2024年9月1日日曜日

マツダ整備士ユーチューバーは、他社案件に転んだのか?





大人のガチ喧嘩発生!?

この1〜2年で MAZDAのファンに広く知られる存在となったユーチューバーの「ひでぽん」さんですが、短期間で登録者数を大きく伸ばし、AJAJライターでも名前が知られている島下泰久さんの「RIDE NOW」や小沢コージさんの「cozzi TV」を軽く追い抜かしてしまった。マツダの内部事情がわかるコネがあるようで、他のチャンネルでは得られない情報が満載されていて、数あるMAZDAユーチューブチャンネルの中でトップを取るのは時間の問題だった。


これだけ登録者が増えれば、単なる趣味でなく、ユーチューバーとしての実益を追い求めたくもなるわけで、さらに登録者を増やすにはMAZDAユーザーだけでなく、トヨタやレクサスのユーザーを巻き込んでいくしかない。既存の登録者の多くがMAZDAのファンだとしても、なんの未練もなく「トヨタ最高です!!」「レクサス最高です!!」といった動画を展開し始めた。これまではMAZDAファンの溜飲を下げるものが多かったが、さらに多くのユーザーを抱えるトヨタファンにスリスリする内容の動画が多くなって、予想通りアンチコメントが殺到したらしい。


動画の危険性

顔出しで堂々と喋るだけあって肝は据わっている。アンチコメントに対してもニヤニヤと動画のコンテンツに組み込んでいく。ユーチューブ、ブログ、SNS(Xなど)へのアンチコメントなんてまともな人間のやる事ではないと思うので、個人的にも経験してきたが、アンチコメントのほぼ全てが浅知恵な連中の勘違い発言に過ぎない。SNSで吠えるホリエモンとかひろゆきなど、失礼を承知で申し上げるが、いちいち発言が浅い(間違えも多い)。バ○専門のインフルエンサーを演じて実益を得ている。


頭が弱い人ばかりがユーチューブを見ている・・・・そんな極論を述べたいわけでは決してない。しかしテレビやネット動画などの映像は、さまざまな編集を経てモンタージュが構築された虚構を見せて感情に働きかけてくる。疲れている時に多いけども、ボーッと見て時間を過ごす。自分自身の思考停止に気付いて気分が悪くなる。例えばウイスキー系チャンネルの動画を見て、直後に何も考えずにアマゾンで見ていたボトルをポチる。テレビやネット動画が日常の情報源になってしまっている実家の母親がストロングゼロを飲んでいた時には、厳しく説教したこともあった。



方向転換

「ひでぽん」さんは、アンチコメントに対して最もらしい返答をしている。「MAZDAしか知らない連中に他社の凄さを伝える」「どこにも忖度しないスタイルを貫く」などなど。アンチコメントを書く連中はこんな当たり前のこともわからないのか!?と鼻で笑っている。いや批判の対象はそれじゃない・・・タイミングの問題だ。CX-60は発売当初から売れ行きは好調だった。500万円のMAZDA車がまともに売れるわけがないとタカを括っていたトヨタはさぞかしビビったことだろう。それから間も無く「ひでぽんチャンネル」が執拗に足回りとミッションのガタガタを拡散し始めた。


さらに同じくらいのタイミングで売れ行きがさっぱりのレクサスLSの絶賛動画が上がり始める。これが1年くらい前のことだった。あまりにも唐突であり、多くの視聴者は怪しさを感じたはずだ。「ひでぽん」さんがトヨタの広告代理店から「案件」を受けたと断定することはできない。案件の伴うステルスマーケティングだったとしたら、画面にそれが明確にわかるよう表示する義務があるけども、見たことはないので案件ではないと考えられる。しかしマツダ整備士のチャンネルで脈絡もなくトヨタ車絶賛動画が「PR」表示とともに流れたら、「あまりに露骨だろ」と、トヨタにとっては不都合な評判につながりかねない。



トヨタなら可能?

トヨタくらいの超一流企業は、グーグルにとって収益の柱である「広告受注」と「ビッグデータ販売先」として、最高クラスのVIPクライアントになる。ゆえにユーチューブ規約に関しても「トヨタのステマ」には特別な「除外規定」が存在するのかもしれない(あくまで憶測です)。トヨタ系ユーチューバーはたくさん存在する。「寄らば大樹」とは言ったもので、インフルエンサーとして活動するにあたって、いろいろと面倒な問題が起きにくい制度になっているのかもしれない。


利益のほとんどを海外市場で稼ぎ出すMAZDAに対して、国内市場への依存度が高く、日本市場で異変が起きたら死活問題となるトヨタでは、当然ながら国内市場向けの広告宣伝費は大きく変わってくる。トヨタと仲良くするのは、ユーチューバーとして合理的判断のようにも思える。確かに多くの自動車系チャンネルでMAZDA車の時に顕著に試聴回数が増えるという現象は見られるが、MAZDAが日本市場から撤退してしまったらもはやそこまでだ。



問題は「ある」

マツダ整備士のユーチューバーがトヨタ車を動画で絶賛する・・・という企画自体がとても新鮮であるし、レクサスLSやアルファードに憧れるユーザーに寄り添った内容の投稿をしても、それはあくまでMAZDAと「ひでぽんチャンネル」の関係上の問題に過ぎないので周囲がとやかく言うことではない。「ひでぽん」さん自身もそのように主張している。アルファード絶賛動画がMAZDAファンやMAZDAの関係者から顰蹙を受けているとのことだが、最初は私も文句を言う連中がおかしいと感じてはいたが、実際に動画を見て意見は180度変わった。


そんなにアルファードが良くて、それが正直な感想であり、本人が主張するように一切のステマ・案件ではないと言うならば、今後の「ひでぽんチャンネル」はアルファードがメインになっていくことだろう。ここまでは何の問題もない。しかし動画の中で何度も言及して、わざわざ未発売のCX-80を貶す必要があるのだろうか? ふと10年くらい前のAJAJ騒動を思い出した。VWと裁判になっていたスズキに対して、VWがAJAJに「スズキを貶めるレビュー」を大量に発注したことが明らかになったが、信頼を失ったAJAJはもはやその存在意義を失いつつある。



不審な点

まだトヨタが公式には発表していない段階であるが、動画内の「ひでぽん」さんは、本体価格440万円のアルファード廉価版が追加で投入されることを明言している。トヨタもCX-80を警戒しているようで、アルファード廉価版の情報を、雑誌媒体などに盛んにリークしてはいるようだが、動画内ではズバリ「440万円」とハッキリ言っている。アルファード動画の構成は、トヨタが伝えたい情報がしっかりモンタージュされていて、コンサルの手が入ったかのような出来栄えだ。


マツダ歴42年ともなれば、余人にはわからないMAZDAへの愛憎の籠った想いなどもあるだろう。初代RX7や五代目ファミリアが発売されていた時代からずっとMAZDA一筋だとどんな「クルマ観」が育まれるのだろうか。3世代のRX7は実質的に全世界でスポーツカーというジャンルの頂点を取ったと言ってもいいシリーズになった。そんな黄金時代と比べてしまえば、今のMAZDAは刺激が足りないだろうし、最も不満を持ちやすい世代なのかもしれない。



マツダ歴長過ぎ問題

動画で存分に表現したくらいに、レクサスやアルファードへの想いが本物ならば、今後はトヨタ系ユーチューバーとして更なるご活躍を願いたいと思う。人様の動画を見させてもらって「わざとらしい」とか申し上げるのは気が引けるが、CX-60の一件からMAZDA陣営との間に修復不能な関係が築かれているのでは?と邪推してしまう。MAZDAと仲が良いならば、このタイミングでアルファード絶賛動画は挙げないだろう。


マツダ歴13年で、最初のMAZDA車がGHアテンザ後期の若輩者の感覚だと、MAZDAが作るべき価値があるクルマとは、少なからず足回りがガタガタしているものだ。アルファードを絶賛してMAZDAをイジるのもいいけど、CX-60、GHアテンザ、E90Mスポ(BMW3シリーズ)の3台でどれが一番ガタガタなのか比べる企画で、MAZDAの開発者がやりたかったことを代弁してあげるのが、MAZDA愛に溢れるインフルエンサーってものじゃないだろうか?







