubeとの相性が良さそうだ。


生活の中でYouTubeを視るタイミングは、①食事&飲酒 ②入浴 ③寝落ち ④スポーツ中継と同時進行・・・などが多いと思うが、小沢さんと渡辺さんの漫談は食事中以外に楽しむのだったら割と良いコンテンツだと思う(飯が上手くなる感じは全くない)。余計な視覚情報を出さないので、画面を見ていなくても本編の内容が入ってくるし、なんだか気軽にクルマ好きと雑談しているハッピーな気分になれる。気分転換などにはちょうど良い。クルマの動画は他にも色々あるけど、テンポや話の「濃度」がちょうど聞きやすいと思う。



小沢コージさんの最高の相棒は!?

2人の相性も良い。これが小沢コージさんと島下泰久さんの組み合わせだったら、ひたすらに高級車への憧れを垂れ流す「ど素人」のチャンネルになってしまうだろうし、勝手な想像だけど、島下さんが敬意を示さずに上から目線な態度に小沢コージさんの機嫌がどんどん悪くなっていきそうだ(島下さんが先にキレるかもしれない)。以前に岡崎五朗さんがKozziTVに登場した回があったけど、爽やかで完成度の高いカーメディアを目指す岡崎さんには、徹底的に下世話路線を爆走する小沢さんのスタンスは受け入れ難いものがあったように感じた。テレビでMCやる人はイメージが大切だ。


YouTubeカーメディアにおいて現在のところNo.1の実績を誇る五味康隆さんと小沢コージさんがコラボしても相性は悪そうだ。またまた勝手な想像だけど、五味さんが小沢さんのテキトーで無神経な発言に対して、軽蔑気味のリアクションで小馬鹿にしているところがなんとなく目に浮かぶ。まあ視聴者からみれば、どっちもかなりテキトーだと思うが、五味さんは自分はテキトーだとは思ってないだろう。この2人の放談が実現したところで、ひたすらにスカした空論ばかりが飛び交いそうで、おそらくリスナーには苦行でしかない。



渡辺陽一郎さんの良いところ

渡辺陽一郎さんはベストカーなどのレビューを見る限りは、特段に個性的な部分はないし、この人特有の分析が効いた分野というものもあまりない。失礼だけれども、福野礼一郎さんや沢村慎太朗さんのように「この人のレビューを読みたいからクルマ雑誌を買う!!」と指名されるタイプのライターではない。残念ながら今のAJAJにはそんな人はいない。もし居たらおそらくどこかのメーカーとトラブルにでもなって除名処分にされてしまうだろうから、まあ当たり前のことではあるが。


個人のレビューとしては興味はないけれども、Kozzi TVでの喋りではまさかの輝きを放っている。小沢コージさんと絶妙なハーモニーを醸し出している。小沢さんの個人レビュー動画ではちょっと物足りない感じがあるが、これを渡辺陽一郎さんの説明がうまく補ってくれている。何かとテキトーな小沢コージさんを相手に、とことん真面目に説明を遂行できる人はそうそういないだろう。私以外の多くのリスナーにとっても、ベストカーのレビューの印象とは違って、本当はとても真面目な人なんだとわかって、ビックリしたんじゃないだろうか。



Ride Nowと比べて

渡辺陽一郎さんの想像以上にきめ細かい解説に対して、小沢コージさんが躊躇なくツッコミを入れるところが、クルマ議論の雰囲気になっていて楽しい。2人のパワーバランスもちょうどいい感じだ。2人組のYouTubeカーメディアといえば島下さんと難波さんによる「Ride Now」もある。こちらの難波さんも真面目でクルマが好きな様子が伝わってくる解説を繰り出すという意味では渡辺陽一郎さんに似ているが、残念ながら島下さんのツッコミがかなり「庶民離れ」していて冷たいことが多く、せっかくの熱狂的な話が一気にシラけることがある。


