2023年1月27日金曜日

MAZDAを完全にナメたAJAJライター!?


 

読み始めて凍りつく・・・

「この10年ほどで、マツダというブランドが日本の、いや世界のクルマ好きにとって決して無視できない、注目すべき存在になったということに疑いを挟む余地はないだろう。」いきなり引用で恐縮だけど、疑いを挟む余地は・・・ある!!新刊が届いて読み出して数秒の出来事だった、狙い通りの鮮やかな先制パンチのつもりなのか、MAZDAファンの怒りの導線に火を付けている。(「2023間違いだらけのクルマ選び」の書評です)


AJAJの島下泰久さんは、MAZDAというメーカーが世界の一流ブランドと肩を並べるようになったのは「この10年余りの話だ」と言いたいようだ。そしてそれは世間の常識で「異論の余地はない」とのことだが、これはさすがにMAZDAに失礼だろ!!と思う。ユーザーにじっくり読んで貰える単行本でMAZDA特集を組むのなら、なぜこの日本メーカーが北米ブランドランキングの頂点を極めるまでになったのかについて、その概要を説明して欲しかった。



クオリティカー・ブランド「MAZDA」

日本の自動車産業にとって特別な年とされる1989年に、日産が北米で「インフィニティ」ブランドを立ち上げる。その後に日産はこのブランドを通して最高のクオリティを世界にアピールしてきた。初代セフィーロのデザイナーだった和田智さんは、すぐに引き抜かれて2000年頃にデザイン革命を起こしたアウディの原型スタイルを作り上げたことでも知られる。インフィニティ誕生の2年後の1991年に、MAZDAは日本国内向けのサブブランドとして「アンフィニ」を立ち上げる。「インフィニティ」のフランス語読みを選んだことにただならぬ決意が滲んでいる。


アンフィニ・ブランドはわずか数年で消滅してしまったが、1991年にアンフィニ誕生と共に登場した「RX7FD3S」によって、MAZDAは「価値あるクルマを独自のアイデンティティで作れるブランド」としての能力を見せつけ、この時点でメルセデス、ポルシェ、BMW、ホンダなどと同じ土俵に立った(これらのブランドの顧客を奪いに行った)。この時にすでにMAZDAだけがt使う様々な先進的な機構や、MAZDAだから生み出せる美しいデザイン・アイコンのそのどちらも存分に確立していた。2023年の現在もその延長線上でクオリティにこだわったクルマを作り続ける。



ビジネスMAZDA好きライター

2002年の初代GGアテンザは、欧州市場にコミットしたスポーツサルーン&ハッチバックだったが、エンジン、シャシー、サスペンションに至るまでこだわり抜いた力作で、欧州COTYでも絶賛された。また2001年にWTOに加盟してここから異常なレベルでGDPを伸ばす中国市場でも強烈なインパクトを残した。GGアテンザの偉業を無視してMAZDAの概略を語るAJAJライターは「ビジネスMAZDA好き」だ。島下さんの他に小沢コージさん、河口まなぶさん、池田直渡さんなどがいる「ビジネスMAZDA好き・四天王」と名付けよう。


今では信じられない話だけど、20年前はスポーツサルーンがとても人気があった。BMW・3シリーズ、アルファロメオ156、プジョー406、トヨタ・アルテッツァ、ホンダ・アコード(欧州ナロー仕様)などが、当時の欧州カーメディアで絶賛されているが、GGアテンザはこれらを相手に「完勝」と言える大成功を収めた。ライバルはグローバルで年5〜10万台がせいぜいだけど、GGアテンザは同じ市場で対峙して年20万台を超えている。



成功譚

1991年にアンフィニRX7で世界に名乗りを挙げ、2002年のGGアテンザで世界の頂点を奪取し、さらに2012年の初代CX-5は発売から2年余りで年40万台越えの超一流の量販SUVとなった。SUVブームに乗った成功と語られがちだが、世界中のメーカーが一斉にSUVを投入してVW、ルノー、プジョーなど欧州のメインストリームメーカーでもなかなか台数が伸ばせない状況だった。北米頼みで40万台を確保するRAV4、CR-V、エクストレイル、フォレスターを尻目に、カナダ、オーストラリアなど高所得地域でことごとく勝利したCX-5はグローバルで売れに売れた。