2024年3月1日金曜日

「燃費ステマ・パフォーマー」小沢コージさんのカーメディア革命



 

クルマ買いたい!!

「ステマ」と書いてしまうとネガティブなイメージに受け止められるかもしれけど、クルマを買いたい気持ちにさせるステマはどんどんやればいいと思う。「ステルスマーケティング」は、NHKのような公共放送が番組作りにおける独自のガイドラインとして禁止していたりするが、決して日本の法律に反するものではないし、消費者に過保護な日本であっても決して「社会悪」と断罪されるものでもない。小沢コージさんとYouTubeの間で規約の問題があるかも知れないが、私を含めた第三者があれこれ言うことではない。


小沢さんの「kozzi TV」で「トヨタ・アルファードでリッター20km達成」という動画が公開された。ミニバンの動画なんてまず見ることはないけども、気になってついつい最後までチェックしてしまった。最大手トヨタがそれなりの金額でPRしても、アルファードが全く刺さらない人でも、小沢さんの動画を見たら、アルファードは買わないまでも、トヨタのハイブリッド技術はとうとうここまで進化したのか!?と驚くはずだ。よく調べて見ると新型アルファード・ハイブリッドのモード燃費は17.7km/L(WLTCモード)に達している。先代までのハイブリッドが全く不評だったこともあって、トヨタもアルファードの燃費を伸ばすのは難しいと思い込んでいた部分はあると思う。




なんで箱根?

モード燃費が17.7km/Lのクルマを、20km/Lで走らせてしまうのが、プロ燃費ステマパフォーマーの小沢さんの新しいコンテンツになりつつある。高規格道路でもない一般道でこの数字をマークしてしまうからなかなかエゲツない。この動画を見て一気に心が傾いて、アルファードを買った素人が真似してみても、せいぜい実燃費は13km/Lくらいしか出ないことは想像に難くない。あくまで小沢さんの仕事はクルマを買わせることであり、実際に20km/L出して実証しているのだから何の非もない。トヨタが法令を遵守して算出しているとされる「モード燃費」よりも、外部の人が実際に走って測定された実燃費の方が、視聴者は信じやすいと思われる。


ちなみにテレビ神奈川(TVK)で毎週放送されていて、YouTubeでも見ることができる「クルマで行こう」の番組内では毎回のロケでの実燃費を発表するが、モード燃費を大きく下回ることが多い。ロケ地が箱根ターンパイクであり、あれだけの高低差を登っていけば燃費は大きく悪化する。箱根ではなく房総フラワーラインでも走れば、遥かに良好な実燃費を出せるし、実際のユーザーが年に何回箱根に行くだろうか? 個人的に所有するCX-5の2.5LガソリンAWD(モード燃費13.0km/L・WLTC)だと箱根は11km/Lくらいなのに対して、房総だと13.5km/Lくらいは出せる。「クルマで行こう」の実燃費で「8.8km/Lでした」とか言われたら、視聴者のクルマを買う気分を萎えさせてしまうと思うが・・・。



メーカー関係者の熱視線

「クルマで行こう」とは逆に、「kozzi TV」を何気なく見ていて、アルファードで20km/L、レヴォーグレイバックで16km/Lといった実燃費を出されると、「あれ?こんなに燃費良いの?」「これだけ走るなら買おう!!」といった感じで購入まっしぐらのインスピレーションが走る人はそこそこ出てくると思う。現状でトヨタの中型・大型ミニバンや、既存のレヴォーグなどに乗っていて燃費に不満な人は、まだまだ中古車価格が高値水準な状況を考えても、一気に買い替えてしまえ!!という決断の後押しになり得る。勝手な想像に過ぎないけども、大型モデルでは燃費が悪かったトヨタや、水平対抗エンジンの燃費に苦しむSUBARUにとっては、小沢コージさんこそが、今では最も広告宣伝費を払えるメディア・パフォーマーではないだろうか。



「kozzi TV」より多くのチャンネル登録者数をもつAJAJライターは他にも何人もいる。登録者80万人越えの五味康隆さんや、50万人越えの河口まなぶさんが有名だけど、最近の動画の再生数を見ると、登録者4万人足らずの「kozzi TV」が10万再生の動画をコンスタントに出しているのに対して、桁違いの登録者数を有するこの2つのチャンネルでは、10万回再生をなかなか超えられない。2024年に入ってからどうやら本当に小沢コージさんの時代がやってきてしまったのだろうか。視聴者目線でやたら刺さってくる「燃費ステマ動画」は、これからの自動車系YouTubeのキラーコンテンツになるかもしれない。



トークスタイルは様々

「kozzi TV」が好調なのは、決して燃費ステマだけが原動力ではない。動画の構成を比べてみても、五味さんや河口さんのチャンネルと「kozzi TV」では完全に視聴者層が違っていると思われる。毎回の動画で取り扱うクルマもかなり価格帯が違う。「kozzi TV」には1000万円もするような高級輸入車はまず登場しない。将来を夢を見る若い世代は、スーパースポーツを所有する五味さん、河口さんのチャンネルを見て、ハイエンドなカーライフを身近に感じられ、これは仕事のモチベーションになるだろう。一方で高級車にはもう興味なくて、単純に小沢コージさんと渡辺陽一郎さんというクルマ大好きなオッサンの居酒屋トークを聞きたいだけという視聴者が再生回数を押し上げていると予想される。クルマ好きと話すのは楽しい。


小沢さん渡辺さんコンビによる生放送も回を重ねてだいぶ慣れてきたようで、非常にテンポ良く聞きやすくなったし。何より本音が混ざったクルマ好きトークが存分に聞ける。2人ともにヘンに格好つけることもなく、ディーラー担当者との雑談みたいな「ちょうど良い」温度の会話が20〜30分の尺に収まっている。残念ながら若い視聴者にとっては分かりにくいオッサン世代の話になってしまうとは思う。もちろん五味さんのように唯我独尊でクルマの優劣をハッキリと伝えてくれる一人語りが分かりやすい人もいるだろうし、河口さんのように贔屓のブランドのクルマを徹底的にヨイショしてくれて気分が良いという人もいるだろう。



フェルディナント・ヤマグチさんの本!?

「kozzi TV」の動画にはいくつかのパターンがあるのが強みだ。最近目立つのは「燃費ステマ」だけど、前述の「渡辺さんとの対談」に加えて有力なコンテンツになっているのが「メーカー開発者インタビュー」だろう。輸入車がメインコンテンツでやってきた五味さんや河口さんは、国内メーカーの開発者のインタビューは、日本車なんて興味ない視聴者層には合わないと考えているのかも知れない(日本車を下に見るコンテンツはあるけど)。五味さんがSUBARUの開発陣の前で偉そうに振る舞っていた動画は、輸入車ユーザーの日本メーカーに対する偏見を見ているようであまり気持ちのよいものではなかった。


小沢コージさんはかなり前から、開発者インタビューのコンテンツを展開していたが、開発者の方々がリラックスしているのが印象的だ。小沢さんとの心の距離が近く気心が知れた仲に見える。知り合いの開発者を多く出演させていて親密さを演出しているようだ。インタビューに出られる開発者も小沢さん以上に年配の方が多く、若い世代の視聴者にはよくわからない話も多い。フェルディナンド・ヤマグチさんのインタビュー本などが好きな人には、興味が湧かないミニバンなどの開発者の話でも、会社から与えられたミッションを一流のエンジニアがどんあこだわりを持って仕事したかがわかるので楽しい内容だ。