「Ride Now」はトヨタを中心とした案件をたくさん消化するために立ち上げたチャンネルなんだろうけど、直近ではカローラのMC、プリウスのFMC、レクサスRXのFMC、GRカローラのデビューなどにたくさんの動画で構成されている。案件なので必死に演じているが、島下さんの一般人向けのクルマに対する興味の無さがしっかり伝わってくる。「うん。まあいいんじゃないですか。」っていう心の声がダダ漏れしていて、これらのモデルを真剣に検討している人にはちょっとイライラする部分はあると思う。難波さんのいい感じのマニアぶりがあまり活かせてなくて本当に残念だ。



どんなクルマでもレビューが成立

それに対して小沢コージさんは日本市場で販売されるほぼ全てのクルマに対してハッキリと情熱を表現ようになった。20年くらい前にはベントレーやアウディTTなど欧州のGTカーばかり乗っていた人とは思えない。ここまでクルマの好みは変わるものなんだろうか。20年前の小沢コージさんを知る人は今も距離を感じているかもしれない。今ではホンダN-BOXのユーザーでもあるそうで、これは現状の日本市場のさまざまな乗用車をジャッジする意味では非常に好都合な「基準車」である。


KozziTVが地味に凄いところは、この手のクルマ好き向けYouTubeなのに、軽自動車やミニバンのレビュー動画が一番良く回っていることだ。島下さんや五味さんのチャンネルやそれに類似する素人チャンネルでも、この手のクルマはまず取り上げることすらないから、KozziTVに視聴者が流れて着いている可能性もある。AJAJの女性ライターを使った各メディアのチャンネルでもやはりスライドドア車や軽自動車の登場は少ない。実際にスライドドアのKカーを使っている小沢コージさんだからこそリアリティがあるレビューができるのかもしれない。



他では視ないクルマも・・・

ダイハツ(トヨタ)、スズキ(マツダ)、ホンダ、三菱(日産)の4大Kカーグループは、KozziTVの価値にボチボチ気が付き始めているかもしれない。タント・ファンクロスやスペーシア・ギアなど他のYouTubeカーメディアでは見たこともないクルマを、KozziTVで初めて存在を知るなんてこともある。セレナ、ステップワゴン、ノアなどのミドルミニバンも同じく他の媒体ではほとんど登場しない。絶望的に退屈な某カーメディアのチャンネルなどではひたすら真面目に解説されているだろうけど、とても視聴は耐えられないだろう。小沢さんの軽いノリだからこそ絶対に買わないようなクルマのレビューでも見れるようになる。


逆にKozziTVで全然再生回数が増えないのがMAZDA車のレビューで、どうやらMAZDAユーザーと小沢コージさんの相性は最悪らしい。数年前ならばどのチャンネルにおいてもMAZDA車は最強コンテンツだったと思うが、どうやら風向きが変わってきたようだ。MAZDAがAJAJに対して冷たい姿勢で、ユーザーにもそれは十分に伝わっていて、どのチャンネルでもMAZDA車レビューは数年前ほど目立って伸びていない。MAZDAユーザーの視聴者はメーカーの下請けテストを担当する「ひでぽんチャンネル」などに全部持って行かれているのかもしれない。確かにあのチャンネルは面白い。



小沢コージさんの時代が来ている!?

MAZDA、スバル、ホンダ、日産、BMW、メルセデス、ポルシェ、アウディ、VWなどクルマ好きが支持するメーカーにおいては、自社メディア、修理屋メディア、素人メディアが優勢だ。KozziTVもRide Nowも苦戦している。島下さんも五味さんも「トヨタ&レクサス」だけが頼れるコンテンツになりつつある、そのためメーカーに代わって全力で「3年待ち!!」アピールの広報活動を積極的に担っている。もし「ガチ」のカーメディアであるならば、ランクルやプリウスの納期の長さの裏側を思いっきり暴露したらいいんじゃないだろうか!?


