2024年9月10日火曜日

CX-80 を葬りたい闇の勢力

 

CX-80を買わせない理由は?

久々にMAZDAの新型車となるCX-80が発表された。量販型のコンパクトカーではなく、ブランドのフラッグシップとなる高級モデルの登場だ。2012年の初代CX-5の大ヒット以降、MAZDAの中大型モデルは非常に注目度が高く、MAZDA6、二代目CX-5、CX-8、CX-60はいずれもトヨタが警戒するほどの好調な売れ行きを見せている。販社や顧客の数を考えればトヨタの中大型モデルと比べて絶対的な販売台数は下回るけれども、トヨタ以外のメーカーが直近の10年余りでこれだけのモデルを投入して善戦していることが快挙と言える。


そんなMAZDAの決定版のような大型SUVのCX-80だけど、なぜか一部のインフルエンサーから発売前にもかかわらず怒涛のようにケチが付けられている。どんな経緯からマツダ整備士ユーチューバーがCX-80のネガキャンを繰り返しているのかわからないけど、これはさすがにマナー違反だと感じる。動画の投稿頻度も非常に高くなっていて、あくまで憶測に過ぎないけども某企業からの「案件」ではないか!?という話をちょっと前の投稿でも書いた。その後もネガキャン動画は執拗に続いていて、それぞれから「CX-80は買わない方がいい」とのメッセージがハッキリ読み取れる。



ネガキャンが悪質になっていく

比較的に新しい動画では、とうとう「MAZDAには安全なクルマがない!!」とまで言い出した。IIHSなどの海外の衝突安全テストで「世界で一番安全なMAZDA車」という裏付けを得ているブランドに対してのイチャモンには、さすがに多くの視聴者(MAZDAファン)も違和感があるだろう。ひでぽんさんが舅様にクルマを買ってあげようと思ったが、MAZDA自社開発・生産車では「安全面」で条件を満たさないので、MAZDAブランドにOEMされているフレアワゴン(スズキ・スペーシア)を買ったんだそうだ。自分のクルマはレクサスLSやLCで、舅のクルマには軽自動車・・・しょうもないプライベートまで動画で公開する時代にちょっと閉口する。


動画のコメント欄には「ひでぽん」さんのファン(多くはMAZDAファンか?)からの好意的なコメントで埋め尽くされている。自称MAZDAファンだけど、ブランドに対する敬意がなく、やたら上から目線で批判してくる年配の方々だろうか。ユーチューブで新たな視聴者を獲得するには、視聴時間が長い高齢者を狙うのが一番手っ取り早いだろうし、高齢者の世代ではMAZDAは嫌われていることが多い。潜在的なアンチ層を取り込む戦略なのだろう。クルマの魅力で売っているMAZDAに対して、他の国内メーカーはモビリティを売っているので「先進安全機構」を最優先にPRにするのだから、開発の方針は違って然るべきではないか。



「切り取り」が酷い

動画内では分かりにくく誤魔化しているが、MAZDA2とCX-3は「先進安全機構」で他社よりも装備が劣る部分はある。モデルサイクルが長期化しているところを狙い撃ちしている。ちなみにMAZDA3以上の上位モデルであれば他社に遅れを取っている安全機能はほとんどない。カメラやセンサーを使った「先進安全機構」は、狭い場所での切り返しなど徐行時や、駐車場からバックで出る時には確かに有為な機能ではある。CVTで突発的に動き出すリスクがある他社モデルには必須な機能だと思うが、徐行時の余裕を持った制御がしやすいトルコンATを使っているMAZDAやレクサスは、ドライビング環境として上を行く安全性が確保されている。


マツダ整備士ならば当然に知っているであろうけども、ペダル配置やシートの着座姿勢によって事故を削減するというMAZDAのポリシーには全く触れられていない。長時間の運転でも疲れにくいクルマ作りの結果、長距離ユーザーがMAZDAを選ぶ流れが生まれている。某有名AJAJライターの動画では、CX-5が長距離王だと認定していた。長距離ユーザーは乗車時間が長いので、クルマにお金をかける傾向にあるが、近年のMAZDAが日本市場で顕著に中大型モデルで躍進しているのも納得だ。




意図的に誤解させている

国内他社のようにモビリティを積極的に売っていく方針ではないのだから、MAZDA2やCX-3をブランド内から切り取って、他社基準で評価されるのは厳しいものがある。基本設計となる先代のMAZDAデミオ(3代目)は、2008年のWCOTYを獲得した歴史的名車ではあるけども、その設計はさすがに古い。CX-80の登場で第七世代への更新が完了したが、MAZDA2、CX-3のベースは第五世代として設計されたものに遡る。


MAZDA2とCX-3の主要な生産ラインはタイやメキシコにノックダウンされており、開発コストが焼却済みで価格を抑えた新興国向けモデルとして、2Lガソリンエンジンを搭載したモデルが主体となって生産が続いている。日本市場向けはMAZDA2が国内生産でCX-3がタイ生産に切り替わっていて、日本市場向けのモビリティとして主役になるのは無理がある。ひでぽんさんはこの状況を分かりやすく視聴者に伝えるために「MAZDAでモビリティを買ってはいけない!!」と言いたいようだけど、視聴者のコメントを見る限り、「MAZDAは全て買ってはダメ!!」と認識されてしまっている。この程度のロジックに騙される人はMAZDAには向いていないとは思うが・・・。



批判が受け入れられる状況が生まれている

トヨタがMAZDA系インフルエンサーに金を払っている疑惑なんていう道義的な問題よりも、さらに根深いものが見え隠れする。他の動画でも「MAZDAを買ってはダメ!!」というメッセージを強烈に含むものが続いているが、このような動画が嬉々として受け入れられる土壌があるのも事実だ。MAZDAというメーカーの近年の新型車開発に対して多くのファンが、期待してた故に大きな失望も同時に感じていて、そのやり場のない複雑な感情に対して「ひでぽんチャンネル」が寄り添っている部分もあるのだろう。不満の吐口になっている。


ファンの期待という部分でMAZDAはやや楽観的になっている。2010年代には世界的な評価を独占し、トヨタの会長からも評価され、さらに他の日本メーカーが日本市場向けのクルマ作りへのロマンを捨てているという現状が、MAZDAの方針をグローバルで目立たせている。MAZDA以外の日本メーカー車が、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどのカー・オブ・ザ・イヤーを獲得する姿はまず想像できなかった。2020年代になりトヨタ・プリウスの大変身でMAZDAの独走にから状況は変わりつつあるかもしれない。



MAZDAがオンリーワンの時代は終わった?

プリウスに続きホンダからプレリュードが投入され、日産も新型車を投入すると宣言していることから、「MAZDA以外には期待できない」という状況は徐々に変わっていきそうだ。2019年からの第七世代においてスカイアクティブXと直列6気筒縦置きシャシーのどちらもが計画通り実用化された。スポーティでありながら20km/L近いモード燃費を達成していることは、かなり過小評価されているけども、エンジンに関しては「世界のMAZDA」と言っても過言ではない状況になっている。


スカイX&6MTのMAZDA3と、直6ディーゼルのCX-60によって実現した、MAZDAによる「新しい世界線」に対して、トヨタやホンダが執念を燃やしてきたハイブリッドで対抗することは諦め、シビックRSは1.5Lターボに6MT、GRヤリスは1.6Lターボに6MTや8ATを組み合わせるという90年代的アプローチへと立ち返っている。環境「先進国」の日本が自信を持って送り出したハイブリッドの道徳的意義は高いのだろうけど、同時に消えゆくカーライフへの飢餓感も作った。最も飢えていたのがMAZDAの経営陣だったというオチだ。



