沢村慎太朗 「BMWの前途に花束を・・・」(午前零時の自動車評論17)

 

今更にG20系3シリーズ・・・

沢村氏の「午前零時の自動車評論17」が発売された。非AJAJ評論家ながらも、しぶとくカーメディア界隈を生き延びている沢村慎太朗氏の非凡な力量は、並みの自動車評論家とは全く次元が違うのは確かで、大いに敬意を払って最新刊が出ればすぐに買わせて頂くことにしている。しかしなんだろうな・・・今回は冒頭の一編が間違いなく「力作」なんだけども、なんとも微妙な展開。時代の趨勢を読み違えているような感じがする。今さらにBMW3シリーズですか!? 発売からだいぶ時間が経過しているという意味ではなくて、もはや10年以上前(E90系)からすでに終わっていた3シリーズを。令和になった今になって一体誰に向けてレビューをしたかったのだろうか!?もはやチバラギのオッサンですら3シリーズ(BMW全体かもしれない)に興味なぞ持ってないのでは・・・!?


2007年頃に増えた「ビマー」

2007年頃にビーエムは日本市場で過去最高の販売実績を上げる。バブル崩壊で緩やかにフェードすることが予想される日本市場で、残クレで最後の勝負をかけるべく、AJAJに沢山の協賛金を払ったのかもしれない。2007年当時のカーメディアにおいてビーエムは完全に主役であった。この頃からブログを書き続けているらしいE90オーナーに以前コメント欄を荒らされたことがある。わざわざ自分のページのリンクまで貼って読んでみろ!!って感じだった。やたら長いのにろくなことは書いていない。2000年に登場した初代X5の旋回性能は驚異的だった!!(それ某社のシャシーの流用なんですけど・・・)とか、まあそんな感じ。BMWブロガーに共通するけど、エンジン回転数やサス形式には絶対に言及しないし(日本メーカーにマウント取られるレベルだから)、二言目には「価格」でクルマの価値を結論付ける。そのくせにこの10年くらいのBMWの実勢価格は見て見ぬふりをしている。


ゴリ押しの結果・・・

2007年頃からBMWのオーナー層は相当に劣化したと言っていい。日本で無理やり売ろうとすれば、そりゃおかしなことになる。ホンダ、日産、マツダのように海外では人気でも日本ではコアなユーザーくらいしか売れない・・・そんな立ち位置に甘んじているメーカーが結局信頼できる。メルセデスとBMWの2010年以降の失速はある意味必然のことだったかもしれない。そして今のカーメディアは・・・BMWをまるで腫れ物に触るかのように扱っている。わずか10年でここまで扱いが変わったことが全てを物語ってしまっている。自動車評論家という生業をしている人ならば、どんなレベルであれ直近のBMWがイケてないことはわかる。彼らのレビューではしばしばクルマの本質がわかってないなー・・・と感じることもあるけど、この10年でBMWが日本市場で全くやる気がないことくらいは認識しているはずだ。言い切ってしまうけど、ほぼ全ての評論家やクルマ好きが今のBMWにはポジティブな印象を抱くことができていない。


真実

ネット上に自動車に関するコアな情報が次々と上がるようになり、海外での評価もリアルタイムで伝わってくる状況において、「衝突安全基準」「南アフリカ生産」「樹脂製タンク」「日本向けデチューンエンジン」「外部調達ミッション」「(BMWなのに)吹けないエンジン」「ヤル気のない右ハンドルレイアウト」「ディーゼル疑惑」など・・・プレミアムブランドとしてはおろか、自動車メーカーとしても前向きに存続していくことがかなり難しい状況になっている。これだけ情報がバラまかれてしまってはクルマに興味があってアンテナを張っている人は、ひたすらに避けるだろうし、それでも「知らない人」(情弱)は買うだろうが・・・。



叩く価値ある!?

そんな「瀕死」のBMWに今さらに沢村さんがトドメを刺しに行ってどーする? いよいよBMWが売れなくなって日本から完全撤退してしまうかもしれない(すでに撤退したみたいな感じだが)。路上でE90やF30にドヤ顔で乗ってるオッサンがいるから面白いんじゃないの!?彼らを「クルマヒエラルキーの底辺」だと、心の中でマウントを取って気分良く生きている人も多いはず。「ビーエムいいねー・・・」って適当に泳がせておいた方がいいとすら思う。彼らがビーエムを捨ててプリウスやハリアーに乗り出したら、さらに息苦しい日本市場になってしまう。プリウスやハリアーなんて1度のドライブで何台すれ違ったかすらカウントしないだろう。



