2026年3月19日木曜日

五味康隆さん&マリオ高野さん 「CX-3の熟成は素晴らしいが・・・」

 

評価軸の難しさ

発売から12年目に突入し、とうとう終焉の時を迎えたCX-3だけど、5年ほど前に「E-CAR LIFE」で後期型CX-3の試乗レビューが出ている。「可もなく不可もなく」ではあるが「今の状況を考えたら魅力的なパッケージになっている」みたいな定型文レビューが多いユーチューブ・チャンネルで、その評価が丁度良いのがCX-3なので、観る前から「落とし所」がなんとなく予想できる。


Bセグ実用車(SUV)の域は出ないのだけど、手頃な価格設定であっても「MAZDAの美学」を存分に感じられることが素晴らしい。ヤリスクロスやWR-Vが徹底的に割り切っている部分 である、内装、外装、静音、エンジン、シート、ペダル、着座位置、トランスミッション、サスペンション(特にリア)に、MAZDAのこだわりやクオリティがしっかり感じ取れる。これだけ作り込めば、クルマ好きなら誰でもその意図はわかる。



批判しづらい!?

人気レビュアーとしては、熱烈な視聴者が多いMAZDAファンを敵に回すのが怖いかもしれないが、五味康隆さんもマリオ高野さんもMAZDA車のレビューにはしばしば「手加減」を感じる。かなりのボリュームの「こだわり」を全てのモデルに投入しているから、安易には批判できない。同じようなポリシーを前面に出すメルセデスやBMWの方がまだツッコミ所が明確かもしれない。


MAZDAもメルセデスやBMWのように、縦置きエンジン、直列6気筒など機能面での差別化である程度は客層が分断できてしまうクルマが増えてきた。初代プリメーラで玄人好みのこだわり設計を手掛けた開発者が、小学生でも凄さがわかるR35GT-Rを作るようになった結果、名車揃いだった日産の実用車がFMCの度に輝きを失っていった。「こだわりはわかるけど、感動は薄くなった・・・」くらいのことを発信力がある人に言って欲しい。



変わるビジネスモデル

私自身がMAZDAに乗り始めて10年以上になった。最初の出会いは衝撃的だった。トヨタからMAZDAという最大級の乗り味のギャップを伴う乗り換えだった。総合自動車メーカーは他にもたくさんあるけど、スバル、ホンダ、日産、BMW、VW、アウディ、メルセデスなどは、すべてトヨタとMAZDAの間のどこかの地点に存在する。MAZDAの乗り味に慣れてしまったら、わざわざ高級な輸入車に乗りたいとは思わなくなった。


CX-3もMAZDA2も、他にどうしても欲しいクルマが出てこない限りは、長い期間を飽きずに乗り続けることができる。どちらも200万円アンダーの価格で長期間販売してきた。せっかくの顧客リストも、乗り出し200万円ほどで10年以上乗り続けられてしまったら、MAZDAにとっては苦しい。乗り味を求めるMAZDAユーザーの判断基準だと、上位モデルのはずのCX-60、CX-5が、CX-3やMAZDA2の楽しさに負けてしまう。



保守本流

2000年頃から欧州市場ではスポーツカー以外の乗用車においてもMAZDAの存在感は高まった。否定する人もいるかもしれないけど、今ではMAZDA、BMW、アルファロメオが「駆け抜ける御三家」である。派手なライフスタイル向けのメルセデス、レクサス、ランドローバーの「セレブ御三家」とは違い、寡黙にドライブを楽しむクルマ好きに支持される。MAZDAは販売台数こそBMWに負けるけども、北米、豪州などの環太平洋地域でも人気が高まっている。


「駆け抜ける」に相応しい日本メーカーは、長らくホンダだったけど、2000年以降のCVT全面刷新、軽自動車への注力によって、「ピープルムーバーのBMW」と評されるかつての栄光のイメージは失われつつある。ホンダとMAZDAそしてBMW、アルファロメオ、ジャガーなどが、スポーツカー総合ブランドの代表格だが、BEVシフトの中でMAZDAが「保守的」な姿勢のまま販売を拡大したことで、MAZDAへの期待は非常に高いものになっている。