立場の違いは大きい

世界のどのメーカーが、最後まで俺たちのカーライフに真剣に向き合ってくれるのか?ポルシェ、BMW、トヨタなども候補に上がるかもしれないが、MAZDAこそが異端とも言える経営方針で楽しくて所有欲を高めるクルマを作ることに全振りしている。フェラーリやメルセデスと並んで3大の「カーライフの可能性を追求するブランド」だと自負してるかもしれない。評価は人によって分かれるとは思うが、事実として半世紀を超えてスポーツカーを作り続けてきた稀有なブランドに対して、「モビリティ性能をもっと上げろ!!」とは無作法な批判ではないか?さすがにフェラーリに同じことは誰も言わないだろう。


世界のどこのメーカーよりもたくさんの逆境を超えてきたMAZDAの歴史を知っていれば、このメーカーに「常識」を押し付けることが迷惑以外の何物でもないことはわかるはず。創業間もないアマゾン(5期連続赤字)に対して、「立ち読みできなかったら本なんて売れるわけねーだろ!!」と批判しているようなものだ。「EVシフトなんてできるわけないだろ!!」と批判されたテスラが、北米市場でメルセデスやレクサスを軽く超えていった。・・・ただ面倒くさいことに、安易で思考停止な批判意見が有益になるケースもある。それは日本向けユーチューバーやテレビ局がコンテンツを楽して量産する場合だ。



2024年9月2日月曜日

福野礼一郎さん「CX-60はBMWを超えているけど・・・ゴミ」



 

MAZDA新車記事にアンチコメント襲来

MAZDAが久々に新型車CX-80を発表したこともあり、久々に各メディアのネット記事コメント欄が荒れている。MAZDA車が他社ユーザーから嫌われる理由はいろいろあるとは思うけども、わざわざコメント欄に「汚れた人間性」を晒すまでさせてしまう原動力は何なんだ!?と不思議に思う。1〜2行のコメントで、クルマの感想を述べたところで、どう考えても余程の浅知恵くらいしか披露できない。それがほぼアンチコメントになるわけだから、思考停止な人々のステレオタイプで気晴らし的な悪口が並ぶ。


まだ廃刊には至っていないベストカーというカーメディア雑誌がある。毎号の特集ベージでは多数のライターを動員して、話題のクルマへの感想を数行で述べさせて得点を付けるという生産性の乏しい企画を続けている。リーダー格のAJAJ国沢光宏さんをはじめ、短いコメントを求められるレギュラー評論家がインパクト重視で刺激的な表現が多くなるのは無理もないし、国沢さんだけが悪いわけではない。ベストカーの企画で量産された「アンチ・MAZDA・コメント」を、高齢者中心の読者がネットのコメント欄に無断転載する。リテラシーと人間性の低さに目を覆うばかりだ。



クルマ批評は長文レビューに限る

カーメディアにはさまざまな種類がある。雑誌媒体でステレオタイプな短文で、活字があまり好きではない読者にネタ的に読ませるベストカー的なものもあれば、その対極には福野礼一郎さんの連載のように読者に知識・集中力・想像力の3つを高いレベルで要求するインテリ向けのものもある。短文カーメディアやネットコメントでCX-60を表現させると「開発不足」「欠陥品」といった営業妨害的な評価ばかりになってしまう(バカメディアとバカ読者は自主規制を願いたい)。短文メディアではメーカーと開発者がどんなクルマが目指したのか?といった核となる部分は全く読み取れない。


福野さんが長文で書いたレビューを読むと、このクルマに関して見えてくるものがまるで異なる。実際に試乗したことがあるクルマなら答え合わせになって楽しい。CX-60についてもすでに書かれていて、その内容を無理やり短く要約すると、この記事のタイトルみたいになる。しかし残念ながら「ゴミ」とジャッジする理由までは全く盛り込めていない。個人的にMAZDAばかりを好んでいるので、「MAZDA車がベンツやBMWを超えている」という内容に全く悪い気はしない。しかし特筆すべきことでもなくなっている。福野さんのレビューではすでに10年前からMAZDA車はベンツやBMWを超えているとハッキリ書かれているから・・・。



異次元の日本メーカー

13年くらい前に初めてのMAZDA車(GHアテンザ)を買ったが、その当時からハンドリング性能においては、総合自動車メーカーの中ではMAZDAこそがトップだと感じた。あまりの感動にブログを書き始めて、さまざまな記事で「MAZDAはドイツ車を圧倒している!!」と自信を持って堂々と書いてきたが、当初はアンチコメントが相当数やってきたものだ。しかし10年くらい前から福野礼一郎さん、沢村慎太朗さん、水野和敏さんなどのレビューで、ハンドリングに関してはMAZDAが世界最高のレベルにあるといった論調が増えてきたこともあり、否定的なコメントはほとんど無くなった。


今ではMAZDAよりBMWが、ハンドリングで優れていると主張する人は圧倒的に少数派だと思う。福野さんも事実を捻じ曲げるようなことは書かないと思うので、CX-60がBMW・X3を凌駕したハンドリングを備えていると当たり前のことを書いたに過ぎない。福野レビューの魅力は目立って良い点と悪い点をしっかり書くことだから、当たり前でも書くべきなのだろう。ハンドリングも結論として用意されていた「ゴミ」の理由にMAZDAファンとして大いに共感してしまった。CX-60に対して漠然と感じていた想いを福野さんが見事に言語化してくれている。



福野基準

福野さんが個人所有のプライベートカーで、公表されているクルマが、シトロエンDS5、BMW3シリーズ(F30系)、アルファロメオ・ジュリアだけども、いずれも欧州メーカー製でターボエンジンとトルコンATが組み合わされている。モーターファンイラストレーティッドの連載に登場するクルマの車種は担当の編集者が決めているようだけども、過去のレビューを調べてみるとコンパクトカー、軽自動車、BEV専用車こそあるものの、ミドルクラス以上のモデルではガソリンエンジンにトルコンATが配備されたモデルばかりが選ばれている。


例外的にトヨタRAV4のレビューがあったが、タイトルの副題に「ターボとトルコンATが欲しい」というクルマ好きなら誰もが感じるであろうことが遠慮なくハッキリと書いてある。本編を読んでも、このクラスのSUVならばトルコンAT積んでくれないとお話にならない(このメーカーはわかってない)・・・みたいなことが書いてある。これには担当編集者も相当に焦ったことだろう。アルファード、ハリアー、プリウス、クラウンクロスオーバーなどのトヨタの主力モデルは「福野基準」を満たしていないので連載に登場するのも難しくなっている。とてもじゃないが怖くて持ってこれない。



世界一の自動車評論家

メルセデスやBMWに対して強烈な批判をするようになった福野さんを、トヨタの中上級CVT車に乗せたところで酷評は免れないし、全くやる気を見せてくれないかもしれない。そして出版社としてもトヨタとの関係悪化は極力は避けたいというのが本音だろう。トヨタに配慮して福野レビューを「検閲」したり、余計な「注文」を付ければ、間違いなく福野さんがヘソを曲げてしまうだろう。2023年末に発売されたもので、レビュー集は8冊目となる。単行本がこれほど売れるライターは日本どころか世界でも他に例はない国宝級なのだから特別扱いは当然だろうけども。


「福野基準」に適合するモデルを探してくるので必然的に輸入車の割合が高い。そして日本メーカーでブランドの全ラインナップが連載に登場できるのはMAZDAだけだ(SUBARUは完全追放?)。日本メーカーで唯一の福野レビューに堂々登場できるMAZDAが作った、渾身のCX-60に対して、いつも乗っているメルセデスやBMWの同クラスモデルよりハンドリングなど技術的なレベルでは完全に優っていると判断している。ただしSUVという運動性能を生かしきれないパッケージでは、福野さんの愛車にはなり得ないという話だろう。