小沢さんは結構儲かっているはず

YouTubeでそんな堅苦しい技術の話なんて聞きたくないという人は、すぐに動画を閉じてしまうだろうけど、チェンネル登録者数よりもはるかに伸びている動画が目立つ「kozzi TV」にはかなりの「中毒患者」がいると思われる。実際の統計はわからないけども、視聴者の知能レベルはかなり高めではないだろうか。グーグルアドセンスは視聴者個人個人のデータを大まかに把握しているので、お金を持っていないしネットでほとんど買い物もしない若い世代の視聴者が多いチェンネル(五味さんと河口さん)よりも、小沢コージさんの方が効率的に広告宣伝費を稼いでいると思われる。


3年前にこのブログで「kozzi TV」を初めてネタにした時は、確か登録者は6000人くらいだったと思う。それが現在では4万人にまで増えた。小沢さんのモチベーションもかなり上がってきたようで、他のAJAJユーチューバーよりも投稿頻度が高い。五味さん、河口さんには失礼だけど両者のチャンネル登録はしていないし、私向けのオススメには出てこない。島下泰久さんの「Ride Now」は登録者6.7万人いるが、動画の再生数は完全に「kozzi TV」の方が上回っている。「Ride Now」は海外試乗も多いのが売りだけど、やはりメルセデスやBMWに興味ある人が少なくなったのかな・・・。



アルファード動画のタイミングが謎

もしどっかのメーカーに依頼されて「燃費ステマ」をやれと言われたら、とりあえず山梨県の富士スバルラインにクルマを持って行って、全コース20kmの距離を山下りすれば、トヨタ・ランドクルーザーであっても20km/Lどころか、200km/Lくらいは余裕で出せると思う。そんなチートしか素人には思いつかない。小沢コージさんの「燃費ステマ動画」にも何か特別な仕掛けがあるのでは?と勘繰ってしまう。これまでの動画を見る限りは、特段に燃費スペシャル用コースで走っている様子はない。さらに交通量が少なくてスムーズに進める夜間帯に撮影することもなく、毎回のように対向車もガンガンやってくる都市部の40km道路みたいなところで日中に堂々と撮影をしている。



あからさまなステマをやってしまったら簡単に視聴者に疑われてしまう。プロの小沢さんは徹底的にリアルなシチュエーションを演出しているので、全くと言っていいほど違和感はない。しかし2024年2月になって、夏頃に撮影したアルファードの燃費動画を出してきたタイミングは不思議だ。夏頃はアルファードが絶好調だったので、一旦はお蔵入りとし、トヨタから何らかのアプローチがあった時に「真夏の20km/L動画ありますけど、出しましょうか?」みたいな交渉をやっていたら面白い。3年前は冗談半分で「kozzi TVが天下を獲る」とか書いたけど、いよいよ本当に実現してしまいそうだ。










2024年2月10日土曜日

島下泰久さんに烙印を押された現行モデル

 

2024年版 間違いだらけのクルマ選び



面白くなっている

毎年暮れに発売される「間違いだらけのクルマ選び」の2024年版を、なんとなく惰性で買ってしまう。クルマ初心者にもわかりやすい内容で、1台当たりの紙面も限られていてあまり突っ込んだ内容ではないので、失礼だけど夢中になって読むような本ではない。それでも買ってしまうのは、2016年から前任者を引き継いでこのシリーズを切り盛りする島下泰久さんが必死で続けている姿が微笑ましくて応援したいのと、自分とは意見がかなり違うタイプのライターだからこそちょっと読んでみたいと思えるところだ。


読者離れや出版不況によってこのシリーズの販売低迷が囁かれていたが、紆余曲折の末に、2021年版からはメーカーの開発担当者のインタビューが掲載されるようになり、コンテンツもかなり充実してきた。記念すべき最初の2021年版に登場したメーカー担当者は、レクサス・インターナショナル・プレジデントを務めていた佐藤恒治さんで、ご存じの通りの豊田章男社長を引き継いだ現在のトヨタ自動車の社長である。1回目の人選からして大当たりと言っていいかもしれない。



インタビューが増強され読み応えアップ

2022年版はホンダの特集が組まれ岡部宏ニ郎さんが登場し、2023年版はMAZDAの巻頭特集で廣瀬一郎さんが登場した。島下さんが「RIDE NOW」というユーチューブチャンネルを地道に運営し、単なるAJAJライターではなく、発信力・影響力をもつ自動車インフルエンサーとしてメーカー側に認知された結果だろうか。あるいは自動車メーカーがセルフメディアを運営する時代に変わり、しがらみがたくさんある大手メディアや大手出版社からの出版ではなく、このシリーズが一番発行部数が多いというちょっとマイナーな出版社(草思社)の発行なので、メーカー側も与し易いのかもしれない。


2024年版にはどこのメーカーの人が出てくるか?と思っていたが、今回はまさかの3人登場で、巻頭特集が本編の半分を占める巨大コンテンツになっています。しかも1人はあのダイハツの記者会見でメディアの前に登壇したあの人だ。島下さんは引きが強い!!佐藤さんに続いてまたしてもピンポイントな人を引き当てている。ダイハツ不正の会見ではメディアの若手記者を低い声で恫喝するような答弁が印象的な強面な人だったけど、この本のインタビューでは「カッコいいクルマがすっごく好きなんです」みたいな、なかなかチャラいことを仰っている・・・。



勝手な解釈

この「間違いだらけのクルマ選び」の巻末には面白いものが付いている。毎年本編を見る前にこれを読んでしまう。それは本書に掲載されている市販モデルを採点した総合の「通知表」がある。島下さんの主観による評価なので特段に文句を言うつもりはないが、読者が見て受ける印象を考えるに、総合評価の得点が10段階で「5」以下という低い評価は、実質的には「死刑判決」を意味する。これを読んだ人は誰も買わないだろう。そして「7」以下のクルマに関しても読者には全く良い印象は与えられないから、「引退勧告」くらいの意図があると思われる。


2024年版で「死刑判決」が出たモデルは4台だった。1台目は「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」で評価は「4」である。生産が中断されているけども日本市場屈指のベストセラーモデルだけども、売れ過ぎて市場を捻じ曲げるクルマにはあまり良い印象がないのかもしれない。肝心の本編を読んでみると、2023年5月にロッキーとライズのHEV(ダイハツ版e-POWER)が販売停止になり、エンジン版のみ出荷されていたが、年末になってこちらも巻き込まれた。本編の加筆は間に合っておりません。真面目なAJAJライターとしては、とりあえず「オススメできない」という納得の意見。



日産だって困っているのでは?