次世代の姿

五味さんもマリオさんも、大きな変革期を迎える自動車業界において、コンサバにドライビングマシンを志向するMAZDAが視聴者(クルマ好き)の熱い支持を得ている現実を踏まえて、MAZDA車のレビューでは特に慎重に言葉を選んでいる。確かにクルマを「モビリティ」と呼び始めた他社との比較では支持されているが、MAZDAに求める次世代マシンの方向性には十人十色の意見が乱れ飛んで紛糾していて、知見あるレビュアーの意見を期待して観ている。


「MAZDA6の後継となるFR直6サルーン」「RX7後継のロータリー・GTスポーツ」「MAZDA3の商品力アップ(デザイン・エンジン)」「MAZDA2、ロードスターの維持」のバラバラの4つの声が、CX-60、CX-5といった実用性モデルへ軸足を移すMAZDAへの批判になることもある。世界中のコンサバな期待を背負うようになったMAZDAにとって、10年以上前に仕立てたCX-3への2026年時点での評価は難しいのは、五味さん、マリオさんの口ぶりからも伺える。



闇の中

2000年代にフォード陣営の一員としてVWゴルフやBMW3erへの対抗モデルを作っていた時代は、ユーザーにとってもMAZDAの意図はわかりやすかった。10年くらい前から新型モデルがことごとくWCOTYで高評価されるようになった。ライバル不在で世界のクルマ作りをリードする存在となる中で、かつては雄弁にクルマの価値を語っていたMAZDAの開発者の口から具体的なビジョンが語られることは少なくなった気がする。


CX-3とMAZDA2は、北米では販売されない欧州市場向け戦略車で、CX-60などのラージ商品群登場以降は北米をターゲットにするMAZDAにとっては、次期モデルの開発予算が増やせない状況だ。2台とも120万円ほどだった先代デミオがベースだが、今では250〜300万円の乗り出しで安定して売れている。Bセグながらも「プレミアム」を打ち出す成果を挙げた2台だけども、2026年で廃止という結果になってしまったようだ。レクサスLBXやアルファロメオ・ジュニアが出てきてCX-3の価値が高まりそうだったが・・・。



振り幅の大きさ

LBXには「3気筒のレクサス」、ジュニアには「アルファロメオではない乗り味」といった批判もある。しかしそのスタート地点はある意味で新鮮だ。MAZDA2も2014年にディーゼルに乗って絶望した。CX-3も初期モデルは「Bセグなら仕方ない」程度の印象だった。しかし今では2025年式のMAZDA2のドライブを日々楽しんでいる。五味さんもマリオさんも「MAZDAの熟成力」に言及している。完成してしまい手を加える余地が無くなったCX-3、MAZDA2の販売を引っ張っても仕事が無くなってしまうのだろう。


NDロードスターも、二代目CX-5も、前期から後期への乗り換えがかなり多いらしい。MAZDA2、CX-3も前期から後期への乗り換えが一巡したところだろうか。2027年にはBセグの後継モデルが発売されるという報道が出ていた。もし他社の3気筒OEMだったら、MAZDAの感動レベルの熟成力を、乗り味がダイナミックに変わるBセグで味わえなくなってしまう。これこそがブランドの自殺行為ではなかろうか。




後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年3月19日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。



<日本語版>MINI 60YEARS~ミニの60年~










2026年2月4日水曜日

福野礼一郎さん 「ゴルフとは思えぬ駄作(2021年レビュー)」の予言

 

クルマを買う前にレビューを読むべきか!?