選ばれしブランド

CX-60はMAZDAがこだわっただけあって、メルセデスGLCやBMW・X3と比べても非常に素性の良い仕上がりを見せている。縦置きエンジンのSUVが最も大好物という人々がどれだけいるのかわからない。福野さんも彼らの趣味は全く理解できないかもしれない。それでもこのジャンルに名乗りを挙げているモデルは、いずれも傑出した性能を持つものばかりなのも事実だ。メルセデス、BMW、アウディ、ポルシェ、アルファロメオ、マセラティ、ジャガー、ランドローバーといった日本市場でも高い評価を受けているブランドに限られる。それらと比べても、CX-60の設計や仕上げは、MAZDAの確信に満ちた技術が光っている。


上記のブランドの中で、SUV専門のランドローバーを除いた全てのブランドでは、縦置きエンジンのロードカーが生産されている。スカイラインがあって、スカイラインクロスオーバーが派生したように、ユーザーの利便性に合わせて最低地上高とキャビンスペースの異なるロードカーとSUVを作り分けるのがセオリーであり、ランドローバー以外はそれに則っている。現実にはロードカーよりSUVの販売が数倍の規模で多くなっている。そこでMAZDAはSUVだけを作る路線に転換した。



30年経っても克服できない

クルマとしての希少性が求められるジャンルの中で、定番のディーゼルエンジンとSUVの組み合わせを軸としたCX-60には「パッケージを省略した」という致命的な欠陥がある。ハンドリングなどの個々のパラメータでは他のブランドを圧倒するものの、1つのクルマとして価値を測るときに、思ったほど評価が上がらない。この点を指して福野さんは「ゴミ」と言っている。他ブランドがユーザーの利便性を考えて妥協したSUVパッケージでは、最高のドライビング性能は語れない。故にクルマとしての価値は限定的だ。30年も前から日本メーカーの高級車に対しては同じような指摘がされ続けてきた。


R35GT-Rを開発した水野さんの言葉によると、「日本メーカーの開発者は欧州の上流階級の生活習慣を知らないから高級車は作れない」と断じている。個々の技術レベルでは世界をリードする存在であるけども、ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティンに匹敵するクルマは設計・生産できない。福野さんのレビューからもR35GT-Rのような革新性を伴ったクルマをMAZDAに期待したい想いは感じる。しかしCX-60は基盤となるコンセプトでコケてしまって残念という話だ。これは多くのMAZDAファンにも共感されていることだろう。







2024年9月1日日曜日

マツダ整備士ユーチューバーは、他社案件に転んだのか?





大人のガチ喧嘩発生!?

この1〜2年で MAZDAのファンに広く知られる存在となったユーチューバーの「ひでぽん」さんですが、短期間で登録者数を大きく伸ばし、AJAJライターでも名前が知られている島下泰久さんの「RIDE NOW」や小沢コージさんの「cozzi TV」を軽く追い抜かしてしまった。マツダの内部事情がわかるコネがあるようで、他のチャンネルでは得られない情報が満載されていて、数あるMAZDAユーチューブチャンネルの中でトップを取るのは時間の問題だった。


これだけ登録者が増えれば、単なる趣味でなく、ユーチューバーとしての実益を追い求めたくもなるわけで、さらに登録者を増やすにはMAZDAユーザーだけでなく、トヨタやレクサスのユーザーを巻き込んでいくしかない。既存の登録者の多くがMAZDAのファンだとしても、なんの未練もなく「トヨタ最高です!!」「レクサス最高です!!」といった動画を展開し始めた。これまではMAZDAファンの溜飲を下げるものが多かったが、さらに多くのユーザーを抱えるトヨタファンにスリスリする内容の動画が多くなって、予想通りアンチコメントが殺到したらしい。


動画の危険性

顔出しで堂々と喋るだけあって肝は据わっている。アンチコメントに対してもニヤニヤと動画のコンテンツに組み込んでいく。ユーチューブ、ブログ、SNS(Xなど)へのアンチコメントなんてまともな人間のやる事ではないと思うので、個人的にも経験してきたが、アンチコメントのほぼ全てが浅知恵な連中の勘違い発言に過ぎない。SNSで吠えるホリエモンとかひろゆきなど、失礼を承知で申し上げるが、いちいち発言が浅い(間違えも多い)。バ○専門のインフルエンサーを演じて実益を得ている。


頭が弱い人ばかりがユーチューブを見ている・・・・そんな極論を述べたいわけでは決してない。しかしテレビやネット動画などの映像は、さまざまな編集を経てモンタージュが構築された虚構を見せて感情に働きかけてくる。疲れている時に多いけども、ボーッと見て時間を過ごす。自分自身の思考停止に気付いて気分が悪くなる。例えばウイスキー系チャンネルの動画を見て、直後に何も考えずにアマゾンで見ていたボトルをポチる。テレビやネット動画が日常の情報源になってしまっている実家の母親がストロングゼロを飲んでいた時には、厳しく説教したこともあった。



方向転換

「ひでぽん」さんは、アンチコメントに対して最もらしい返答をしている。「MAZDAしか知らない連中に他社の凄さを伝える」「どこにも忖度しないスタイルを貫く」などなど。アンチコメントを書く連中はこんな当たり前のこともわからないのか!?と鼻で笑っている。いや批判の対象はそれじゃない・・・タイミングの問題だ。CX-60は発売当初から売れ行きは好調だった。500万円のMAZDA車がまともに売れるわけがないとタカを括っていたトヨタはさぞかしビビったことだろう。それから間も無く「ひでぽんチャンネル」が執拗に足回りとミッションのガタガタを拡散し始めた。


さらに同じくらいのタイミングで売れ行きがさっぱりのレクサスLSの絶賛動画が上がり始める。これが1年くらい前のことだった。あまりにも唐突であり、多くの視聴者は怪しさを感じたはずだ。「ひでぽん」さんがトヨタの広告代理店から「案件」を受けたと断定することはできない。案件の伴うステルスマーケティングだったとしたら、画面にそれが明確にわかるよう表示する義務があるけども、見たことはないので案件ではないと考えられる。しかしマツダ整備士のチャンネルで脈絡もなくトヨタ車絶賛動画が「PR」表示とともに流れたら、「あまりに露骨だろ」と、トヨタにとっては不都合な評判につながりかねない。



トヨタなら可能?

トヨタくらいの超一流企業は、グーグルにとって収益の柱である「広告受注」と「ビッグデータ販売先」として、最高クラスのVIPクライアントになる。ゆえにユーチューブ規約に関しても「トヨタのステマ」には特別な「除外規定」が存在するのかもしれない(あくまで憶測です)。トヨタ系ユーチューバーはたくさん存在する。「寄らば大樹」とは言ったもので、インフルエンサーとして活動するにあたって、いろいろと面倒な問題が起きにくい制度になっているのかもしれない。


利益のほとんどを海外市場で稼ぎ出すMAZDAに対して、国内市場への依存度が高く、日本市場で異変が起きたら死活問題となるトヨタでは、当然ながら国内市場向けの広告宣伝費は大きく変わってくる。トヨタと仲良くするのは、ユーチューバーとして合理的判断のようにも思える。確かに多くの自動車系チャンネルでMAZDA車の時に顕著に試聴回数が増えるという現象は見られるが、MAZDAが日本市場から撤退してしまったらもはやそこまでだ。



問題は「ある」

マツダ整備士のユーチューバーがトヨタ車を動画で絶賛する・・・という企画自体がとても新鮮であるし、レクサスLSやアルファードに憧れるユーザーに寄り添った内容の投稿をしても、それはあくまでMAZDAと「ひでぽんチャンネル」の関係上の問題に過ぎないので周囲がとやかく言うことではない。「ひでぽん」さん自身もそのように主張している。アルファード絶賛動画がMAZDAファンやMAZDAの関係者から顰蹙を受けているとのことだが、最初は私も文句を言う連中がおかしいと感じてはいたが、実際に動画を見て意見は180度変わった。