2台目は「日産・リーフ」で評価は「3」だ。バッテリーの原材料価格が大幅に高騰していて、相次ぐ価格改定で全然お手軽なクルマでなくなったので、当然これもオススメできない。ロングレンジモデル「プラスe」(航続距離550km)は、上級BEVのアリアのベースモデル「B6」(後続距離470km)と同じくらい(538万円〜)に設定されている。アリアのロングレンジ「B9」は公式ホームページから削除されており受注停止のようだ。


日産としては2028年に全固体電池搭載の1000km航続のBEVを販売するそうなので、残り4年くらいはこのまま「死んだフリ」のBEV戦略を続ける気がする。全固体電池はコスト面に課題があって2000万円くらいするスーパースポーツにしか使えないとかいう報道もあるので、GT-Rの後継モデルなのかもしれない。他にも優れた電池が開発されて、アリアやリーフの不自由な現状は改善されると思われる。



「デスノート」

3台目は「レクサスES」で評価は「5」だ。レクサスのグローバルでの稼ぎ頭のモデルに対して、本編でも痛烈な言葉が並ぶ。確かに日本でもほとんど見かけない気がする。レクサスLSをアメリカ人が好む合理的な設計でカムリベースで仕立てたモデルで、北米ではメルセデスEクラスやBMW5シリーズと同等の価格でかなり良く売れた。それならば日本でも売れるだろうと、レクサスGSを置き換えた訳だけど、GSの方がまだまだ良く見かける。そう言えば島下さんのお気に入りでもあったな。


レクサスESはまだ日本撤退はしないようだけど、カムリやMAZDA6などの同じような仕立てのセダンは次々と日本市場から消えていった。ちなみにMAZDA6は「間違いだらけのクルマ選び」2020年版で総合評価「7」となり「引退勧告」されており、2021年版からは通知表から除外された。カムリは2021年版で評価「7」を受け、2022年版から除外されている。恐るべき島下さんの「デスノート」である。



メーカーの意図を深読みすれば・・・

4台目は「トヨタ・シエンタ」で評価は「5」。2022年版までは個性的なスタイリングが光る先代モデルだったため、モデル末期にも関わらず島下さんは「8」をつけて絶賛していた。5ナンバー3列シートミニバンならば最強の1台だと断言していた。それが2023年版から現行モデルに変わり、5ナンバーミニバンとしての機能性や予想以上に良い走行性能こそ評価していたが、お気に入りだったデザインが某フランスメーカーの有名な商用車にソックリになってしまいボロクソ評価の「6」を下していた。


ノアやヴォクシーも大幅値上げで乗り出しが400万円台後半というご時世で、まだまだ乗り出し250〜300万円で済むシエンタは、親孝行な子育て世代にとっては代えの効かない存在になった。少々癖があるアバンギャルド(ちょっと幼稚?)なデザインより、長年親しまれているスタイルを拝借しようってトヨタも考えただろうけど、島下さんの評価は2024年版でも厳しいままでいよいよ「死刑宣告」となった。2025年版には生き残っているだろうか?



どんどん現行モデルは消されている

2024年版での「死刑判決」は以上の4台だけだが、現行市販モデルの中には既に過去の年度版で「死刑判決」されて、2024年版の通知表からは外されてしまっているモデルも複数ある。もしかしたらメーカーから苦情がきて「当該モデルに関しては今後は掲載しないでください」との要求を呑まされている可能性もある。2022年に比較的に本シリーズで高評価が多いMAZDAのCX-3が「5」の評価を受け2023年、2024年は姿を消している。


2022年に「5」の評価を受け、さらに2023年には「4」と評価されダメ押しされたのがトヨタ・ルーミー/ダイハツ・トールだ。トヨタ系ディーラーが日本中の高齢者ユーザーを一件一件回ってゴリゴリに売ってきたダイハツ生産モデルだ。使い勝手が良さそうなのでついつい買ってしまう人も多いようだけど、実家に営業がかかった時に相談され、この島下さんの本の評価があまりにも低いので慌てて他のモデルに変えさせた。賞味期限切れのクルマに関してはかなり的確に教えてくれるシリーズだと思う。


2024年版 間違いだらけのクルマ選び
















2024年2月8日木曜日

水野和敏さん「軽自動車(スーパーハイトワゴン)は危険過ぎる」

 


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー) 


名物連載のまとめ本

元・日産の開発者で有名な水野和敏さんのベストカー連載まとめが、全編カラーの豪華な装丁で単行本として発売された。自動車雑誌の売上No.1を自称する天下のベストカーであっても、この人気連載にもしものことがあったら、いよいよ雑誌媒体での販売が終了してしまうかもしれない。大きな変化があったらこの媒体で活躍する多くのAJAJライター、国沢光宏さん、松田秀士さん、清水草一さん、清水和夫さん、渡辺陽一郎さんなどの活躍できる場所が失われてしまう可能性が高い。水野さんの人気コンテンツはカーメディア全体を支える立場にある。


記念すべき「水野和敏が斬る!!」単行本は、月2回発売のベストカーを全く読まなくなった私にとってはとても新鮮な内容だ。毎回のように「クルマのことがまるでわかっていない」全メーカーの開発者や日本中のクルマ好きの読者に対して、完全に上から目線でドヤれるだけの実績と自信があるから、それだけでエンターティメントとして成立しているし、このような単行本を出せばさぞかし売れることだろう。若い読者にとっても世代が全く違う「カーキチおじさん」の異次元なクルマ観に触れられるとても貴重な本だと思う。



軽自動車の衝突基準

「ホンダN-BOXとスズキ・スペーシア」の比較レビューが収録されている。軽自動車の企画ではクルマ好きに読んでもらえないことを危惧したのか、冒頭から「炎上」しそうな過激な軽自動車批判が続いていく。今回のダイハツの一件が報道された後でこのレビューを読んだこともあって、とても衝撃的で興味深い内容であった。軽自動車ユーザーと軽自動車の生産&販売に従事しているメーカー関係者がこれを読んだらさぞかし憤慨するだろうけど、「良薬口に苦し」とばかりに完全無欠な正義感で放言の限りを尽くしている。まるでどっかの国の次期大統領候補みたいだ。これでカルト的人気はもっともっと高まるだろう。


AJAJ会員のライターには絶対に書けないタブー満載のレビューである。N-BOXやスペーシアなど世界でも類例がない異形の「スーパーハイトワゴン」型は今では完全に軽自動車販売の主流になっている。エンジンパワーに比べて車重があり、重心も高くて安定しない。さらに軽自動車で規定されている衝突安全基準の数値は驚くべき低さだそうだ。ネタバレだけど、法令で定められた安全基準が前面と側面はフルラップで58km/h衝突までとなっていて、後面も同じくフルラップで38km/h衝突までらしい。この最低限の基準を守ることさえダイハツは長年ズルをしていたため先日謝罪をしているのだが、そもそもこんな基準に意味なんてあるのだろうか!?



ユーザーはわかってる

フルラップで58km/hということは自車と対向車がそれぞれ30km/h程度でも限界に達しているということだ。これオフセット衝突だったらどうなるんだろうか!?最高速が120km/hまで引き上げられている高速道路に軽自動車の乗り入れは法的に規制されているわけではない。この安全基準を見たら誰も怖くて走れないかもしれない。実際のところ水野さんが憂慮するほどには、東名、中央、関越、東北、東関東、第三京浜、圏央などの近隣の高速道路で、子どもを乗せたN-BOXなどはほとんど見かけない。一応は軽自動車で高速を走るのは非常識だと認知されている。


高速道路だけでなく、日本中に次々と60km/h(場合によっては70km/h)制限の高規格道路が新設されている。八王子バイパス、日野バイパス、入間バイパス、新青梅街道、東八道路、新滝山街道、武蔵境通りといった東京都中央部の無料の高規格道路を利用しているが、日中時間帯は混雑が酷くて流れる車速はそこまで高くはない。本来の道路の実力を発揮する深夜時間帯だと、N-BOXが走っているのは滅多に見かけない。スーパーハイトワゴンの運用は、辺境への通勤、鉄道駅へのアクセス、スーパーマーケット・モール・コンビニへの買い物が圧倒的に多いように思う。




特段に問題があるとは思えない

秋田県の産業道路(秋田港〜男鹿市)を爆走する高齢者(女性)運転の軽自動車を見かけて驚いたことはある。しかし地方の幹線道路を長時間ドライブすることが多いが、東京とはまるで違っていて近づきたくないような異常な走りをするクルマはほとんど見かけないし、毎回のように平和なドライブをいつも楽しませてもらっている。地方には軽自動車が多いのは事実だけども、体感する限りではスーパーハイトワゴンがどうのこうのと騒ぐのはなんか違う気がする。「誰でも安全に300km/hで走れるクルマ」というコンセプトの方がよっぽど頭おかしいと思う。


水野さんに限らず、他のAJAJライターも異口同音に「軽自動車規格は不公平である」みたいなことしばしば言っている。渡辺陽一郎さんも軽自動車はそれほど燃費もよくないし安全でもないけど、税金が安いというだけでメーカーもユーザーも吸い寄せられてしまっている・・・と警鐘を鳴らしていた。政府としても税金の取りっぱぐれは解消したいだろうから、今後どっかのタイミングで軽自動車規格が廃止されることがあるのかもしれないが、そんな議論について報道されることはまずないし、50年以上に渡って放置されている現状がそのまま続いていくような気がする。



なぜ廃止にならないのか?