物価高だから消費税を減税しよう!!という意見で与野党が一致している。肝心なことは来年にはクルマの価格も10%下がるのか?それとも食品だけなのか?ということ。「クルマに関わる減税を推進する党」みたいなわかりやすい政党はタブーか。名前を挙げて失礼だが、豊田章男会長の他に、保守系論客の岡崎五朗さん、池田直渡さんや、カーメディア界隈でカルト的な人気のウナ丼さん、藤島知子さん、国沢光宏さんなどが集結して議員を送り込み、クルマ好きが抱える国土交通省への不満をぶちまけて欲しい。


休日に外出すると、東京都多摩地区では現行モデルのピカピカのドイツメーカー車やレクサス車がたくさん走っていて、日本人は本当に物価高に困っているんだろうか!?と不思議な気持ちになる。クルマの価格がどんどん高くなるが、巨大資本が日本の購買力をしっかりとリサーチをして確実に売れると判断されたモデルだけが適正価格で市場に投入された結果だ。車種も絞られていて過当競争もないので、発売したけど全く売れないなんてクルマは出てこなくなった。


10年分の進化

ちょっとネタバレになってしまうが、5年ほど前の2021年の福野礼一郎さんが選ぶ「買ってはいけない輸入車」に選ばれたのがVW・T-ROCだ。何とも挑発的な選定だが、出版不況の中で紙媒体を続けるためには必要な処置なのだろう。過去には「カーメディアに本音を書くバカはいない」と言っていた福野さんが、バカになりきって等身大の忖度なしのレビューを読ませてくれる。そりゃカネ払ってでも買って読むよ・・・。


「福野礼一郎のクルマ論評」という単行本シリーズは2014年から始まった。リーマンショックで阿鼻叫喚に陥った自動車産業が再編された頃から始まり、全メーカーが「最善か無か」の境地でクルマ作りを競ってきたおよそ10年間の変遷をざっくりと追いかけることができる。2014年の発刊当時は自動ブレーキなどほとんど装備されてなかったが、今では全車速対応の追従クルコン、ハンズオフ運転支援、シートヒーターなどが当たり前に普及し、静粛性もシートの座り心地も10年前とは比べられないくらいに大きく進化した。



書かれない「躊躇」

福野レビューは読者のリテラシーを少しナメているのか、過剰演出でサービス精神が満点なのか、福野さん自身が言いたいことを言ってるだけなのか、「毀誉褒貶」が実にハッキリしている。無名の自動車ブログがそのまま真似したら「薄っぺらい」とボロカスに言われてしまうのがオチだろう。福野さんレベルの実績(単行本20冊以上!!)を誇るライターならば、読み手は一方的な主張の裏にある「躊躇」の部分はバッサリとカットしたのだろうと勝手に推測してくれる。福野さんはそんな唯一無二の自動車ライターである。


T-ROCデビュー当時のディーゼルモデルが相当に印象悪かったようだ。読者はみんなわかってる「年次改良でだんだん良くなっていくのがドイツ車だろ・・・」(だから福野レビューでは蛇足だ)。先代モデルがあれば、最初から良いクルマの可能性も高いが、これがT-ROCの記念すべき初代モデルである。福野さんのバカ正直なレビューを知ってか知らずか、2025年には「4モーション」のディーゼルモデルが、新世代エンジンとともにリアサスをマルチリンクに変えて投入された。伏線はしっかり回収されている。



出てきたタイミングが悪かった!?

このT-ROC酷評レビューは2021年発売の「福野礼一郎のクルマ評論6」に収録されている。改めて収録されている他のレビューも読んで見ると、2026年現在の自動車業界を見事なまでに予言する内容になっている。ステランティスやルノーのBセグ車が大絶賛されている。これを読んでトヨタはレクサスLBXの企画はスタートしたというわけでは無いだろうが、トヨタの開発者と福野さんが同じ感覚を共有していたのかもしれない。