そんなにアルファードが良くて、それが正直な感想であり、本人が主張するように一切のステマ・案件ではないと言うならば、今後の「ひでぽんチャンネル」はアルファードがメインになっていくことだろう。ここまでは何の問題もない。しかし動画の中で何度も言及して、わざわざ未発売のCX-80を貶す必要があるのだろうか? ふと10年くらい前のAJAJ騒動を思い出した。VWと裁判になっていたスズキに対して、VWがAJAJに「スズキを貶めるレビュー」を大量に発注したことが明らかになったが、信頼を失ったAJAJはもはやその存在意義を失いつつある。



不審な点

まだトヨタが公式には発表していない段階であるが、動画内の「ひでぽん」さんは、本体価格440万円のアルファード廉価版が追加で投入されることを明言している。トヨタもCX-80を警戒しているようで、アルファード廉価版の情報を、雑誌媒体などに盛んにリークしてはいるようだが、動画内ではズバリ「440万円」とハッキリ言っている。アルファード動画の構成は、トヨタが伝えたい情報がしっかりモンタージュされていて、コンサルの手が入ったかのような出来栄えだ。


マツダ歴42年ともなれば、余人にはわからないMAZDAへの愛憎の籠った想いなどもあるだろう。初代RX7や五代目ファミリアが発売されていた時代からずっとMAZDA一筋だとどんな「クルマ観」が育まれるのだろうか。3世代のRX7は実質的に全世界でスポーツカーというジャンルの頂点を取ったと言ってもいいシリーズになった。そんな黄金時代と比べてしまえば、今のMAZDAは刺激が足りないだろうし、最も不満を持ちやすい世代なのかもしれない。



マツダ歴長過ぎ問題

動画で存分に表現したくらいに、レクサスやアルファードへの想いが本物ならば、今後はトヨタ系ユーチューバーとして更なるご活躍を願いたいと思う。人様の動画を見させてもらって「わざとらしい」とか申し上げるのは気が引けるが、CX-60の一件からMAZDA陣営との間に修復不能な関係が築かれているのでは?と邪推してしまう。MAZDAと仲が良いならば、このタイミングでアルファード絶賛動画は挙げないだろう。


マツダ歴13年で、最初のMAZDA車がGHアテンザ後期の若輩者の感覚だと、MAZDAが作るべき価値があるクルマとは、少なからず足回りがガタガタしているものだ。アルファードを絶賛してMAZDAをイジるのもいいけど、CX-60、GHアテンザ、E90Mスポ(BMW3シリーズ)の3台でどれが一番ガタガタなのか比べる企画で、MAZDAの開発者がやりたかったことを代弁してあげるのが、MAZDA愛に溢れるインフルエンサーってものじゃないだろうか?







2024年3月1日金曜日

「燃費ステマ・パフォーマー」小沢コージさんのカーメディア革命



 

クルマ買いたい!!

「ステマ」と書いてしまうとネガティブなイメージに受け止められるかもしれけど、クルマを買いたい気持ちにさせるステマはどんどんやればいいと思う。「ステルスマーケティング」は、NHKのような公共放送が番組作りにおける独自のガイドラインとして禁止していたりするが、決して日本の法律に反するものではないし、消費者に過保護な日本であっても決して「社会悪」と断罪されるものでもない。小沢コージさんとYouTubeの間で規約の問題があるかも知れないが、私を含めた第三者があれこれ言うことではない。


小沢さんの「kozzi TV」で「トヨタ・アルファードでリッター20km達成」という動画が公開された。ミニバンの動画なんてまず見ることはないけども、気になってついつい最後までチェックしてしまった。最大手トヨタがそれなりの金額でPRしても、アルファードが全く刺さらない人でも、小沢さんの動画を見たら、アルファードは買わないまでも、トヨタのハイブリッド技術はとうとうここまで進化したのか!?と驚くはずだ。よく調べて見ると新型アルファード・ハイブリッドのモード燃費は17.7km/L(WLTCモード)に達している。先代までのハイブリッドが全く不評だったこともあって、トヨタもアルファードの燃費を伸ばすのは難しいと思い込んでいた部分はあると思う。




なんで箱根?

モード燃費が17.7km/Lのクルマを、20km/Lで走らせてしまうのが、プロ燃費ステマパフォーマーの小沢さんの新しいコンテンツになりつつある。高規格道路でもない一般道でこの数字をマークしてしまうからなかなかエゲツない。この動画を見て一気に心が傾いて、アルファードを買った素人が真似してみても、せいぜい実燃費は13km/Lくらいしか出ないことは想像に難くない。あくまで小沢さんの仕事はクルマを買わせることであり、実際に20km/L出して実証しているのだから何の非もない。トヨタが法令を遵守して算出しているとされる「モード燃費」よりも、外部の人が実際に走って測定された実燃費の方が、視聴者は信じやすいと思われる。


ちなみにテレビ神奈川(TVK)で毎週放送されていて、YouTubeでも見ることができる「クルマで行こう」の番組内では毎回のロケでの実燃費を発表するが、モード燃費を大きく下回ることが多い。ロケ地が箱根ターンパイクであり、あれだけの高低差を登っていけば燃費は大きく悪化する。箱根ではなく房総フラワーラインでも走れば、遥かに良好な実燃費を出せるし、実際のユーザーが年に何回箱根に行くだろうか? 個人的に所有するCX-5の2.5LガソリンAWD(モード燃費13.0km/L・WLTC)だと箱根は11km/Lくらいなのに対して、房総だと13.5km/Lくらいは出せる。「クルマで行こう」の実燃費で「8.8km/Lでした」とか言われたら、視聴者のクルマを買う気分を萎えさせてしまうと思うが・・・。



メーカー関係者の熱視線

「クルマで行こう」とは逆に、「kozzi TV」を何気なく見ていて、アルファードで20km/L、レヴォーグレイバックで16km/Lといった実燃費を出されると、「あれ?こんなに燃費良いの?」「これだけ走るなら買おう!!」といった感じで購入まっしぐらのインスピレーションが走る人はそこそこ出てくると思う。現状でトヨタの中型・大型ミニバンや、既存のレヴォーグなどに乗っていて燃費に不満な人は、まだまだ中古車価格が高値水準な状況を考えても、一気に買い替えてしまえ!!という決断の後押しになり得る。勝手な想像に過ぎないけども、大型モデルでは燃費が悪かったトヨタや、水平対抗エンジンの燃費に苦しむSUBARUにとっては、小沢コージさんこそが、今では最も広告宣伝費を払えるメディア・パフォーマーではないだろうか。



「kozzi TV」より多くのチャンネル登録者数をもつAJAJライターは他にも何人もいる。登録者80万人越えの五味康隆さんや、50万人越えの河口まなぶさんが有名だけど、最近の動画の再生数を見ると、登録者4万人足らずの「kozzi TV」が10万再生の動画をコンスタントに出しているのに対して、桁違いの登録者数を有するこの2つのチャンネルでは、10万回再生をなかなか超えられない。2024年に入ってからどうやら本当に小沢コージさんの時代がやってきてしまったのだろうか。視聴者目線でやたら刺さってくる「燃費ステマ動画」は、これからの自動車系YouTubeのキラーコンテンツになるかもしれない。