財務省と国土交通省に跨るクルマへの課税は縦割り行政であり、しかも直接的に不公平になっている自動車税は地方税であるため、消費税、所得税、復興税などの国税ほどとは違って、増税大好き財務省も関心が無いようだ。逆に自民党派閥の裏金原資となる企業献金を使って、国土交通省を動かしてエコカー減税だったり、エコカー補助金、高齢者補助金などを引き出しているくらいだから、軽自動車の存廃の主導権もメーカー側にあるのかもしれない。主要自動車メーカーで組織される自工会から自民党へ7800万円(2022年度)の献金が明らかになっている。


ちょっとネタバレを承知で水野さんの主張を書くと、軽自動車規格は高速道路網などまだ存在しなかった60年代のまだまだ貧しい日本の世相を受けて作られたものであり、国民もかなり豊かになった現在には合わない制度ではないか!?と「メーカーの開発者の立場」で仰っている。法制度が社会の実情と合わなくなってきた・・・日本では良く聞く話である。さっさと変えればいいことなのに、ずっと放置され続けるには何か理由があるはずで、軽自動車規格に関しては日本の自動車メーカーが一貫して支持していると思われる理由がいくつかある。



メーカーと企業献金

軽自動車を作っていないスバル、MAZDAであっても、日本各地の系列ディーラー網を維持するためにはOEMの軽自動車を売るしか生き残る道はない。軽自動車を完全に無視して営業できるのはトヨタ系列ディーラーくらいだけど、ダイハツを完全子会社としているトヨタは軽自動車の廃止を切り出すわけにはいかない。確かに法制度そのものを作るのは政府だけども、近年はそのスピード感ある政策のほとんどが、例えば日本医師会の献金によるコロナでの利益誘導だったり、政府の政策を評価して企業へ献金を呼びかけることが主な仕事の経団連によって法人税引き下げが実施されている。


軽自動車を新車でまともに買ったら200万円を超える。決して安くはないけども、軽自動車という慎ましい立ち位置は日本のユーザーの気質に上手く合致していて、「浪費」意識を芽生えさせないようになっている。今も昔も日本人は不必要に派手な出費を嫌う。まだレクサスLSが400万円台で販売されていた慎ましい時代だった2007年頃に、某日本メーカーが777万円でライン生産の量販車を売り出した。初代NSXのようなアルミ精錬工場まで用意した手作りの特別なモデルであれば高額なのもわかるが、ライン生産の量販車に700万円越えは、色々な意味で日本車の常識を変えた瞬間だったと思う。



軽自動車が増えた理由は・・・

35GT-Rが発売されてから日本メーカーの新型車開発とターゲットとなる顧客層が大きく変わっていった。普通車の価格は堰を切ったようにどんどん上昇し、2007年からの10年インフレ率は50%かそれ以上の水準だと思われる。トヨタのカローラやヤリスなどは比較的に価格が抑えられているが、他のメーカーは真似できないので、結果的に普通車販売はトヨタ系に集中するようになった。当然に自動車難民が増えた結果、同じ10年間で軽自動車の販売割合も2倍近く増えている。今の社会の実情に合わない軽自動車規格なはずなのに、近年になって割合が増えているのは実に不思議だ。別に水野さんに全ての責任があるとは言ってないが・・・。



クルマ好きな一般人が軽自動車不要論を述べたら「軽自動車に文句言うな!!野菜や果物も軽トラで運んでいる!!」「AMAZONを運んでいるのは軽貨物!!」みたいな反論が返ってくる。水野さんのような一流の業界人でないと安易には発言できない。もちろん水野さんはこのレビューにおいて軽自動車の商用と乗用の区分にもしっかり言及しているし、どっかの知ったかぶりなインフルエンサーとは意見の質はまるで違うのだけども・・・どれでも「どの口が言ってんだ!!」とちょっと言いたくなってしまった。


カリスマエンジニアが自動車評価の神髄を伝える 水野和敏が斬る!! (別冊ベストカー)




















2023年11月27日月曜日

福野礼一郎さん「全方位戦略」で名門ブランドを無差別襲撃

 

トヨタ完全無視!!


今年も「福野礼一郎のクルマ評論」の季節がやってきた。毎月律儀に「モーターファンイラストレーティッド」を読んでいれば、その連載の総集編に過ぎないのだけど、その雑誌がAmazonのサブスクから外れてしまったこともあって、今年は収録されるレビューの全てが初見だったので夢中で最後まで読み切ってしまった。いやそれだけではない、福野さんのレビューに新たな魅力が加わってきた。


この連載では母体雑誌の編集長を務める萬沢龍太さんが相方を務めていて、昨年発売の「クルマ評論7」から巻末に「編集人・萬沢龍太」とクレジットされている。「6」までは別の人が務めていた。母体雑誌の編集長の名前が入る仕組みなのかもしれない。数年前に萬沢さんがめでたく編集長になりました!!・・・とこの連載で書かれていた気がする。



10年で大きく変わった


編集本「クルマ評論」は2014年にスタートしているのだけど、ちょうど個人的に自動車ブログを書き始めた頃であり、怒涛のように繰り出される情報&洞察の連続攻撃に、かなり感銘を受けた覚えがある。このブログでもいろいろとネタにさせてもらった。好きなクルマやメーカーなどの主義主張に基づくツッコミどころはたくさんあるのだけど、自動車評論はトップレベルのライターのレビューとはここまで面白いのか!!と驚愕し、以後は福野さんの出版物は片っ端から買い漁るようになっている。


あれから10年ほどが経過するが、読み手の私の感覚もいくらか麻痺してきたせいもあるのだけど、福野さんのレビューから毒っぽいものがどんどん無くなっているように思う。クルマを取り巻く状況が変わり、評論家とメーカーの意見はどんどん乖離するようになった。評論に値するクルマがほとんど発売されなくなったエコカー全盛の現状では、あれだけ面白かったレビューにも全体にどこか厭世な雰囲気が漂ってくるのも仕方ない。読み手の意識の変化もあるだろうが。


「昔のクルマは良かった・・・」


若い読者からは「懐古主義」としか思われかねない今時のクルマへの批判は、多様化する意見の中ではその内容に関わらず「稚拙」と受け止められていまう。世界のトヨタ(レクサス)でさえも「良いクルマ」のアイコンとして「V8自然吸気」しか手段を持たなかったりする破滅的な状況だから、「昔は良かった」はあながち間違いではない。MAZDAロードスターとケータハム・セブンくらいしか「持続可能な趣味スポーツカー」として世界で支持されるものはないというやや過激な福野さんの主張もまあその通りなんだけども、日本のカーライフにはちょっと馴染まない。


2014年と比べてクルマの選択肢はかなり狭まっている。当時と同じような放胆なレビューにはやはり無理がある。福野さんがレビューを書くクルマにはもはやライバル車も満足に存在しない。2014年の福野レビューでは、レクサスとBMWやメルセデスなど、同格のライバル車を比較評価する軸が強かった。福野さんの場合は、その他大勢の評論家とは着眼点や洞察力が全く違うので人気があり、今でも単行本が「持続可能」になっている。そんな「王道」の手法も発売されるクルマが極端に少なくなってきた今では、福野さんのレビューからあまり見られなくなってきている。例えば日産e-POWERのクルマを何と比較すればいいのか!?