T-ROCと同時にレビューされたT-Crossに関してはBセグで1L直3のガソリンターボだったこともあって、福野さんのレビューで大絶賛されている。Bセグの想像を超える進化と、Cセグの退屈さが相まって過激なレビューを呼び起こしている。さすがに出版物の活字にしてしまうと影響が計り知れないのでその「構造的問題」にまでは踏み込んでいない。しかし読書側は勝手に推測して行間(秘密のメッセージ)を読んでしまう・・・以下はあくまで私の勝手な推測です。



シビックが日本から消えた理由

Cセグは北米や中国で台数を稼ぐためのクルマだ。トヨタ・カローラやホンダ・シビックが2000年代中頃からしばらくの間、日本市場での販売体制が不安定で、正規導入されない時期があったりした。カローラ、サニー、シビック、ファミリアが再量販車種の座を巡って争っていた80年代、90年代が過ぎ、今のBセグとなるヴィッツ、マーチ、フィット、デミオが新車で98万円で販売されるデフレな日本市場からCセグは退場した。


カローラ、シビックは北米で、サニーは中国で、ファミリア(アクセラ)は欧州で、販売を拡大し、それぞれに年産40万台規模を維持した。台数を追求するためアメリカ人や中国人が好むサイズへと拡大した。サイズ拡大で日本で使いづらいという指摘は多くのカーメディアが毎度のように言っている。生産コストを低減し、1車種を1つのラインで流す生産を行う中国、メキシコ、タイでの現地生産が可能な設計に落とし込まれ、ホイールベースは長くなり、エンジンやトランスミッションの改良も停滞した。



Dセグサルーンの悲劇

Cセグの停滞する現状よりさらに悲惨なのが日本市場からどんどん消えているDセグサルーンだ。カムリ、ティアナ、アコード、レガシィB4、MAZDA6は、走行性能を放棄してボデーの拡大に努めたが、結局はシェアをミドルSUVに全て持って行かれた。Dセグと同じようにCセグのロードカーもどんどんシェアを減らしている。現行プリウス、MAZDA3や次期カローラはスペシャルティデザインで話題性を振り撒いているが、もはやボデー縮小、軽量化へ逆行することは難しいだろう。


スープラ、フェアレディZ、ロードスターのような2シーターや、GR86やプレリュードのような後席の実用性ゼロの2ドアクーペの運用に踏み切れ無いならば、Bセグを買ったらいいと神(福野さん)はおっしゃる。ルーテシア、208、ノート(AWD車のみ)など、テキトーに選んでもハズレはない。BセグとCセグの無意味な価格差も指摘している。アメリカや中国で売るために作られたクルマに余計な費用を払う必要はない。



運が悪かった

一連のCセグ叩きの延長線でT-ROCに対しても、手厳しい評価が下された。福野さんは非AJAJライターなのでメーカーによるメディア統制を受けないため、海外カーメディアみたいにボロクソに書くことができる。読者もそれを望んでいる。21年レビューに登場するCセグはメルセデスGLA/GLB、T-ROC、MAZDA・MX-30、VWゴルフの4台だ。叩き過ぎて露骨に嫌な顔されるようになったメルセデスには甘めレビュー。MX-30はBEVなので別枠。


ゴルフは先代を大絶賛して多くの読者が買ったクルマなので、今更に手のひら返しはできない。そんな苦しい事情の中で、ディーゼルモデルのみでツッコミどころ満載のT-ROCが忖度無しに叩かれてしまった。このレビューのあとに、T-ROCは欧州ナンバー1のSUVに輝いた。前述のように福野さんの批判に応えるべくディーゼルのビッグマイナーチェンジもあった。当然からもしれないが、この後に続く7、8、9ではCセグ車の登場は減っている。



後記

最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年2月4日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。


「VW・T-ROC ドイツ車の価値」(マウンテンゴリラのカーライフ)


「VW・T-ROC コンパクトSUV戦争が勃発」(CARDRIVEGOGOエリア9)


「VW・T-ROC (2025年8月欧州新型発表)」(NEW CARS STORY)


「VW・T-ROC (2026年2月4日)」(CARDRIVEGOGOまとめブログ)









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