トークスタイルは様々

「kozzi TV」が好調なのは、決して燃費ステマだけが原動力ではない。動画の構成を比べてみても、五味さんや河口さんのチャンネルと「kozzi TV」では完全に視聴者層が違っていると思われる。毎回の動画で取り扱うクルマもかなり価格帯が違う。「kozzi TV」には1000万円もするような高級輸入車はまず登場しない。将来を夢を見る若い世代は、スーパースポーツを所有する五味さん、河口さんのチャンネルを見て、ハイエンドなカーライフを身近に感じられ、これは仕事のモチベーションになるだろう。一方で高級車にはもう興味なくて、単純に小沢コージさんと渡辺陽一郎さんというクルマ大好きなオッサンの居酒屋トークを聞きたいだけという視聴者が再生回数を押し上げていると予想される。クルマ好きと話すのは楽しい。


小沢さん渡辺さんコンビによる生放送も回を重ねてだいぶ慣れてきたようで、非常にテンポ良く聞きやすくなったし。何より本音が混ざったクルマ好きトークが存分に聞ける。2人ともにヘンに格好つけることもなく、ディーラー担当者との雑談みたいな「ちょうど良い」温度の会話が20〜30分の尺に収まっている。残念ながら若い視聴者にとっては分かりにくいオッサン世代の話になってしまうとは思う。もちろん五味さんのように唯我独尊でクルマの優劣をハッキリと伝えてくれる一人語りが分かりやすい人もいるだろうし、河口さんのように贔屓のブランドのクルマを徹底的にヨイショしてくれて気分が良いという人もいるだろう。



フェルディナント・ヤマグチさんの本!?

「kozzi TV」の動画にはいくつかのパターンがあるのが強みだ。最近目立つのは「燃費ステマ」だけど、前述の「渡辺さんとの対談」に加えて有力なコンテンツになっているのが「メーカー開発者インタビュー」だろう。輸入車がメインコンテンツでやってきた五味さんや河口さんは、国内メーカーの開発者のインタビューは、日本車なんて興味ない視聴者層には合わないと考えているのかも知れない(日本車を下に見るコンテンツはあるけど)。五味さんがSUBARUの開発陣の前で偉そうに振る舞っていた動画は、輸入車ユーザーの日本メーカーに対する偏見を見ているようであまり気持ちのよいものではなかった。


小沢コージさんはかなり前から、開発者インタビューのコンテンツを展開していたが、開発者の方々がリラックスしているのが印象的だ。小沢さんとの心の距離が近く気心が知れた仲に見える。知り合いの開発者を多く出演させていて親密さを演出しているようだ。インタビューに出られる開発者も小沢さん以上に年配の方が多く、若い世代の視聴者にはよくわからない話も多い。フェルディナンド・ヤマグチさんのインタビュー本などが好きな人には、興味が湧かないミニバンなどの開発者の話でも、会社から与えられたミッションを一流のエンジニアがどんあこだわりを持って仕事したかがわかるので楽しい内容だ。




小沢さんは結構儲かっているはず

YouTubeでそんな堅苦しい技術の話なんて聞きたくないという人は、すぐに動画を閉じてしまうだろうけど、チェンネル登録者数よりもはるかに伸びている動画が目立つ「kozzi TV」にはかなりの「中毒患者」がいると思われる。実際の統計はわからないけども、視聴者の知能レベルはかなり高めではないだろうか。グーグルアドセンスは視聴者個人個人のデータを大まかに把握しているので、お金を持っていないしネットでほとんど買い物もしない若い世代の視聴者が多いチェンネル(五味さんと河口さん)よりも、小沢コージさんの方が効率的に広告宣伝費を稼いでいると思われる。


3年前にこのブログで「kozzi TV」を初めてネタにした時は、確か登録者は6000人くらいだったと思う。それが現在では4万人にまで増えた。小沢さんのモチベーションもかなり上がってきたようで、他のAJAJユーチューバーよりも投稿頻度が高い。五味さん、河口さんには失礼だけど両者のチャンネル登録はしていないし、私向けのオススメには出てこない。島下泰久さんの「Ride Now」は登録者6.7万人いるが、動画の再生数は完全に「kozzi TV」の方が上回っている。「Ride Now」は海外試乗も多いのが売りだけど、やはりメルセデスやBMWに興味ある人が少なくなったのかな・・・。



アルファード動画のタイミングが謎

もしどっかのメーカーに依頼されて「燃費ステマ」をやれと言われたら、とりあえず山梨県の富士スバルラインにクルマを持って行って、全コース20kmの距離を山下りすれば、トヨタ・ランドクルーザーであっても20km/Lどころか、200km/Lくらいは余裕で出せると思う。そんなチートしか素人には思いつかない。小沢コージさんの「燃費ステマ動画」にも何か特別な仕掛けがあるのでは?と勘繰ってしまう。これまでの動画を見る限りは、特段に燃費スペシャル用コースで走っている様子はない。さらに交通量が少なくてスムーズに進める夜間帯に撮影することもなく、毎回のように対向車もガンガンやってくる都市部の40km道路みたいなところで日中に堂々と撮影をしている。



あからさまなステマをやってしまったら簡単に視聴者に疑われてしまう。プロの小沢さんは徹底的にリアルなシチュエーションを演出しているので、全くと言っていいほど違和感はない。しかし2024年2月になって、夏頃に撮影したアルファードの燃費動画を出してきたタイミングは不思議だ。夏頃はアルファードが絶好調だったので、一旦はお蔵入りとし、トヨタから何らかのアプローチがあった時に「真夏の20km/L動画ありますけど、出しましょうか?」みたいな交渉をやっていたら面白い。3年前は冗談半分で「kozzi TVが天下を獲る」とか書いたけど、いよいよ本当に実現してしまいそうだ。










2024年2月10日土曜日

島下泰久さんに烙印を押された現行モデル

 

2024年版 間違いだらけのクルマ選び



面白くなっている

毎年暮れに発売される「間違いだらけのクルマ選び」の2024年版を、なんとなく惰性で買ってしまう。クルマ初心者にもわかりやすい内容で、1台当たりの紙面も限られていてあまり突っ込んだ内容ではないので、失礼だけど夢中になって読むような本ではない。それでも買ってしまうのは、2016年から前任者を引き継いでこのシリーズを切り盛りする島下泰久さんが必死で続けている姿が微笑ましくて応援したいのと、自分とは意見がかなり違うタイプのライターだからこそちょっと読んでみたいと思えるところだ。


読者離れや出版不況によってこのシリーズの販売低迷が囁かれていたが、紆余曲折の末に、2021年版からはメーカーの開発担当者のインタビューが掲載されるようになり、コンテンツもかなり充実してきた。記念すべき最初の2021年版に登場したメーカー担当者は、レクサス・インターナショナル・プレジデントを務めていた佐藤恒治さんで、ご存じの通りの豊田章男社長を引き継いだ現在のトヨタ自動車の社長である。1回目の人選からして大当たりと言っていいかもしれない。



インタビューが増強され読み応えアップ

2022年版はホンダの特集が組まれ岡部宏ニ郎さんが登場し、2023年版はMAZDAの巻頭特集で廣瀬一郎さんが登場した。島下さんが「RIDE NOW」というユーチューブチャンネルを地道に運営し、単なるAJAJライターではなく、発信力・影響力をもつ自動車インフルエンサーとしてメーカー側に認知された結果だろうか。あるいは自動車メーカーがセルフメディアを運営する時代に変わり、しがらみがたくさんある大手メディアや大手出版社からの出版ではなく、このシリーズが一番発行部数が多いというちょっとマイナーな出版社(草思社)の発行なので、メーカー側も与し易いのかもしれない。


2024年版にはどこのメーカーの人が出てくるか?と思っていたが、今回はまさかの3人登場で、巻頭特集が本編の半分を占める巨大コンテンツになっています。しかも1人はあのダイハツの記者会見でメディアの前に登壇したあの人だ。島下さんは引きが強い!!佐藤さんに続いてまたしてもピンポイントな人を引き当てている。ダイハツ不正の会見ではメディアの若手記者を低い声で恫喝するような答弁が印象的な強面な人だったけど、この本のインタビューでは「カッコいいクルマがすっごく好きなんです」みたいな、なかなかチャラいことを仰っている・・・。



