福野礼一郎さんの「便所の落書き」がヤバすぎる・・・
どんどん過激になっていく・・・
いよいよ6冊目に突入した「福野礼一郎のクルマ評論・6」が発売された。自動車雑誌の出版不況もあって福野さんの連載もモーターファンイラストレーティッド(MFI)くらいしか読めなくなって、寂しさが募る一方で、仕事上のしがらみが少なくなったのか、2018年の「3」から始まったこの本でしか読めない「便所の落書き」コーナーが年々過激になってきた。1年を振り返ってあらゆる角度から「福野礼一郎COTY ベスト&ワースト」がズラズラと書かれる。ベスト、ワーストなのにそれぞれ2〜3台あったりする往生際の悪さで、ただただ「エンターティメント」へと突っ走っておられる。お元気でなによりだ。
本ゆえの楽しみ方
それにしてもこの「落書き」はあまりにも中毒性が強すぎる。私のようにこの本の現物を見ずに躊躇なく「アマゾン」でポチった人は多かったんじゃないだろうか!?コンテンツのほとんどはアマゾンのキンドル・アンリミティッド(読み放題サブスク)で読めるMFIの連載なのに当然のごとく買ってしまう。届いてから真っ先に読むのも「便所の落書き」で、仕事から戻ってスーツ姿のままわずか数ページのコーナーをじっくりめくっていた。ユーチューブのレビュー動画とは違い、自分のペースで色々と想像力を発揮しながらページをめくる感覚は「至上の喜び」でしかない。このスタイルは昔から福野さんの得意技だったようだけど、全盛期をリアルタイムで知らない世代なのでとても新鮮だ。ユーチューブに無数にあるレビューコンテンツがほぼ楽しめない人には、ぜひオススメする。カーメディアの醍醐味を存分に味わえるキラーコンテンツだと思う。
興味あることだけ書く
なんでこんなに面白いのだろうか!? 異常なほど「エンターティメント性」が爆発している理由として、もちろんこの人の見識&力量もあるけど、現在の福野さんがもはや自動車業界全体を俯瞰・網羅するような視点で無理に描こうとしていない点が挙げられる。ドイツ車と日本車はどちらが優秀か!?なんてテーマを掲げることも、それにまともに正論を振りかざすことも最初から放棄している(読者を飽きさせないために多少は入っているけど)。手前勝手な意見だけど、ブログを書いていてのジレンマとして、自動車業界全体を描こうとすると大変だ。私自身のまとめる力がないのはもちろんだけど、なかなか面白い話に落とし込むことができない。書き始めは「やってやろう」と気合十分なのだけど、仕上がりに満足したことはほとんどない。いくつもの途中で投げ出したけど捨てきれない未完成や断片が転がっている。
大部分の市販車は・・・
トヨタが50%を占めるようになった市場全体を語っても面白いわけがない。逆にシボレー・コルベットのメチャクチャな進化具合を題材にでもすれば初めてブログを書く人でもそこそこ面白いものが書けると思う。日々のブログ日課をこなす中でおぼろげに感じていたことが、福野さんの本を読むと確信に変わる。ちょっと悪口になってしまうかもしれないが、トヨタ、日産、ホンダの大手はヒエラルキーの末端に位置するコンパクトモデルはマメに更新している印象だが、上の価格帯になればなるほど放置する傾向にある。10年前に主流だった足踏み式サイドブレーキが500万円以上するモデルに平気で使われていたりする。
大手メーカーのレビューがつまらない理由
フラッグシップモデルに最先端の装備を惜しみなく入れてくるので、MAZDA、スバル、三菱の上位モデルは大いに話題になるが、現行クラウン、レジェンド、アコードなどのデビュー時が残念な感じになってしまったのは、メーカーの都合で、もう仕方がないことなのかもしれない。人生の可処分所得の多くをクルマに注ぎ込みたい人々にとっては、トヨタSUVのレビューなんて何の意味も為さないけど、ランエボが憑依したアウトランダーや、2.2Lディーゼルあるいは2.4Lターボや2.5Lターボが選べるMAZDAやスバルのモデルならそこそこ興味深く読める。なんとなく「頭がおかしい人」が開発している気がするし、それを福野さんみたいなライターがどのように切り取るのか!?には期待感しかない。
誰でも輸入車に乗れる時代だが・・・
馬車がクルマに変わった後も競走馬は残った。ゆえに自動運転の時代が到来してもスポーツカーは最後まで残るとかいう話があちこちから聞こえてくる。スポーツカーを売るための方便の可能性もあるが・・・。クルマが買えるくらいの「貧乏」ならば、誰でも中古ではあるけどドイツ車を選べるいい時代になった。よく使うデパート(駅ビル)の駐車場で観察してしまうのだけど、過半数は欧州ブランド車が占めるが、自動ブレーキ世代のドイツ車に乗る人と、それ以前のモデルに乗る人では身なりがあからさまに違う。前者は服装、スニーカー、カバンに至るまでブランド品が当たり前だが、後者は全身ユニクロ。一応お断りしておくが、クルマや服装で人間の価値が決まるなんて1ミリも思ってない。
福野レビューを面白く読める人
もしかしたら的外れかもしれないが、福野レビューは前者のタイプでないと楽しめないだろう。10年ほど前に福野レビューを初めて読んだ。クルマの知識が爆発的に増えたことは間違いないけど、なんだか言い知れぬ敗北感があった。このライターはクルマ以外にもよく「本物」を知っている。それに比べて自身の社会経験の無さに絶望すら感じた。この世界では黙々と努力して稼いで「本物」を経験し続けること・・・それが全てなのだと。テレビやメディアで人気の人々も、組織の中で人望があり一目置かれるような人も、長く成功し続ける人には「本物」を経験しているという共通点がある。
未熟な批判
「福野礼一郎のクルマ評論」の第一号は間違いなく傑作ではあるが、まだ経験値が大きく劣る私には非常にアンフェアなレビューばかりに思えた。ホンダフィットとMAZDAアテンザのひどい書き方にこのブログの初期ではキレていたくらいだ。しかしそんな福野さんが数年前から「BMWは全部ゴミ」とか平気で書くようになった。一番ぶっ壊れていた時期(2013〜2016)の私のブログでも、「(BMWは)ディーゼルのアイドリングストップがクソ」と丁寧に理由をつけて書いていた「便所の落書き」を、堂々と出版社を通した連載及び単行本において、メチャクチャな論理展開(福野がゴミって言ったらゴミなんだよ!!のレベル)をしている。
感謝
手前勝手で恐縮だが、こんな福野さんの本をゆっくり読んでいる時間がこの上なく幸せに感じる。10年前のように卑屈に考えることもなくなった。福野レビューに出会ったおかげで、服装や持ち物にもかなり徹底してこだわるようになった。この方には感謝してもしきれないくらいだ。すでにカーメディアにおいては間違いなく第一人者であり、毎年単行本が出せる奇跡的な存在なのだけど、もっと広く世の中に知られてほしい存在でもある。10年前の私のような貧乏くさいだけの若者の人生を変えてくれる。そして何より充実感ある人生を送っている人にとって、最高のエンターティメントでもある。ぜひぜひ末永い活躍をお願いしたい。
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