イメージ崩壊


適当な比較対象がなくなる中で、「相対評価」から「絶対評価」へと福野レビューの比重が切り替わりつつある。これにより福野さんのイメージも変容しつつある。「容赦ないライター」の仮面が剥がれ落ち、レビュー対象となったクルマの開発者の心情を慮った「人情味に涙するライター」の顔が出てきてしまう。福野さんの奇想天外&逆張りで権威を張り倒すような「勧善懲悪」レビューを楽しみにしてたのに、「作り手への思いやり溢れる」ことで有名な牧野茂雄さんのレビューを読んでいる気分になってしまう。


「牧野さん風味」の福野レビューはそれはそれで読む価値が十分にあるのだけど、牧野さんのレビューは徹底して「専門家向け」「マニア向け」なので、「クルマの格好良さ」みたいな尺度を重視する読者には合わない。対照的に数値化できない格好良さやロマンを存分に語る福野レビューが本来持っていた「ポップさ」や「発信力」が変化によって失われるのはちょっと残念だ。全くの初心者の私でも無理なく楽しく読めた10年前のあの「最強福野レビュー」は、クルマ趣味を日本社会に広げるためには欠かせないものだと思う。また「全人類ほぼ敗北」とかやって欲しい。



どっちが書いてるのか!?


福野さんも自身のレビューの変化は自覚しているだろうし、あるいは意図的に仕掛けているのかもしれない。新しい手法を生み出したものだけが生き残れる世界ではあるだろうし。このまま牧野テイストになってしまっては「単行本」を出せなくなってしまうかもしれない。日本で単行本を出し続けるライターはごくわずかだけど存在する。島下泰久さん、沢村慎太朗さん、そして今年から始まった水野和敏さんくらいか・・・やはり福野さんにはまだまだ頑張って足掻いてもらう必要がありそうだ。


ライバル車不在で「比較」ができないから、メカ&開発者の深掘りにシフトしたけど、前述のようにちょっと切り口がマニア過ぎる。そこで新たに生み出されたのが萬沢さんを共同執筆者に巻き込む手法のようだ。10年前と比べて萬沢さんが頻繁に登場するようになりレビューの核心を突くようなことを萬沢さんに「言わせる」あるいは、過激な意見に萬沢さんの同意があることを付け加える・・・そんなケースがやたらと目に付く。萬沢さんの同意があるなら納得できると無意識に読者に受け入れさせる効果は確実にある。蔓沢さんも相当なクルママニアだろうけど、なぜか一般人ぽい語り口で書かれるので読者は受け入れやすい。うまく「ポップさ」のバランスを取っている。



福野レビュー復活作戦


萬沢さんとの共同レビューももちろん面白いけど、かつての福野さんのような全てのメーカーやそのクルマのユーザーを敵に回すリスクを顧みずに権威に噛みつきハッキリと断言するスタイルのレビューも読みたい気がする。「まあこんなもんだよね」というレビューより、「このクルマこそが神だ!!」と熱烈に語るレビューの方が熱いものが込み上げてくる。どうやら私と同じようなことを考えてた自動車メーカーがあったようだ。福野さんに再び「比較レビュー」を大いにやって欲しい一心だろうか、比較ありきの大掛かりな新型車を作ってきた。某日本メーカーが発売した直列6気筒FRシャシーSUVの「あれ」である。


さあ福野さんよ!!10年前の切れ味鋭いメッタ切りレビューを見せてくれ!!どんな意見でも我々は受け入れるぞ!!とそのメーカーは大きく構えていたはずだが、あれれれれれ・・・・!? どうしたの!?調子出ないの!?リハビリが必要か!?と心配になってしまう腰砕け感があった。新刊まもない本なのでネタバレは極力避けたいですが、福野節の復活を期待して注目を浴びたはずのレビューが、なんでそんな展開になっちまうのか!!と驚愕した読者も多かったんじゃないだろうか。



福野レビューの「腰砕け」


まあ去年の日本COTYではこのクルマを完全無視された。そんな権力に忖度するカーメディアへの反動もあってか、日本でも予想を上回る好調な売り上げを記録した。500万円もするスポーツカーでもない日本車がデビューとともにこんなに簡単に売れまくった(月1000台以上)、30年以上前のトヨタ・セルシオ以来じゃないか!?当時はバブルの絶頂だけど、これを令和の岸田政権下で実現したのは偉業・神業と言っていい。120万円の補助金ありきのアウトランダーPHEVとは全く意味が違う。


カーメディアのフルバッシングをものともせず、日本市場のクルマ好きが次々と契約した。そしてその走りの良さをカーメディア上で最も高く評価したのが・・・まさかの萬沢さんだった。福野さんが鬼の首を獲ったように大絶賛する段取りだったのかもしれないが、萬沢さんが興奮し過ぎで本人は完全にシラけてしまったらしい。本当の話かどうかはわからない。完全に「脚本」の可能性もあるが、それならばこれは来年の「クルマ評論9」にて再レビューが収録されるフリだと思われる。大いに期待したい。



2023年7月10日月曜日

島下泰久さんが「案件」っぽくMAZDAを批判するので・・・

 

MAZDA車にケチを付ける愚論


MAZDA・CX-60の最もベーシックなグレードである「25S」が後から発売された。このグレード追加に合わせてアップされた試乗動画の1つが、ビックリするような内容だった。MAZDA車はその気になってケチを付けるなら要素はいくらでもあるのだけど、それでもMAZDA車のフィーリングが最高だ!!という人が好んで買うブランドである。他社の定規で測った意見なんざ意味はない。ランボルギーニやフェラーリに狭い!!うるさい!!燃費が悪い!!駐車場に停められない!!荷物が乗らない!!とか言うようなものだ。


あらゆる年代のユーザーに楽しんで欲しいと願って設定された「299万円」のスペシャルプライスのグレードにあれこれ文句を付けている。ユーチューブ動画では絶対にトヨタやレクサスのクルマは絶対に批判しない方針の島下泰久さんのレビューだから別段に驚きはないが、ちょっと勘ぐってしまう。やはりAJAJライターとメーカーは協業関係にあるのだろう。トヨタのコンサルライターとしての「営業活動」であり「ポジショントーク」ってことがダダ漏れの動画が笑える。愚直な感じがロック好きな島下さんらしいかもしれない。



二重人格ライター

ユーチューブでは批判しないが、単行本では全く違う島下さんがいる。「2016年版間違いだらけのクルマ選び」で2世代前のクラウンアスリートに対して最悪の評価を下していた。デザイン最悪。このクルマが日本車の代表なんてあり得ない。前任者の徳大寺有恒さんの方針をある程度は引き継いでいた部分もるのだろう。島下さんが一人で書くようになった2016年版以降も、片っ端からトヨタ車には酷評が下されるのに対して、MAZDAの各モデルはデザイン、走りなどで最高の評価を得ている。MAZDA3なんて4年連続(2020〜2023)で最高レベルの評価だ。


「間違いだらけのクルマ選び」は、雑誌の連載ではなく純粋な単行本であるので、発行部数を計算すると、クルマの本を熱心に買い集めてそうな人が多いMAZDAファンには思いっきり尻尾を振るのが常套手段である。他のメーカーが好きな人にはわからないかもしれないが、MAZDA好きってのは単純にクルマのフィーリングだけでなく、かなり理詰めでMAZDAのクルマ作りが好きだ。デザインやフィールといった属人的で主体性に依存する基準ではなく、欧州250km/h対応だとか衝突安全性で日米欧を制するといった、明快な基準からMAZDAを選択するから出版物がとても好きだ。