勝手な解釈

この「間違いだらけのクルマ選び」の巻末には面白いものが付いている。毎年本編を見る前にこれを読んでしまう。それは本書に掲載されている市販モデルを採点した総合の「通知表」がある。島下さんの主観による評価なので特段に文句を言うつもりはないが、読者が見て受ける印象を考えるに、総合評価の得点が10段階で「5」以下という低い評価は、実質的には「死刑判決」を意味する。これを読んだ人は誰も買わないだろう。そして「7」以下のクルマに関しても読者には全く良い印象は与えられないから、「引退勧告」くらいの意図があると思われる。


2024年版で「死刑判決」が出たモデルは4台だった。1台目は「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」で評価は「4」である。生産が中断されているけども日本市場屈指のベストセラーモデルだけども、売れ過ぎて市場を捻じ曲げるクルマにはあまり良い印象がないのかもしれない。肝心の本編を読んでみると、2023年5月にロッキーとライズのHEV(ダイハツ版e-POWER)が販売停止になり、エンジン版のみ出荷されていたが、年末になってこちらも巻き込まれた。本編の加筆は間に合っておりません。真面目なAJAJライターとしては、とりあえず「オススメできない」という納得の意見。



日産だって困っているのでは?

2台目は「日産・リーフ」で評価は「3」だ。バッテリーの原材料価格が大幅に高騰していて、相次ぐ価格改定で全然お手軽なクルマでなくなったので、当然これもオススメできない。ロングレンジモデル「プラスe」(航続距離550km)は、上級BEVのアリアのベースモデル「B6」(後続距離470km)と同じくらい(538万円〜)に設定されている。アリアのロングレンジ「B9」は公式ホームページから削除されており受注停止のようだ。


日産としては2028年に全固体電池搭載の1000km航続のBEVを販売するそうなので、残り4年くらいはこのまま「死んだフリ」のBEV戦略を続ける気がする。全固体電池はコスト面に課題があって2000万円くらいするスーパースポーツにしか使えないとかいう報道もあるので、GT-Rの後継モデルなのかもしれない。他にも優れた電池が開発されて、アリアやリーフの不自由な現状は改善されると思われる。



「デスノート」

3台目は「レクサスES」で評価は「5」だ。レクサスのグローバルでの稼ぎ頭のモデルに対して、本編でも痛烈な言葉が並ぶ。確かに日本でもほとんど見かけない気がする。レクサスLSをアメリカ人が好む合理的な設計でカムリベースで仕立てたモデルで、北米ではメルセデスEクラスやBMW5シリーズと同等の価格でかなり良く売れた。それならば日本でも売れるだろうと、レクサスGSを置き換えた訳だけど、GSの方がまだまだ良く見かける。そう言えば島下さんのお気に入りでもあったな。


レクサスESはまだ日本撤退はしないようだけど、カムリやMAZDA6などの同じような仕立てのセダンは次々と日本市場から消えていった。ちなみにMAZDA6は「間違いだらけのクルマ選び」2020年版で総合評価「7」となり「引退勧告」されており、2021年版からは通知表から除外された。カムリは2021年版で評価「7」を受け、2022年版から除外されている。恐るべき島下さんの「デスノート」である。



メーカーの意図を深読みすれば・・・

4台目は「トヨタ・シエンタ」で評価は「5」。2022年版までは個性的なスタイリングが光る先代モデルだったため、モデル末期にも関わらず島下さんは「8」をつけて絶賛していた。5ナンバー3列シートミニバンならば最強の1台だと断言していた。それが2023年版から現行モデルに変わり、5ナンバーミニバンとしての機能性や予想以上に良い走行性能こそ評価していたが、お気に入りだったデザインが某フランスメーカーの有名な商用車にソックリになってしまいボロクソ評価の「6」を下していた。


ノアやヴォクシーも大幅値上げで乗り出しが400万円台後半というご時世で、まだまだ乗り出し250〜300万円で済むシエンタは、親孝行な子育て世代にとっては代えの効かない存在になった。少々癖があるアバンギャルド(ちょっと幼稚?)なデザインより、長年親しまれているスタイルを拝借しようってトヨタも考えただろうけど、島下さんの評価は2024年版でも厳しいままでいよいよ「死刑宣告」となった。2025年版には生き残っているだろうか?



どんどん現行モデルは消されている

2024年版での「死刑判決」は以上の4台だけだが、現行市販モデルの中には既に過去の年度版で「死刑判決」されて、2024年版の通知表からは外されてしまっているモデルも複数ある。もしかしたらメーカーから苦情がきて「当該モデルに関しては今後は掲載しないでください」との要求を呑まされている可能性もある。2022年に比較的に本シリーズで高評価が多いMAZDAのCX-3が「5」の評価を受け2023年、2024年は姿を消している。


2022年に「5」の評価を受け、さらに2023年には「4」と評価されダメ押しされたのがトヨタ・ルーミー/ダイハツ・トールだ。トヨタ系ディーラーが日本中の高齢者ユーザーを一件一件回ってゴリゴリに売ってきたダイハツ生産モデルだ。使い勝手が良さそうなのでついつい買ってしまう人も多いようだけど、実家に営業がかかった時に相談され、この島下さんの本の評価があまりにも低いので慌てて他のモデルに変えさせた。賞味期限切れのクルマに関してはかなり的確に教えてくれるシリーズだと思う。


2024年版 間違いだらけのクルマ選び
















2024年2月8日木曜日

水野和敏さん「軽自動車(スーパーハイトワゴン)は危険過ぎる」

 


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー) 


名物連載のまとめ本

元・日産の開発者で有名な水野和敏さんのベストカー連載まとめが、全編カラーの豪華な装丁で単行本として発売された。自動車雑誌の売上No.1を自称する天下のベストカーであっても、この人気連載にもしものことがあったら、いよいよ雑誌媒体での販売が終了してしまうかもしれない。大きな変化があったらこの媒体で活躍する多くのAJAJライター、国沢光宏さん、松田秀士さん、清水草一さん、清水和夫さん、渡辺陽一郎さんなどの活躍できる場所が失われてしまう可能性が高い。水野さんの人気コンテンツはカーメディア全体を支える立場にある。


記念すべき「水野和敏が斬る!!」単行本は、月2回発売のベストカーを全く読まなくなった私にとってはとても新鮮な内容だ。毎回のように「クルマのことがまるでわかっていない」全メーカーの開発者や日本中のクルマ好きの読者に対して、完全に上から目線でドヤれるだけの実績と自信があるから、それだけでエンターティメントとして成立しているし、このような単行本を出せばさぞかし売れることだろう。若い読者にとっても世代が全く違う「カーキチおじさん」の異次元なクルマ観に触れられるとても貴重な本だと思う。



軽自動車の衝突基準

「ホンダN-BOXとスズキ・スペーシア」の比較レビューが収録されている。軽自動車の企画ではクルマ好きに読んでもらえないことを危惧したのか、冒頭から「炎上」しそうな過激な軽自動車批判が続いていく。今回のダイハツの一件が報道された後でこのレビューを読んだこともあって、とても衝撃的で興味深い内容であった。軽自動車ユーザーと軽自動車の生産&販売に従事しているメーカー関係者がこれを読んだらさぞかし憤慨するだろうけど、「良薬口に苦し」とばかりに完全無欠な正義感で放言の限りを尽くしている。まるでどっかの国の次期大統領候補みたいだ。これでカルト的人気はもっともっと高まるだろう。


AJAJ会員のライターには絶対に書けないタブー満載のレビューである。N-BOXやスペーシアなど世界でも類例がない異形の「スーパーハイトワゴン」型は今では完全に軽自動車販売の主流になっている。エンジンパワーに比べて車重があり、重心も高くて安定しない。さらに軽自動車で規定されている衝突安全基準の数値は驚くべき低さだそうだ。ネタバレだけど、法令で定められた安全基準が前面と側面はフルラップで58km/h衝突までとなっていて、後面も同じくフルラップで38km/h衝突までらしい。この最低限の基準を守ることさえダイハツは長年ズルをしていたため先日謝罪をしているのだが、そもそもこんな基準に意味なんてあるのだろうか!?