ヤバいドライバー&クルマ

ロードバイクで車道を快走しているとむやみに競りかけてくる車種で多いのは、「軽自動車全般」「プリウス」「BMW 1シリーズ/3シリーズ」「VWポロ/ゴルフ」だ。前方が赤信号なのに無理やり加速して威嚇してくる。そんなにロードバイクに千切られるのが悔しいか!?心にゆとりがないドライバー!?やたらと接近してくるクルマに限って「汚い」。洗った形跡がない。ロードバイクやウェアが汚れるから間違っても接触したくない。日本のインフラである軽自動車はともかく、プリウス、1シリーズ、3シリーズ、ポロ、ゴルフが日本の路上では「ヒエラルキーの底辺」だ。実際にどの車種も新古車・中古車ともに心に余裕がない人々を引き寄せる魅力的な価格で取引されている。


SNSから消えたビーエム

還暦の沢村さんにとっては、まだまだBMWは特別な存在なのだろう。しかし現実は厳しい。(客観的に見ても)1シリーズや3シリーズのステータスは、格式を伴うサービス業の従業員に軽くバカにされる&嫌がられるレベルだし、5シリーズや7シリーズに乗っていても中古車実勢価格が200万円前後なので、N-BOXオーナーの地方の若者でも買える・・・ってことがすでに世間でバレてしまっている。偽セレブにもなりきれないただの道化だ。金持ちのユーチューバーでもビーエムを選ぶヤツはほとんどいない。ポルシェ、マセラティ、AMG、ベントレーが現実的な選択肢のようだ。金持ちはアルファロメオ、ボルボ、ルノー、プジョー、メルセデス(無印)なども選ばないけど、BMWはこのグループにカテゴライズされているに過ぎない。


世界は変わっている

ちょっとキツいことを書いたけども、BMWに限らず産業の転換点を迎えている自動車メーカーには同情的な意見があってもいいと思う。全てのメーカーがホンダやマツダのようにストイックなクルマ作りができるわけではないし、ホンダもマツダもあくまで量販メーカーで実現可能な範囲内で理想を追求しているに過ぎない。そしてBMWグループは今では200万台以上を販売する堂々たる量販メーカーだ。ひと昔前のアメリカへ侵攻を強めた頃のトヨタやホンダくらい規模を持っている。利益を確保するために工場の資本投下は抑えていて、世界中の提携工場でライセンス生産される仕組みだ。当然ながら部品供給を考えると使えるマテリアルは制限され、内装は中国の下請けに丸投げだ。クルマ好きはこの辺の事情を理解した上でBMWの未来を悲観してしまっている(もう諦めている)。


ドイツ車を滅ぼしたメルケル

メルケル女史がドイツを率いるようになってから、ドイツ自動車産業は大同団結を強制されている。多くの部品はポッシュやコンチネンタルといった独メガサプライヤーの使用が推奨される。トヨタ、ホンダなど日本メーカーが各社とも系列サプライヤーとタッグを組んで開発競争をしているのに、大手3グループで部品共用をしていては勝ち目などあるはずもない。しかもお膝元の欧州ではガソリン車の締め出しへカウントダウンが進んでおり、ドイツ3社全てが中国市場に軸足を移していてすでに3社とも50%を超える中華依存体制だ。日本メーカーで中華依存50%越えのメーカーはない。もはやドイツメーカーと日本メーカーでは戦う市場に大きな違いが出てしまっている。国産車比率90%の驚異的な数字を誇る世界で唯一の日本に、中国向けに設計された最新のドイツ車を持っていったら、そりゃボロクソ言われても仕方がないだろう・・・。


5年前の「BMWのすべて」と同じか!?

沢村さんはドイツ自動車産業の実情を踏まえた上で、非常に健全なレビューを書くライターだと尊敬しているが、今回のBMW3シリーズレビュー「素材と調理」にはそんな美点がすっぽり抜け落ちてしまっている。内容は決して一方的にG20系3シリーズを扱き下ろすものでもなく、多くの人にとても参考になる内容だとは思うが、コアな沢村ファンには物足りないかもしれない。40ページにもわたる長編レビューではあるが、10分の1くらいのページ数で書けてしまうような内容だったと思う。そしていつもの沢村さんのようなリベラルさは影を潜め、全編を必死にレトリックで覆い隠してはいるけど、その裏にある「動機」はBMWとそのオーナーに対する軽蔑なんだろうなと読み取れてしまう。もうすでに何度か書いているBMWに対する「感情論」が令和になっても続いている・・・BMWよりも先に評論家・沢村慎太朗が終わってしまうのではないか!?と一抹の不安が。



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