トヨタの価値


単行本では出版社の意向を十分に汲んで、真面目に仕事する島下泰久さんだけども、運営するユーチューブ・チャンネル「RIDE NOW」では立ち位置が変わる。相方の難波さんがこれまた筋金入りのMAZDAファンのようだ。「カーメディアは絶賛するけど、なかなか売れないMAZDA」とか揶揄される。しかしGT-RやシビックtypeRなどのハードボイルドなロードカーを除けば、MAZDAの各モデルはレベルが高い日本車の中においても、開発者の意図が随所に盛り込まれていて、「クルマ=趣味の道具」として素晴らしい完成度を誇る。専門家からの高評価は当然だ。そんな難波さんとのバランスを考えてか、RIDE NOWではMAZDAと意図的に距離を取っている。


半世紀以上も前から欧州市場で認められているハイクオリティなクルマを作り続けてきたMAZDAを見て、ほんの数年前(2015年頃)から「MAZDAのような愛されるクルマを作ろう!!」とかトップが言い出したのがトヨタだ。簡単に言ってしまえば歴史が違う。欧州市場ではMAZDAはスポーツブランドで、トヨタはタクシーブランドに過ぎない。この両者の立ち位置はクルマ好きなら誰でも知っていることだ。トヨタのクルマ作りにどんなカタルシスを感じるだろうか!?回転寿司チェーンが、トップの気まぐれで「老舗の寿司屋の味を再現しよう」とか素っ頓狂なことを言い出したようなものだ。食べに行きたいとも思わない。



トップ企業の生き様


MAZDAのような「こだわり」を持つと、おそらく世界最大の自動車メーカーにはなれないだろう。トヨタやユニクロのような合理性に徹する経営は、確かに多くの株主には喜ばれる。しかし個人的な意見で恐縮だけど、トヨタには乗りたくないし、ユニクロは一着も持ってない。こだわりが無いとは言わないが、響かないモノ作りには全く惹かれない。ユニクロにも世界的デザイナーとコラボしたアイテムがシリーズで販売されているのは知っている。結局のところユニクロやトヨタも一時期の拡大路線がひと段落して、変化を求めて「良いものをつくる」真似事に力を入れ初めているのだろう。


ユニクロとトヨタはよく似ている。ユニクロにも島下泰久さんのように熱心にユーチューブでPRしてくれるインフルエンサーがいる。MBさんや大山旬さんのファッション動画にはユニクロ、GUをゴリ押しするものがかなりある。どちらも見た目に清潔感があり話し方も穏やかなので、長く見ていても不快ではないし、身だしなみの勉強にもなるので、ユニクロもGUも全く買う気がないけどしばしば視聴している。島下さんのトヨタ&レクサス動画も同じような理由で見ている。



メディアリテラシー


島下さん、あるいはMBさんや大山さんがいくら「オススメです!!」と言ったところで、トヨタやユニクロは買わない。もちろん彼らの意見を否定する気など毛頭ない。トヨタやユニクロのおかげで毎日ハッピーに暮らしている人が世界にがたくさんいることだろう。個人的には理解できない世界だけどもメンテナンスフリーやファストファッションは多くの人を幸せにしている。トヨタやユニクロだって色々と考えて製品を作っている。これは間違いない。そんな物作りが好きという意見はもちろん尊重したいし、その「味わい」については、ぜひ話を聞いてみたいと思う。


しかし今回の島下さんのCX-60レビューはマナー違反だ。もしかしたら私の過剰反応かもしれないが、MAZDAにカタルシスを感じ続けてきたファンには、なんとなくわかってもらえると思う。MBさんや大山さんが、私が好きなアパレルブランド(例えば三陽商会、大賀、ファイブフォックスなど)を、名指しで批判するなんてまずあり得ないことだ。いずれも10年ほど前からユニクロの拡大で厳しい経営状況に置かれているが、アパレルに本質を求めるユーザーによって支えられて倒産することなく荒波を生き抜いてきた。まるでMAZDAみたいだ。



MAZDAのヤバさ


CX-60では25SとXDにおいてFRの2WDモデルを設定してきた。同タイプの縦置きエンジンのSUVを主力に据えるBMW、アルファロメオ、ジャガーにおいては全てAWDである。これら名門ブランドが手を出そうとしなかった「FRの2WDのSUV」に挑んだMAZDAの破天荒さをもっとカーメディアは称賛すべきでは無いか!?BMWもアルファロメオもジャガーもできる限り軽量でスポーティな縦置きSUVを作りたいのは同じだけど、製品化してないのだから、大きな難点が存在するのは想像できる。設計上の無理を承知でも理想を追いかけているわけだ。そんな理由もあって今回の島下さんの批判は、コアなクルマ好きには刺さらないだろう。


逆に面白がって多くのユーザーがFRのCX-60を積極的に選んでいる。色々難点はあるけど、それでも車重を軽くして欲しいというユーザーの声に精いっぱい応えた。MAZDAに言わせれば島下さんみたいな荷重移動ができない運転下手は乗ってはいけないグレードかもしれない。それほど価格差もなくAWDモデルも選べるのだから、FRだけに試乗して「これはダメだ」と結論している島下さんのレビューは理解し難い。一体どこの意向を汲んで動画作っているのか?299万円のSUVが売れたら困るのは、クラウン(2車種)、レクサスNX、RXなどRAV4ベースで価格をマシマシにしたSUVモデルを抱えるトヨタ陣営くらいじゃないか?


同じクルマではない


カムリ、RAV4、ハリアー、NX、RX、クラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、アルファード、ヴェルファイア・・・全部同じKプラットフォームで、パワーユニット&駆動システムも共通という神がかり的な「合理主義」で低コスト化し、やたらと値打ちをつけて売ろうとするトヨタグループの商売を否定はしない。しかしこれだけ合理化すれば弊害も出てくる。実家のカローラツーリングは、Kの一つ下のCプラットフォームを使っている。先行して発売された北米向けの全長&全幅が短縮されている。Bピラーの骨格が車内に大きく張り出していて、シートのスライドとリクライニング位置によっては側頭部をぶつけてしまう。


CプラットフォームもKプラットフォームも、スライドドアを備えたミニバンにまで流用してしまう共通設計シャシーである。メルセデスやBMWではそんな無茶な設計はしない。MAZDAもスバルも現行プラットフォームを採用するようになってからスライドドア車は廃止した。10年ほど前で、まだまだコンプライアンスがまだ緩かったであろう当時のMAZDAの担当者は無邪気に答えていた「スライドドア車まで共通化したシャシーでは世界に勝てない」と・・・。



海外メディアの酷評


MAZDAディーラーにお世話になってから様々なモデルに試乗したが、MAZDA車とトヨタ車では設計の基準が大きく違う。ハンドリングやブレーキ&アクセルフィールなどの一般的な乗り味が違うという話ではない。もっと単純にクルマのサイズ感がトヨタはテキトー過ぎる。カローラツーリングに限った話ではなくて、寸詰めの設計をしているトヨタのクルマにはほぼ同じことが言える。レクサスISだったりC-HRでも強く感じた。シートの調整幅が少なく、ハンドル角度もペダル配置にも無理が生じている。


インテリアの素材は同クラスで比較すると、ほぼほぼトヨタ車の品質は日本車最低クラスだ。Cセグともなればホンダ、日産、MAZDA、三菱はそれぞれに「良いもの」を感じさせるが、新型プリウスの質感が海外動画で嘲笑されていた。ガタガタのセンターコンソールにペラペラのボデー、スカスカのドア開閉音、クルマとしてのクオリティが極めて低いことをハッキリとは言わないが暗示している。そうだ・・・これはトヨタ&レクサス車全般に共通して言えることだ。レクサスに乗る自動車系ユーチューバーなんてクルマの価値がそもそもわかってないんじゃないの!?