ユーザーはわかってる

フルラップで58km/hということは自車と対向車がそれぞれ30km/h程度でも限界に達しているということだ。これオフセット衝突だったらどうなるんだろうか!?最高速が120km/hまで引き上げられている高速道路に軽自動車の乗り入れは法的に規制されているわけではない。この安全基準を見たら誰も怖くて走れないかもしれない。実際のところ水野さんが憂慮するほどには、東名、中央、関越、東北、東関東、第三京浜、圏央などの近隣の高速道路で、子どもを乗せたN-BOXなどはほとんど見かけない。一応は軽自動車で高速を走るのは非常識だと認知されている。


高速道路だけでなく、日本中に次々と60km/h(場合によっては70km/h)制限の高規格道路が新設されている。八王子バイパス、日野バイパス、入間バイパス、新青梅街道、東八道路、新滝山街道、武蔵境通りといった東京都中央部の無料の高規格道路を利用しているが、日中時間帯は混雑が酷くて流れる車速はそこまで高くはない。本来の道路の実力を発揮する深夜時間帯だと、N-BOXが走っているのは滅多に見かけない。スーパーハイトワゴンの運用は、辺境への通勤、鉄道駅へのアクセス、スーパーマーケット・モール・コンビニへの買い物が圧倒的に多いように思う。




特段に問題があるとは思えない

秋田県の産業道路(秋田港〜男鹿市)を爆走する高齢者(女性)運転の軽自動車を見かけて驚いたことはある。しかし地方の幹線道路を長時間ドライブすることが多いが、東京とはまるで違っていて近づきたくないような異常な走りをするクルマはほとんど見かけないし、毎回のように平和なドライブをいつも楽しませてもらっている。地方には軽自動車が多いのは事実だけども、体感する限りではスーパーハイトワゴンがどうのこうのと騒ぐのはなんか違う気がする。「誰でも安全に300km/hで走れるクルマ」というコンセプトの方がよっぽど頭おかしいと思う。


水野さんに限らず、他のAJAJライターも異口同音に「軽自動車規格は不公平である」みたいなことしばしば言っている。渡辺陽一郎さんも軽自動車はそれほど燃費もよくないし安全でもないけど、税金が安いというだけでメーカーもユーザーも吸い寄せられてしまっている・・・と警鐘を鳴らしていた。政府としても税金の取りっぱぐれは解消したいだろうから、今後どっかのタイミングで軽自動車規格が廃止されることがあるのかもしれないが、そんな議論について報道されることはまずないし、50年以上に渡って放置されている現状がそのまま続いていくような気がする。



なぜ廃止にならないのか?

財務省と国土交通省に跨るクルマへの課税は縦割り行政であり、しかも直接的に不公平になっている自動車税は地方税であるため、消費税、所得税、復興税などの国税ほどとは違って、増税大好き財務省も関心が無いようだ。逆に自民党派閥の裏金原資となる企業献金を使って、国土交通省を動かしてエコカー減税だったり、エコカー補助金、高齢者補助金などを引き出しているくらいだから、軽自動車の存廃の主導権もメーカー側にあるのかもしれない。主要自動車メーカーで組織される自工会から自民党へ7800万円(2022年度)の献金が明らかになっている。


ちょっとネタバレを承知で水野さんの主張を書くと、軽自動車規格は高速道路網などまだ存在しなかった60年代のまだまだ貧しい日本の世相を受けて作られたものであり、国民もかなり豊かになった現在には合わない制度ではないか!?と「メーカーの開発者の立場」で仰っている。法制度が社会の実情と合わなくなってきた・・・日本では良く聞く話である。さっさと変えればいいことなのに、ずっと放置され続けるには何か理由があるはずで、軽自動車規格に関しては日本の自動車メーカーが一貫して支持していると思われる理由がいくつかある。



メーカーと企業献金

軽自動車を作っていないスバル、MAZDAであっても、日本各地の系列ディーラー網を維持するためにはOEMの軽自動車を売るしか生き残る道はない。軽自動車を完全に無視して営業できるのはトヨタ系列ディーラーくらいだけど、ダイハツを完全子会社としているトヨタは軽自動車の廃止を切り出すわけにはいかない。確かに法制度そのものを作るのは政府だけども、近年はそのスピード感ある政策のほとんどが、例えば日本医師会の献金によるコロナでの利益誘導だったり、政府の政策を評価して企業へ献金を呼びかけることが主な仕事の経団連によって法人税引き下げが実施されている。


軽自動車を新車でまともに買ったら200万円を超える。決して安くはないけども、軽自動車という慎ましい立ち位置は日本のユーザーの気質に上手く合致していて、「浪費」意識を芽生えさせないようになっている。今も昔も日本人は不必要に派手な出費を嫌う。まだレクサスLSが400万円台で販売されていた慎ましい時代だった2007年頃に、某日本メーカーが777万円でライン生産の量販車を売り出した。初代NSXのようなアルミ精錬工場まで用意した手作りの特別なモデルであれば高額なのもわかるが、ライン生産の量販車に700万円越えは、色々な意味で日本車の常識を変えた瞬間だったと思う。



軽自動車が増えた理由は・・・

35GT-Rが発売されてから日本メーカーの新型車開発とターゲットとなる顧客層が大きく変わっていった。普通車の価格は堰を切ったようにどんどん上昇し、2007年からの10年インフレ率は50%かそれ以上の水準だと思われる。トヨタのカローラやヤリスなどは比較的に価格が抑えられているが、他のメーカーは真似できないので、結果的に普通車販売はトヨタ系に集中するようになった。当然に自動車難民が増えた結果、同じ10年間で軽自動車の販売割合も2倍近く増えている。今の社会の実情に合わない軽自動車規格なはずなのに、近年になって割合が増えているのは実に不思議だ。別に水野さんに全ての責任があるとは言ってないが・・・。



クルマ好きな一般人が軽自動車不要論を述べたら「軽自動車に文句言うな!!野菜や果物も軽トラで運んでいる!!」「AMAZONを運んでいるのは軽貨物!!」みたいな反論が返ってくる。水野さんのような一流の業界人でないと安易には発言できない。もちろん水野さんはこのレビューにおいて軽自動車の商用と乗用の区分にもしっかり言及しているし、どっかの知ったかぶりなインフルエンサーとは意見の質はまるで違うのだけども・・・どれでも「どの口が言ってんだ!!」とちょっと言いたくなってしまった。


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー)




















2023年11月27日月曜日

福野礼一郎さん「全方位戦略」で名門ブランドを無差別襲撃

 

トヨタ完全無視!!