トヨタやホンダの最量販クラスのモデルが北米現地生産で積み上げるのが40万台という数字を、日本生産主体で成し遂げたのだから素晴らしい(他にはランクルくらいか)。年40万台は世界の量販車でトップクラスの数字であるけど、そこにMAZDA車が初めて到達したという意味ならば、島下さんの「この10年ほどで、マツダが・・・」という意味もわからないでもない。トヨタが「一番売れているから最も良いクルマ」というゴミみたいなデータ主義な結論を見るためにこの本にカネを払っているわけじゃない。



MAZDAのインタビューは面白いが・・・

本書にはMAZDAの廣瀬一郎専務執行委員のインタビューが収録されている。2022年に突如退任してしまった藤原清志さんが辞めていなければ、ここに登場してコンプライアンス無視の放談が炸裂したかもしれない。廣瀬さんは藤原さんとは真逆のタイプのようで、冷静で当たり障りのない言い回しで淡々と説明している。藤原さんの人気はかなりのものがあったが、MAZDAとしては藤原さんが暴走してドイツメーカーなどの悪口を言いまくったあの「黒歴史」が再現されることをよっぽど警戒しているようだ。(黒歴史とはフェルディナンド・ヤマグチさんの「仕事がうまくいく7つの法則」)


2022年版の巻頭特集はホンダだった。現役のエンジニアのインタビューがあり、「電動化はゲームチェンジのチャンスと思っています」などの見出しが印象的だ。あれから1年経ったが日本市場にはホンダの新しいBEVは無し(中国市場では「e:HS1」の販売開始)。北米市場では新しく投入した「インテグラ」が北米COTYを獲得し、北米ブランドランキングもBEV未登場だけど、スバル、MAZDA、BMWに迫る4位にまでジャンプアップしてきた。



2023年の展望は!?

2023年版の本書に特集されたMAZDAだから、なんらかの飛躍の年になるのかもしれない。年末に発売された新刊なのに、2023年のMAZDAの見通しは全く語られていない。昨年11月のファンフェスタで、パイクスピークに参戦する4ローターで武装したMAZDA3が公開された。アメリカ市場のモータースポーツイベントに参戦するのは、明らかにマーケティングなんだろうけど、CX-70&90だけでなく、GT-Rやコルベットのようなスーパースポーツも発売する可能性が出てきた。


まともに手作りしたらどんな価格で売っても利益は出せないだろうけど、ロードスターも混流生産のおかげで黒字を確保している。GT-Rも15年以上前から乗用車ラインに混ざって生産されている。アンフィニと名乗ったり、魂動デザインのベースを2010年発表の某インフィニティ車に求めた過去からも、MAZDAの日産フリークぶりは隠せない事実だ。GT-Rと同じように混流生産でRX-9を作ることは、ずっと前から温めていた構想だと思う。



1991年から始まった・・・

「MAZDA10年説」を語り2012年以前のMAZDAを無視するAJAJライターであっても、ロータリースポーツが復活し、「MAZDAクオリティカー30年計画」の結実を目撃すれば、その軽薄で無神経な主張を撤回してくれるかもしれない。1991年に3代目RX7と共にクロノスというモデルが登場し「GE」という車台コードが与えられた。ミドルクラスのサルーンをまだ少数派だった3ナンバーに仕立てたことで日本国内では失敗と言われたが、MAZDAがグローバルを意識したクルマづくりを明確に打ち出した記念すべき一歩だったと思う。


時代には1997年に「GF」カペラとなり、2002年に「GG」となった。見事に伏線は回収されている。2012年にCX-5、2022年にCX-60と10年周期で渾身のフラッグシップモデルが出てくる。もう狙っているとしか思えない。2032年にはどんなMAZDA車が登場するのだろうか。せっかく島下さんがMAZDA特集を書いてくれたが、最初の1文で怒りに震えてしまって、その後の内容はフラットに頭に入ってこない。MAZDAのエモさを「販売台数」とか「価格」とか「燃費」で四角四面にレビューされても何も伝わってこないけどさ。


2023年1月13日金曜日

方向転換が著しくてビックリの「2023年版・間違いだらけのクルマ選び」



 