2023年4月12日水曜日

小学館新書「EVショック」 ユーチューバーが描くクルマの未来



AJAJ激震!!素人がクルマの本を書く時代


 「EVショック」の著者はユーチューバー「EVネイティブ」さんといい、動画活動ではエンジン車に乗っている旧世代の人々を「あちら側(仮想敵国)」とし、「こちら側(EV推進派)」の主義・主張をわかりやすく展開されている。対立構図はチャンネル登録者を増やすポピュラーな方法だと思う。ネットメディアは「社会の分断」を生み出す傾向があると問題視されるが、カーメディアの場合は雑誌媒体の時代であっても十分に分断は起きていたので、なんでもネットのせいにするべきではないかもしれない。


説明が丁寧で非常にわかりやすいのだけど、意見が過激なので、この方に対しては好き嫌いが大きく分かれるんじゃないかと思う。MAZDAのBEV(MX-30)がデビューした頃には、「このメーカーは根本的に間違っている!!」くらいに批判していた。また急速充電設備の普及を目指す協会にMAZDAが加盟していないことに対しても、「充電設備の普及にはびた一文払わず、MAZDA車は他社の設置した充電設備を使うのか!?」など最もらしく断罪していた。現実にはMAZDAディーラーでは自宅充電設備を持たないユーザーには販売しない方針を採っている。ちょっと見解の違いがある。



出版業界は制約が多過ぎる!?


トヨタbz4Xの充電性能にも大声で苦言を呈していた。充電率が80%以上になると充電性能(速度)が一気に落ちることを実験で示したまでは良いけども、その結果を持ってトヨタ(スバル)のBEV技術は遅れていると判断していた。スペック主義のトヨタがそんな愚かなことを許すだろうか。実際には100%充電してしまうとリチウムイオン電池の寿命が急激に落ちるため意図的な制御が働いているだけで、過充電によるバッテリー温度の上昇など様々なリスクを避けている。世界有数の品質管理を誇るトヨタだけに安全&品質第一に設計しているわけだ。


動画で繰り返し発信されていたMAZDAやトヨタに対する批判はこの本の中には登場しない。理由はわからないけども、視聴者から何らかの指摘がされたのかもしれない。youtubeではとにかく舌鋒鋭いけども、残念ながら新書では完全に牙が抜かれている。出版社への配慮などいろいろな事情があるのだろう。有力な広告主である日本の自動車メーカーを怒らせるのは、どこの出版社であっても得策ではないし、批判したところで評価が上がるわけでもない。



若者の方がクルマがわかってる!?


少なからず的外れな批判もあるし、高速道路でBEVを実験する本質的矛盾もあるけど、EVネイティブというユーチューバーは26歳という年齢を考えたら非常に優秀な「オピニオン・リーダー」だと思う。BEVは別に好きじゃないけど、よく調べていて為になるし面白いから見てるという層がチャンネル登録者の主体なのだろう。MAZDAやトヨタをボロクソに言ってた頃はまだ荒削りだと感じたけども、数年も欠かさず努力を惜しまない投稿を繰り返していれば、どんどん議論は洗練されてくる。若いからか成長が異様に早い。


高齢者がほとんどとなっているAJAJのライターは、10年前から変わり映えのしないレビューを書き続けている。読者はとっくの昔に飽きている。メンバーを入れ替えたくても他に人材がいない。小沢コージさんなどは例外で、10年前とは別人というレベルで変化している様子だけども、30〜40分のyoutubeライブを聴いていると、やっぱり根っこは変わっていない・・・と感じる時もある。10年前は「輸入車じゃないとクルマじゃない」みたいな空気がプンプンしていたが、現在はそれを押し隠して日本メーカーに胡麻をスリスリしていらっしゃる。



古い価値観の破壊


バリバリのバブル世代である小沢コージさんはやはり輸入車が好き。とりわけドイツ、イギリス、イタリアの高級車ブランドに絶対的な価値を置いていることは隠せない。それに対してZ世代のEVネイティブさんは、メルセデスもBMWも全く興味がないようだ。その辺の感覚にはいくらか親近感が湧く。伝統ある自動車メーカーへの敬意は持っているけども、「憧れ」という感情はほとんどないようだ。高級車ブランドでマウントを取ってくる上の世代に対して、BEV至上主義で逆マウントを取っている。



ちょっと残念なのが、個人的に好みのMAZDAが、「高級車マウント世代」からは、貧乏人のクルマと見做され徹底してバカにされ、「BEV至上主義世代」からも、BEV戦略で完全に立ち遅れたオワコンメーカーとバカにされている。多くのMAZDA好きは、とっくに諦めている。他者の意見を変えることは簡単ではない。クルマに関しては承認欲求などほとんどないからMAZDAを選んでいる・・・それは紛れもない事実だ。



BEVを過小評価する日本


EVネイティブさんによると、テスラ、ヒョンデ、BYDなど日本市場ではまだあまり認知されていないブランドがとてもクールらしい。機能と価格が絶妙で、補助金を満額貰い、アクティブ(10年30万キロ?)に使いこなせば非常に気分よくクルマが所有できる・・・みたいなことを本書では言いたいらしい。BEVはエンジン車と比べて部品点数も少なく故障のリスクは下がるだろうし、他にもフル電動の一元機能化でさまざまなメリットがあるようだ。


日本のカーメディアではBEV化のメリットを真面目に訴えるレビューはほとんどなかった。日本メーカーや、保守的な読者層に配慮し過ぎる余り、フェアな議論が交わされてきたとは言い難い。大手メーカーとの利害がほとんどない非AJAJの福野礼一郎さんがテスラ・モデル3をベタ褒めしていたくらいだろうか。そんな社会背景の中で、まだ26歳の若者がエンジン車を徹底批判しBEVのメリットを最大限に訴える姿は異質に映る。



2023年はどうなる!?


BEVの様々なメリットを理解できる場が、カーメディアの大人の事情もあって、日本ではなかなか目にすることがないけども、それが逆にEVネイティブ・チャンネルにはかなり追い風になっただろう。ちょっと前にトヨタが大々的にBEVへの参入することが発表され、今月の初めには2026年までに10モデル150万台という具体的な数字が出された。これまではひた隠しにしてきたけども、トヨタもBEVのメリットを十分に理解していて、今後は日本の既存カーメディアでもBEVのメリットが当たり前に語られるようになるのだろう。


日産がいくらBEVで世界に先行しても、トヨタが決断しない限りはカーメディアは動かない。テレビなどの一般メディアも大企業の意向を尊重して方針を決定する。小学館のような出版社も同様でEVネイティブさんの主張からすっかり「棘」が消えている。それでも2023年初頭のタイミングで、このような新書が発売されるに至ったのだから、小学館がトヨタの意向を汲み取って「BEVメディア解禁」を判断したのかもしれない。今年はBEV出版祭りになるのか!?



トヨタが慌ててBEV150万台を宣言


別にBEV推進派は「エンジン車を売るのやめろ!!」と過激なことを言っているわけではない。その主張の大部分はテスラ、ヒョンデ、BYDが主導権を争っている中で、日本メーカーがある意味で予想通りの慎重な姿勢しか取れないことに対する失望感を言語化しているだけである。少なくともEVネイティブさんには、働きたいと思える成長企業として、テスラ、ヒョンデ、BYDの方が、トヨタ、日産、ホンダよりも魅力的に映るのだろう。


世代によっては解雇が少ない日本の雇用環境が良いという意見もあるが、結局のところ大企業の「ステマ」に影響されているに過ぎない。そしてそんな世代もあと10年すれば労働市場では少数派になると思われる。航続距離500km級のBEVが、BYDだと440万円で買える。日本メーカー車と比べて耐久性が大きく落ちるとも考えにくい。トヨタが慌てて出した150万台宣言はBYDを意識したのだろう。さて・・・今後はEVネイティブさんがBEV化に踏み切ったトヨタ陣営に取り込まれるみたいなオチが付くのだろうかか!?



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