今年も「福野礼一郎のクルマ評論」の季節がやってきた。毎月律儀に「モーターファンイラストレーティッド」を読んでいれば、その連載の総集編に過ぎないのだけど、その雑誌がAmazonのサブスクから外れてしまったこともあって、今年は収録されるレビューの全てが初見だったので夢中で最後まで読み切ってしまった。いやそれだけではない、福野さんのレビューに新たな魅力が加わってきた。


この連載では母体雑誌の編集長を務める萬沢龍太さんが相方を務めていて、昨年発売の「クルマ評論7」から巻末に「編集人・萬沢龍太」とクレジットされている。「6」までは別の人が務めていた。母体雑誌の編集長の名前が入る仕組みなのかもしれない。数年前に萬沢さんがめでたく編集長になりました!!・・・とこの連載で書かれていた気がする。



10年で大きく変わった


編集本「クルマ評論」は2014年にスタートしているのだけど、ちょうど個人的に自動車ブログを書き始めた頃であり、怒涛のように繰り出される情報&洞察の連続攻撃に、かなり感銘を受けた覚えがある。このブログでもいろいろとネタにさせてもらった。好きなクルマやメーカーなどの主義主張に基づくツッコミどころはたくさんあるのだけど、自動車評論はトップレベルのライターのレビューとはここまで面白いのか!!と驚愕し、以後は福野さんの出版物は片っ端から買い漁るようになっている。


あれから10年ほどが経過するが、読み手の私の感覚もいくらか麻痺してきたせいもあるのだけど、福野さんのレビューから毒っぽいものがどんどん無くなっているように思う。クルマを取り巻く状況が変わり、評論家とメーカーの意見はどんどん乖離するようになった。評論に値するクルマがほとんど発売されなくなったエコカー全盛の現状では、あれだけ面白かったレビューにも全体にどこか厭世な雰囲気が漂ってくるのも仕方ない。読み手の意識の変化もあるだろうが。


「昔のクルマは良かった・・・」


若い読者からは「懐古主義」としか思われかねない今時のクルマへの批判は、多様化する意見の中ではその内容に関わらず「稚拙」と受け止められていまう。世界のトヨタ(レクサス)でさえも「良いクルマ」のアイコンとして「V8自然吸気」しか手段を持たなかったりする破滅的な状況だから、「昔は良かった」はあながち間違いではない。MAZDAロードスターとケータハム・セブンくらいしか「持続可能な趣味スポーツカー」として世界で支持されるものはないというやや過激な福野さんの主張もまあその通りなんだけども、日本のカーライフにはちょっと馴染まない。


2014年と比べてクルマの選択肢はかなり狭まっている。当時と同じような放胆なレビューにはやはり無理がある。福野さんがレビューを書くクルマにはもはやライバル車も満足に存在しない。2014年の福野レビューでは、レクサスとBMWやメルセデスなど、同格のライバル車を比較評価する軸が強かった。福野さんの場合は、その他大勢の評論家とは着眼点や洞察力が全く違うので人気があり、今でも単行本が「持続可能」になっている。そんな「王道」の手法も発売されるクルマが極端に少なくなってきた今では、福野さんのレビューからあまり見られなくなってきている。例えば日産e-POWERのクルマを何と比較すればいいのか!?



イメージ崩壊


適当な比較対象がなくなる中で、「相対評価」から「絶対評価」へと福野レビューの比重が切り替わりつつある。これにより福野さんのイメージも変容しつつある。「容赦ないライター」の仮面が剥がれ落ち、レビュー対象となったクルマの開発者の心情を慮った「人情味に涙するライター」の顔が出てきてしまう。福野さんの奇想天外&逆張りで権威を張り倒すような「勧善懲悪」レビューを楽しみにしてたのに、「作り手への思いやり溢れる」ことで有名な牧野茂雄さんのレビューを読んでいる気分になってしまう。


「牧野さん風味」の福野レビューはそれはそれで読む価値が十分にあるのだけど、牧野さんのレビューは徹底して「専門家向け」「マニア向け」なので、「クルマの格好良さ」みたいな尺度を重視する読者には合わない。対照的に数値化できない格好良さやロマンを存分に語る福野レビューが本来持っていた「ポップさ」や「発信力」が変化によって失われるのはちょっと残念だ。全くの初心者の私でも無理なく楽しく読めた10年前のあの「最強福野レビュー」は、クルマ趣味を日本社会に広げるためには欠かせないものだと思う。また「全人類ほぼ敗北」とかやって欲しい。



どっちが書いてるのか!?


福野さんも自身のレビューの変化は自覚しているだろうし、あるいは意図的に仕掛けているのかもしれない。新しい手法を生み出したものだけが生き残れる世界ではあるだろうし。このまま牧野テイストになってしまっては「単行本」を出せなくなってしまうかもしれない。日本で単行本を出し続けるライターはごくわずかだけど存在する。島下泰久さん、沢村慎太朗さん、そして今年から始まった水野和敏さんくらいか・・・やはり福野さんにはまだまだ頑張って足掻いてもらう必要がありそうだ。


ライバル車不在で「比較」ができないから、メカ&開発者の深掘りにシフトしたけど、前述のようにちょっと切り口がマニア過ぎる。そこで新たに生み出されたのが萬沢さんを共同執筆者に巻き込む手法のようだ。10年前と比べて萬沢さんが頻繁に登場するようになりレビューの核心を突くようなことを萬沢さんに「言わせる」あるいは、過激な意見に萬沢さんの同意があることを付け加える・・・そんなケースがやたらと目に付く。萬沢さんの同意があるなら納得できると無意識に読者に受け入れさせる効果は確実にある。蔓沢さんも相当なクルママニアだろうけど、なぜか一般人ぽい語り口で書かれるので読者は受け入れやすい。うまく「ポップさ」のバランスを取っている。



福野レビュー復活作戦


萬沢さんとの共同レビューももちろん面白いけど、かつての福野さんのような全てのメーカーやそのクルマのユーザーを敵に回すリスクを顧みずに権威に噛みつきハッキリと断言するスタイルのレビューも読みたい気がする。「まあこんなもんだよね」というレビューより、「このクルマこそが神だ!!」と熱烈に語るレビューの方が熱いものが込み上げてくる。どうやら私と同じようなことを考えてた自動車メーカーがあったようだ。福野さんに再び「比較レビュー」を大いにやって欲しい一心だろうか、比較ありきの大掛かりな新型車を作ってきた。某日本メーカーが発売した直列6気筒FRシャシーSUVの「あれ」である。


さあ福野さんよ!!10年前の切れ味鋭いメッタ切りレビューを見せてくれ!!どんな意見でも我々は受け入れるぞ!!とそのメーカーは大きく構えていたはずだが、あれれれれれ・・・・!? どうしたの!?調子出ないの!?リハビリが必要か!?と心配になってしまう腰砕け感があった。新刊まもない本なのでネタバレは極力避けたいですが、福野節の復活を期待して注目を浴びたはずのレビューが、なんでそんな展開になっちまうのか!!と驚愕した読者も多かったんじゃないだろうか。



福野レビューの「腰砕け」


まあ去年の日本COTYではこのクルマを完全無視された。そんな権力に忖度するカーメディアへの反動もあってか、日本でも予想を上回る好調な売り上げを記録した。500万円もするスポーツカーでもない日本車がデビューとともにこんなに簡単に売れまくった(月1000台以上)、30年以上前のトヨタ・セルシオ以来じゃないか!?当時はバブルの絶頂だけど、これを令和の岸田政権下で実現したのは偉業・神業と言っていい。120万円の補助金ありきのアウトランダーPHEVとは全く意味が違う。


カーメディアのフルバッシングをものともせず、日本市場のクルマ好きが次々と契約した。そしてその走りの良さをカーメディア上で最も高く評価したのが・・・まさかの萬沢さんだった。福野さんが鬼の首を獲ったように大絶賛する段取りだったのかもしれないが、萬沢さんが興奮し過ぎで本人は完全にシラけてしまったらしい。本当の話かどうかはわからない。完全に「脚本」の可能性もあるが、それならばこれは来年の「クルマ評論9」にて再レビューが収録されるフリだと思われる。大いに期待したい。



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