一般メディアが伝える「日本メーカー連合策」

  日本の自動車大手8社が合同でエンジンの基礎研究を行うことが発表されました。なかなか大胆でインパクトがある決定で、思わず「おお〜」と記事を一気に読んでみました。ちょっと軋轢があると思っていたトヨタ・日産・ホンダの3者が中心となってマツダ・スバル・三菱・ダイハツ・スズキの計8社。この中に幾つの対立構図があるんだろう? ひと昔前ならば、骨っぽい日産やホンダのエンジニアにとって「トヨタと同じエンジン」なんてやってられるか!といったところだったと思いますが・・・。

  それと同時にこの「出来事」が示しているのは、エンジン開発がどれだけ自動車メーカーにとって不利益が多いかという事実でしょうか。化石燃料を燃やして動かすエンジンの熱効率は最適化された状況で40%に達するかどうかという水準で、これは過給器(ターボなど)を使っても全く改善されません。日本車で現在主流になっているのが、自動的に熱効率の良い回転数に合わせる「CVT」を組み合わせたユニットで、これはスバルを皮切りに日本メーカーがエンジン開発よりも燃費改善効果が大きいとして、血眼になって開発した技術です。(CVTが効果的なのは、あくまで日本のようなストップ&ゴーの地域だけですけど)

  日本メーカーに限った話ではなく、EVや燃料電池車(FCV)の普及が始まろうとしている中で、従来のガソリンエンジンにさらなる大きな投資は難しくなってきているという事情もあるようです。それでも今後、大きく需要が伸びると見られる新興国向けのエンジン開発を進める必要があります。

  そしてさらに世界の自動車メーカーを苦しめているのが、世界各国の執拗なまでの自動車行政です。あらゆる産業のなかでも収益性の高い自動車産業にはカネの匂いを嗅ぎ付けたハイエナが常に寄り添っています。彼らは「排出ガス基準」という尤もらしい「言い掛かり」を付けて自動車メーカーを強請ります。ビジネスを継続したい自動車メーカーは「立法」する側の意向を伺ったり、根回しができる体制を作ろうというマインドが働き、伝奏役として「OB」を高給で迎え入れるという仕組みです。

  もちろん自動車メーカーが倒産してしまったら元も子もないので、時には「エコカー減税」というわけのわからない政策が突如として行われたりします。クルマを買わない人だけが損をして、メルセデスやBMWを買う金持ちが優遇されるなんてどう考えてもメチャクチャなんですけど、多くの人はまさか輸入車の多くがエコカー減税対象になっているなんて知りません。

  ちょっと話が逸れましたが、「排出ガス基準」というのはさらなる高効率のエンジンを作るにあたってはかなりのハードルになるようです。日本で発売されるようになったマツダのディーゼルは、実は日本の基準をクリアするためにNOxが出ないよう燃焼温度が低くなるように設計されています。よって本来のディーゼルの燃費の良さは十分に出せていなかったりします。つまり「排出ガス基準」により排ガス処理能力を相当レベルにまで向上させない限り量産エンジンの改良が難しくなっています。

  「8社合同」を報じていた一般メディアの記事には、「ダウンサイジングターボで先行する欧州メーカーを追うため」と追記してありましたが、その先行しているはずの欧州車は、排出基準がクリアできずに、2020年までに現状のままでは、日本での販売が出来なくなる見通しです。確かに新興国では今後もガソリンエンジンが主流になると予想されていますが、それがターボによるハイパワーを選ぶか、NAエンジンでの軽量化を選ぶかはまだ不明です。そして日本などの先進国では、日本メーカーがターボで追従するのではなく、欧州メーカーがHVやEVで日本メーカーを追従することになるのは確実と思われます。まあ一般メディアの報道なんでこんなものですけど・・・。



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