YouTubeカーメディアの参入障壁が高くなったようだ。自民党右派擁護の政治系チャンネルが根強い高齢者の支持者によって生き残るみたいに、トヨタ&レクサスに露骨に擦り寄るチャンネルが僅かに生き残るシビアな世界になるのだろうか!?そんな中で小沢コージさんの独特なハードボイルド感だったり、あからさまにアホなことを言ってしまう感は、どこかトラブル&失言を期待してついつい再生してしまう。そんなキャラクターがYouTubeにおいては良いスパイスだろう。渡辺陽一郎さんという素晴らしい相棒を得たKozziTVには2023年もさらなる躍進を期待したい。




2023年2月4日土曜日

トヨタの「軍師」を務めるAJAJライター現る



 

恐れ入りました・・・

「トヨタには、水素エンジンの意味を伝える戦略がいるのではないか。確か、昨年のスーパー耐久、もてぎラウンドでのことだったと思うが、筆者は豊田章男社長に、ひとつの提案をした。『年明けのオートサロンにAE86の水素コンバージョン仕様を出してみたらどうです?』」(引用終わり・CAR AND DRIVER3月号より)


比較的にメジャーな自動車雑誌の連載に堂々と書くくらいなのだから、おそらくほぼほぼ事実なのだろう。こんなブログを書いている私が言うのもなんだけど、日本の自動車ライターってのは、自動車メーカーの気持ちなんて全くわからない人々であり、メーカー側も相応のメディア対応こそするものの、自動車ライター側の提案で大手メーカーのプロジェクトが具体的に動くなんてことはあり得ないと思っていた。



この1年で状況が変わった!?

どのレビューもメーカー資料の翻訳でしかなく、ステマな雰囲気が強烈な池田直渡さんだから、てっきりメーカーに頭が上がらない御用聞きライターだと思っていたが、実際のところは豊田章男社長から諮問を受け、直接に献言までできる「旗本」いや「側用人」だったらしい。自民党政権がダラダラと続き、さまざまな御用論者がしばしば「時の人」になっているが、カーメディアの世界でも王者トヨタの「代弁者」を自認して、他のAJAJライターを見下すように威張ったレビューを書かれる人がチラホラ見られる。池田さんと島下さんはその傾向が強い!?


1年くらい前に、池田さんの共著した本の感想文をこのブログで書いたところ、ご本人がわざわざSNSでリアクションしてくれたことがあった。まさかこんなことになるとは思わずに、じっくりと読んで、のびのびとそのまま思ったことや感じたことをツラツラと書いた。ブログの読者向けに書いているので多少のシニカルさはご愛嬌だろう。池田さんにも岡崎五朗さんにも敬意を持っていたので、そこまで口汚く罵るような内容ではなかったのだけど、メディア人の力とは恐ろしいもので、池田さんが怒りのリプ投稿したことで「私が失礼極まりない投稿をした」かのような気分にさせられた。



寄らば大樹の陰

私のような面識もない素人から「権力に擦り寄っている」と書かれたら、あまり気分はよくなかったかもしれないが、「E V推進の罠」の出版された背景を説明するには妥当な表現だったと思う。別に「権力に擦り寄る」なんて、日本社会で生きていればほとんどの人が無意識のうちにやっていることだ。戦後78年の平和が続いたのだから、社会はどんどん階層化するのは当たり前であり、令和の日本に本田宗一郎と藤沢武夫が現れたら、これだけ規制でガチガチだと、まともに起業すらできないのではないか(エンジン付き自転車なんて発売できない)!?


怒らせたブログ投稿から、時間も経ち状況は少しづつ変わってきた。「擦り寄った」先の自民党保守勢力の重鎮・安倍元総理が殺害されたりしたけども、AJAJの池田さんは「日本会議」からの信頼を得たようで、いつしかトヨタの相談役(非公式)にまで駆け上がったようだ。別にトヨタが保守系政治団体とつながりがある訳ではないと思うが、何らかのコネクションでトヨタと利害が一致する有能な「御用論者」として紹介されたのだろう。



社長交代の真相!?