稀有なスター性

「911GT3に乗りながら日本メーカーへの愛を叫ぶ」・・・この人の本音は一体どこにあるのだろう!? やや複雑な設定のせいなのか、島下泰久さんのレビューや動画は、私のような凡人には「ちょっと何言ってるかわからない」ってことも多い。この人と同じようなバックボーンを持つ「フェラーリのオーナーだけど日本メーカーも好き」みたいな人ならば、案外すんなり理解できる内容なのかもしれないが。多くの読者にとって全く価値観の違う「雲上人」なAJAJライター島下さんが、毎年わざわざ新刊を出してくれる。これはとてもありがたいことだ。読書とは多様な価値観を理解するためなのだから。


2023年版「間違いだらけのクルマ選び」も読みどころとツッコミどころがいつも以上に満載で、もう何から書けば良いのかわからないくらいだ(多分もう1回書く)。今年になって気になったことではあるけど、「軽自動車概論」というコーナーが毎年細々と続いている。国内販売の4割に達する軽自動車だから、編集部の指示かもしれないが、とりあえず付けられている完全なるオマケコーナーである。買いてる側も「これ誰も読まないだろうな」という雰囲気が出てしまっている。毎年が同じような内容で、もはや著者本人が書いているかどうかも怪しい。



島下さんが見せる可能性

あくまで想像の域を出ない話だけど、趣味性の非常に高いクルマしか乗らないライターが、「特別な税制」が適用される実用インフラの軽自動車についてあれこれ物申すことに、ちょっと腰が引けているのかもしれない。AJAJの中でも異次元のエンスーである島下さんだからこそ、その独特の価値観で日本の軽自動車の現状を存分に語って欲しい。HVなどが生まれるずっと前から軽自動車は存在していた。省エネが得意な日本が生み出した究極のエコカーをまともに議論しないままに、「EVシフト」の是非をクソ真面目に語っても、読者には違和感しか残らない。


アリアやbz4XなどのBEVや、アウトランダーやRAV4&ハリアーのPHEVなんかより、軽自動車の方がよっぽどエコじゃないか!?と誰もが少なからず思っているけど、ライターはメーカーに忖度するからそんなレビューは一切書けないし、目立つところで意見を披露することもしない。ちょっと考えればわかるけど、軽自動車の普及はトヨタの利益とは完全に相反する。儲からないBEVに関しても同じことが言えるけど、「エコ」と自動車メーカーはwin-winの関係にはなりにくい。これこそがEVシフトの議論が紛糾する唯一の理由だ。



炸裂!!日本COTY受賞車へのイチャモン

そんな中で三菱と日産が軽自動車規格のEVを作ってしまった。軽自動車概論とは別のBEV枠で島下さんが「サクラ」に対し、オブラートに包んで異論を出している。おそらくは、「サクラは『エコカー』ではなく『ESGカー』である」と書きたかったのだろう。軽自動車とBEVという、お互いに無視しあっていた2つの「エコ」が、長らく続いた不健全な関係を終え、見事に大団円を迎えた・・・と、多くの人に勝手に解釈している。日本COTYも当然のように「軽自動車初の快挙」とともに受賞した。しかし島下さんは納得していなかったようだ。


現実問題としてリーフからサクラへの乗り換えは可能かもしれないが、ノートe-POWERからの乗り換えはかなり難しい部分がある。最善のエコを追求した結果、クルマがユーザーに与えてきた「自由」が大幅に制限されるようになった。お金持ちのセカンドカーならすんなり機能するだろうけど、金持ちにサクラを買わせて所得制限がないEV補助金を給付する不経済に頭がクラクラする。このクルマを補助金ありきで地方の高齢者にお奨めするのは、エコではなくエゴである。そこに島下さんのセンサーは反応してしまった。「日産ってなんかキモいよね・・・」とはもちろん書いてないけど、まあある種の嫌悪感が表明されている。



「ドイツ車基準」は封印

本書で多くのページが割かれているのは普通車である。トヨタを始め、日産、ホンダ、MAZDA、スバル、三菱の主だったBセグ、Cセグモデルは、ほとんどが世界で販売されて高い評価を得てきたグローバルモデルばかりである。その完成度は非常に高いレベルにあり、いくらプロの評論家であっても、誰もが看過できないような設計上の「瑕疵」を探すのが難しいくらいだ。日本車が名実ともに世界のトップに立ってからすでに20年が経過している。