再び引用させてもらう。「豊田社長の『私は相当にニッポンLOVEな人間だと自負していますが、その私がタイで仕事をしたほうがハッピーになれると、こんなことを口にしていることに危機感を覚えたほうがいいんじゃないでしょうかねぇ』という言葉を聞いて、トヨタが日本を出ていく日が、本当に来るかもしれない慄然とする思いだった。」(引用終わり・CAR AND DRIVER3月号より)


こんな言い方をする人は、自民党の大物政治家にももはやいなくなったんじゃないだろうか。いちいち説明しないけど、東証一部企業のトップとしてかなりダサい発言である。この些細な発言でも、なにか問題が起きたら「コンプライアンス違反」で株主集団訴訟にもなりかねない。そういえば急転直下でトヨタの社長交替が発表されたのも、このCAR AND DRIVER3月号が発売された直後だった。



言っては(書いては)いけないライン

発言する社長も、そのまま書いてしまう池田さんも、それを見逃してしまう編集部も、この発言が問題ない時代(昭和)の人間なんだろう。サッカー日本代表の堂安律が「オレがやる気を無くしたら日本代表は終わりだ」なんて思っていたとしても、わざわざ電波にのせてビッグマウス発言をするだろうか!?テニスの大坂なおみが「私のいないグランドスラムになってもいいんですか!?」とか言ったことあるか!?ゆたぽんが「ユーチューブ辞めたら日本中が悲しむ」なんて言うだろうか!?


自動車メーカーとしてのトヨタには敬意を持っているが、この発言はさすがに理解できない。トヨタと政府が上手く歩み寄れないことや、トヨタの環境への取り組みが日本のユーザーに十分に伝わらずにイライラするからといっても、「ポピュリズム」に訴えるとは情けない限りだ。バカな読者は「トヨタがいなくなったら日本は終わりだ!!」と池田さんと同じ心境でヒステリックになるだろうけど、一定のリテラシーがある読者からは「さっさと出ていけよ!!」と余計な反感を買うだけだ。



「日本を出ていく」という意味

トヨタをはじめ、日本の大手企業がいくつか日本からいなくなれば、中長期的に経済は上向くと考えられる。山一証券や北海道開拓銀行が破綻して、一時的に超就職氷河期にこそなったけれども、日産、スバル、MAZDAなど破綻直前だった自動車メーカーは構造改革を経てV時回復を果たした。トヨタも好調な業績が報道されているけども、それはアベノミクスの円安誘導や法人税圧縮政策によって「泡のような利益増」があったに過ぎない。


まさか池田さんは、「MAZDAがいなくなったらロードスターが買えない」「スズキがいなくなったらジムニーが買えない」とかいう意味で「トヨタがいなくなったら大変だ」と言っている訳ではないだろう。さてトヨタ車の生産が日本で全く行われないとなんかマズいのか!?アップルもキーエンスも本国に自社直営の生産拠点なんて持っていない。トヨタの販社も今ではダイハツ車の販売が半数を占めるようになってきている。トヨタの看板を外して、ダイハツ車に加えて日本で販売網を持ちたいフォード、ヒョンデ、BYD、テスラなどと契約すればいいんじゃないの!?



何の問題がある!?

カローラ、ヤリスクロス、シエンタ、アクアなどを作っているのはトヨタ自動車東日本、アルファード、ハリアー、ノアなどはトヨタ車体、レクサスRX、NXなどはトヨタ自動車九州が作っている。GR86も他社の群馬工場、スープラはオーストリアのマグナ・シュタイナーの工場で生産されている。もしトヨタが日本から離脱しても、国内はおろか世界中にも輸出できるサプライチェーンを持つトヨタの国内生産設備は、世界中の自動車メーカーが後釜に参入したいくらいだろう。トヨタ紡績、デンソー、アイシンのサポートが受けられるのだから、スロバキアやトルコなどに進出するよりも、難なく高品質なクルマを作れるだろう。


トヨタ離脱のショックで、国交省や経産省が外資の規制緩和を行い、トヨタの不要になった日本向け車種のライセンスがVWグループやステランティスグループに売却され、アルファードやクラウンクロスオーバーが、シュコダやオペルといったブランドから発売されたら面白いと思うのだが・・・。トヨタはタイでハッピー、日本市場も外資企業の参入で北米並みに賃金は上がり、車両価格が下がれば、若者も「海外でバイトしよう」とか思わなくなるのではないか。池田さんにはぜひ「軍師」としてトヨタのタイ移転を強力に後押ししてほしいものだ。




 



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