アラフォー世代が免許を取った時に、すでにアテンザやオデッセイが世界を驚かせていたのだけど、それらの新興・日本車シリーズに対して、「ドイツ車に比べれば、あーだこーだ」と無意味なレビューを書き続けてAJAJやカーメディアは信頼を失っていった過去がある。このシリーズでも過去にはそのような言い回しが散見されたが、2023年版の本書では、もはやそのような書き方は一切見られなくなった。ハイエンドなドイツ車の奥底まで知る島下さんだからこそ、なんとか搾り出していろいろ放言して欲しい気もする。



管理カーメディアの時代

フェアレディZをパロったようなデザインの新型プリウスに「悪趣味過ぎる」と言い放つ豪快なライターが一人も現れない。モリゾーさんがカーメディアをきつく縛り倒しているのだろう。横置きプラットフォームになったクラウンの第一弾となるクラウンクロスオーバーに関しても、1点の曇りもない大絶賛レビューに仕上がっているが、これもシャドーライターの仕事か!?巻頭特集の中でも一番最初にレビューがあるので、もしかしたらもっと「特別」なところで起草&校正が行われた原稿なのかもしれない。


島下さんが書くようになってからの「間違いだらけ」シリーズとクラウンにはちょっとした因縁がある。2世代前のクラウンに対して、ドイツ車大好きな島下さんが「忌憚のない意見」を書いていたことがあった。「真っ直ぐ走らない」つまりオブラートを外して解釈すると「FR車の尊厳を破壊するデタラメ設計」と言いたかったのだろう。先代のクラウンはニュルブルックリンクを走り込むなど柄にもない作り込みでコストが嵩み、強烈に跳ね上がった車両価格が仇になった。




ちょっと無理がある

直6ディーゼル&FRシャシーで「走りと経済性」の両立を実現したMAZDAのようなメーカーもあれば、THSとの相性や、BEVとの互換性を考慮して、ガソリンモデルの廃止のタイミングで横置きエンジンに舵を切るクラウン(セダンはFRを維持するらしいが)がある。実際のところ高齢者ユーザー以上に若者ユーザーはスポーティな走りにあまり興味がない。そんなマーケティング結果が反映されたのかもしれない。ハリアーやアルファードのような乗り味を持つクーペっぽいフォルムの上質なインテリアのクルマならば日本でもグローバルでも勝算は十分にあるのだろう。


そんな身もふたもないレビューでは宣伝効果はないので、クラウンは「これまでにない設計」でシリーズ市場最高の走りを実現したと様々なカーメディアが盛り上げている。試乗もしていないのでなんとも言えないが、既存シャシーを使っているのに、クラウンクロスオーバーが登場してから急にスポーティなシャシーに変わるなんてことがあるのだろうか。カムリ、アバロン、シエナ、ハリアー、RAV4など、セダン、ミニバン、SUVに汎用で使われるシャシーってだけで、スポーティさに関しては「割引」で評価すべきだと思うが・・・。



ベンツもBMWもないけど・・・

失礼ながら、10年前ならば、国沢光宏さん、清水和夫さん、小沢コージさん、河口学さんなどとともに「日本メーカーを徹底的に侮辱する連合」の旗頭であった島下泰久さんが、もしこのクラウンクロスオーバーのレビューを本音で書いているとしたら、そろそろカーメディアに対する偏見を変えるべき時がきたのかもしれない。ともかく島下さんが本シリーズを書き始めた頃と比べれば、型式こそ変わってないものの、評価基準は180度変わったと言わざるを得ない。2023年版の本書ではトヨタ礼賛の姿勢が全編に貫かれている。


それと関係があるのかもしれないが、外国車の登場はわずか2台に留まる。しかもシトロエンとテスラだけ、人気が高まっている両ブランドだけど、まだまだ日本の輸入車市場の主役にはなりきれていない。販売台数ならば上位独占のドイツメーカーからは1台も登場していない。トヨタとの癒着を理由に掲載を断られた・・・なんてシビアな理由も結構あるらしい。あまりにも寂しいのでキックス、アコード、スープラも外国車枠にすれば、読者にも何かとわかりやすいかもしれない。






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